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NPCs  作者: 米川 米三
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第3話 小十郎

【G・O・F】

 三人になった僕らは凛の新しい装備を買うお金を稼ぐため近くの洞窟を探索した。

 内部ではスケルトンやゾンビとかのアンデットがウロウロしていて、その姿を見るたびに凛が悲鳴を上げるもんだから不意打ちやおびき寄せてのトラップ作戦が一切出来ない。

 とうとう一〇体のスケルトンに囲まれて僕らはタコ殴り。

 三人揃って教会で神父に怒られる結果になった。

 せめて凛が攻撃魔法でも唱えてくれれば良かったんだけど。


「凛、スキルは何を持ってるんだ?」


「お料理でしょ、お洗濯でしょ、お掃除と、お裁縫と、あと子守」


 冒険前に確認しておくべきだった。



 三人所帯で無一文だったから、お助けキャラが必要だろう。

 僕らは凛を教会に預けて近くの冒険者ギルドへ下着姿のまま向かった。

 町の石畳が少し冷たい。

 ちょっと恥ずかしいけど全滅パーティが出た時には見かける光景だし、他のMBNPCたちには『あ~あ、ご愁傷様』って程度にしか思われないから気にしない。


「俺は僧侶スキルを取っておくよ。もう一人、戦士か魔法使いと組みたいな」


 エビさんはそう言って、スキルアップパラメーターの操作を始めた。

 エビオの実年齢を聞いてから僕は彼の事を〝エビさん〟って呼んでる。

 だって三七歳の会社員で、結婚してて中学生の子供までいるんだから。




「え~っ、男パーティでしょお? ダメダメ。ワタシは女の子としか組まないから」


 ギルドにLV1のハーフエルフ魔法使い少女がいたから声をかけたけど、断られた。

 彼女の名前はメイビー。


「さてはあんたたち、ワタシが可愛いもんだからナンパするつもりなんでしょ?」


 確かに金髪ツインテールの可愛いキャラなんだけど、そんなのキャラ生成時にどうとでもなるから自慢にならないと思う。

 ヘンに自意識過剰な子だな。


「あなたたちのパーティに女の子がいるんなら、考えてあげてもいいけどね」


 僕らが凛の事を教えたら、会ってから決めるって言う。

 だから教会まで連れて行って凛に会わせてみた。

 そしたらメイビーは大喜びしながら凛の手をとった。


「すっごく可愛い! 決めた! ボクこのパーティに入る!」


 女キャラ好きの女キャラか。

 なんかだかなぁ。




 服を買うお金だけメイビーから借りて、町で宿屋の下働きとか薪割りとかの平和的バイトで最低限の装備を整えた。

 メイビーは一人でフラフラどこかに遊びに行ってる。

 しょうがないけど。

 驚きなのは凛の炊事、洗濯、掃除スキルが宿屋のバイトにうってつけで、この状況下では一番の稼ぎ頭だったって事。

 庶民スキルも侮れないな。




【現実】

 金曜日の放課後、剣道部が休みだったから鶴見先輩が美術部を訪ねて来た。

「見学です」って言ったら、美術顧問の先生は喜んで彼女を美術室に入れてくれた。

 女子の方が多い部だから先輩みたいな美少女が突然現れても男連中は慌てない。

 みんなでペタペタ油絵を描き続ける。

 僕はデッサンしに出かける言い訳のため、剣道の防具をモチーフにしていた。

 先輩は一通りみんなの作品を見て回ってから、最後に剣道の面の面金部分に光沢を与えている僕の絵を覗き込む。


「ふーん。上手いのね。剣道、好きなの?」


「ええ、まあ」


「でも剣道部じゃなくて美術部。どうして?」


「運動は苦手なので」


「ふーん」


 本当は防具を着けてるカッコいい先輩を描きたいだけなんだけど、言うと内心バレバレだから死んでも言えない。


「犬飼のスケッチブック見れば何を一番描きたいかなんて、すぐ分かりますよ」


 クラスメイトの牛尾が余計な事を言って、勝手に僕のカバンからスケッチブックを取り出して先輩に手渡す。


「あっ、バカやめろ!」


 慌てて取り返そうとしても先輩の反射神経が上回っていて無理だった。

 パラパラとページをめくられてしまう。


「……」


 スケッチブックに目を通した鶴見先輩はパタンってそれを閉じて、僕に返して、先生にペコリとお辞儀して、何も言わず、足早に美術室から出て行った。


「何してくれんだよ!」


「そんなの手の届くところに置いとく方が悪い。俺は背中を押してやったんだぜ」


「バカヤロー!」


 僕は牛尾の首を思い切り絞めてガクガク揺らした。

 お前は友達だからと思ってこっそり打ち明けてたのに、この仕打ちか。

 先生や周りのみんなは呆れてたり、笑ってたり。


 バレてしまった。

 猪澤部長の絵なんてダミーの一枚きりなんだ。

 スケッチブックのほぼ全ページに描いてある道着姿の鶴見先輩を、当の本人に見られてしまった。

 最悪だ。






【G・O・F】


「どうしたんだドッグ。今日は溜息ばかりついてるな」


 エビさんが心配して声をかけてくれたけど、ダメだ元気が出ない。


「現実で何かあったのか? 恋の悩みとか?」


 流石は人生の先輩。

 なんでもお見通しみたいだ。


「今日のゴブリン退治が終わったら、しばらく町で休んだらどうだ?」


「ええ、そうします」


 僕たちは四人でゴブリン集団の棲む洞窟の前まで来ていた。

 凛は相変わらず戦闘スキルは持ってないけど全員の所持金を預かってもらって、安全な場所にいさせれば緊急避難金庫として役に立つし、良い食材が手に入ればその場で調理してもらって美味しいものが食べられる。

 この世界では凛の料理の腕前はメキメキ上がっている。

 ついでに現実の料理の腕前も最近マシに成って来てる。

 昨日食べたグラタンは中々美味かった。

 この仮想現実の経験が現実にも反映されるのは割と有名な話だ。

 僕らの活動がただの遊びで終わらず実生活でも役立つのは正直言って嬉しい。


ず閃光たいまつを投げ込んで目くらまし。出てきたところを俺の風圧障壁で動きを制限させる。次にメイビーの火炎魔法。残ったヤツらはドッグの近接戦でとどめだ。凛ちゃんは後方待機。危なくなったらすぐ逃げるんだよ」


 エビさんの作戦はほとんど外れが無いから安心して従える。

 この人と組んで正解だったな。


「よーし、たいまつを投げるぞ」


 僕がたいまつを投げ込もうとした矢先、洞窟から何者かが出て来た。

 ゴブリンじゃない。

 あれは人間だ。

 片手に日本刀を持って、一人たたずんでいる。


「おいキミ。そこはゴブリンの巣だ。危険だぞ。こっちに来い」


 エビさんが声をかけたら、その男は優雅にくるりと振り向いて、微笑みながら言った。


「中の怪物たちはオレが片付けた。もうこの洞窟に危険は無い」


「キミの仲間はだ中か?」


「いや、オレは一人だ」


 黒髪長髪の美形キャラが僕らの方に歩いて来る。

 アゴが細くて、目は切れ長、シュッとしたスタイル。

 宝塚風というか、少女漫画風というか。

 そんな系統の美少年をそのまま3Dにしたようなキャラだ。


「キミ達もここの怪物を倒しに来たのか。横取りしたみたいですまないな」


 訊いてみたら、今日生成されたばかりのMBNPCとの事だ。

 でもLV1キャラがたった一人でゴブリンの群れを全滅させたなんて信じられない。

 僕らは警戒しながら洞窟内を確認してみた。

 本当にゴブリンが全滅してる。

 少なくとも一〇匹近くいたし、中には難敵のホブゴブリンまでいたのに。


「信じられない。生成したてのキャラがこんな事フツー出来るわけない」


 念のため彼のスキルパラメーター表示をONにして見せてもらった。

 確かに生成日が今日の昼で、LV1のMBNPCだ。


「で、怪物を倒すと何か良い事が起きるのか?」


 強いのは分かったけど、ゲームシステムは理解してないみたいだ。

 ゲーマーとしては初心者なのか。


「討伐数は勝手にカウントされて、ギルドに行ったらレベルアップ用の経験値と賞金がもらえるんだ」


「ふーん。良く分からないな」


 本当に初心者だよこいつは。

 丁度パーティの限界人数が五人までだったから、エビさんが口説き落として参加してもらう事になった。

 僕が戦士でパーティ唯一の前衛キャラだったから、これはかなり心強い。

 パーティ名称は『オカメインコ』だって話した。


「ふーん。いいんじゃないかな。可愛いし」


 もっと男らしくてカッコイイ名前にしたがるかと思ったけど意外と嫌がらない。

 それからみんなで彼に自己紹介する。


「エビオだ。クラスは学者LV3、僧侶LV2。よろしく」


「メイビーよ。魔法使いLV3。ワタシの体に触ったら殺すからね」


「凛です。得意なのは料理とか洗濯とかで、レベルは2とか3くらいです」


「僕はドッグ。クラスは戦士LV4と、斥候LV1だ」


 最後に僕が名乗ったら、そいつはちょっと驚いた顔になった。


「ふーん。そうか、ドッグか……」


 なんだろう、笑ってる。

 さっきまでの彼と雰囲気が違う気がする。


「オレの名は小十郎こじゅうろう。剣士LV1。よろしく頼むよ」


 小十郎は全員と握手を交わす。

 こうして僕らは五人に成った。

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