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八話「お酒は姉妹になってから」(アヤノ、この本にあるオーバーレイとはどうやるのです?)(えっと、それはですね――)

 「ただいまー!」と扉が開くと元気なアヤノの声が部屋まで響く。

 ソウタの家でげえむをした帰り、スーパーに寄って私はアヤノの帰りを晩御飯を用意しながら待つ。

 「わー!いい匂いですね!!これは・・・チキンとチーズですか!」

 「アヤノ先に、手洗いを。テレビでこの時期でも風邪を引くとやっていましたよ」

 「ああ、はい。すみません良い香りがしたものですから・・・」


 「アヤノもスーパーに行ってきたのですか?」

 私は、アヤノが手にしていた袋を見る。缶らしきものが数本と小さい円柱の箱が4つ、それに木べらのようなものが見えた。

 「私も今日スーパーに行ってみましたよ、食材が足りないようでしたので・・・すみません少しアヤノのお金を使ってしまいました」

 「いえいえ、前に言いましたがここに置いてあるのはシルさんの不便無いように使ってもらうためなので、逆に申し訳ないですね!何か困ったこととかはありませんでしたか?」

 このアヤノと言う人間はとても優しい、過去にここまで他人に親切な人間がいたでしょうか?

 私はあまり人間と関わりを持つことはなかったので、判断材料が少ないもののこういう人間は珍しいと思います。

 ですが、ソウタさんも同類なのでしょうか?まだはっきりはしていませんが、アヤノとソウタは雰囲気や似ている匂いがします。

 そんなアヤノに嘘をついて住まわせてもらっているのは心苦しいですが、仕事に忙しいというアヤノの手助けが出来ればせめてもの罪滅ぼしになるとよいのですが・・・。

 「じゃーん!私が行ったのはコンビニですね、ビールとアイスを買ってきました!今日はちょっと贅沢してハーモンバッシュです!」

 「バッシュ・・・?は分かりませんがアヤノ、先にご飯にしますか?それともお風呂?」

 「うう・・・・良い匂いですが・・・先にメイクとか全部流して完全にだらだらして頂きたいです!!」

 「分かりました」

 テレビを見ながら待っていると、シャワールームから篭った声がします。

 アヤノが呼んでいるようですね。

 「アヤノ~?どうしましたか~?」

 『ごめんなさーい!アイスを冷凍庫に入れてもらっていいですかー?』

 「アヤノ、れいとうこ?というのは?」

 『あれです!氷が入っているところです~!』

 「分かりました」

 『ごめんなさーい!』


 カシュ。

 小気味良い音を鳴らした缶から金色の飲み物がコップに注がれる。

 立つ泡は細かく、鼻を撫でる香りはアルコールが少し感じられますが私の知っている日本のお酒とは異なるようです。

 「では、シルさんに作ってもらってしまいましたが。シルさんの歓迎会ですっ、乾杯っ」

 小さく差し出されたコップに私もコップを合わせる。

 「ありがとうございます」と応えながら。

 「わー匂いもたまらないものがありましたが、鳥のささ身にチーズ、そしてこの香草がたまらん・・・美味しいです~!」

 「お口に合ってよかったです、ぱそこんで調べたらでてきたので作ってみたくなってしまいました!」

 びいるとアヤノが呼ぶ飲み物を私も口に含む。

 独特の苦味が一気に舌の上に広がって・・・ちょっとこれは・・・

 アヤノを見ると、顎を上げて一気に飲んでいます、真似をしてみましょう。

 ごくっと喉が鳴り、腹の中へ一気に液体が走っていく。

 「!?・・・・美味しい。びいる美味しいです!アヤノ!」

 口に含むと広がっていた苦味が、一気に喉を通すと苦味が芳醇な香りに変化し腹部から味が帰ってくるようでした。

 「ビール美味しいよね~このために一日頑張ったってこの歳になってやっとおじさん達がいってた気持ちが分かるってものですよ~~」

 「アヤノはまだ若いでしょう~!」

 ああ、なんだか気分が良くなってきました。

 アヤノも酔っているようですね。ふふ、可愛い。


 「やっぱバッシュはおいしかった~~~~!シルひゃんはクッキーとバニラどっちがよかったれひゅ~?」

 「アヤノ、流石にもう寝ましょう。明日もお仕事なのでしょう??」

 「そー!わたしもいつか、でぇーんと売れるオリキャラ描いてばしぃっとバッシュの蓋にかいてやるですよ~~!」

 「アヤノは夢があるのですね」

 広くない部屋だが、足取りのおぼつかないアヤノを布団に寝かせる。

 私はアヤノの頭をさすりながら、話を続ける。

 「そーれーすいっぱい稼いで・・・そしたらお兄ちゃんとお酒飲みたいなぁ・・・」

 「アヤノはお兄ちゃんがいたのですか?」

 「ううん、いなーい!でも隣に顔はそこまでかっこよくないのになんかかっこよく見えるお兄ちゃんがいたんだ~~」

 「会っていないのですか?」

 「うーん、東京で働いてるらしいのだけど帰ってなくて・・・それにどうせ会うならわらひももーっともーっとびっくになってから会いたい!!」

 「アヤノはその人が好きなのですね」

 「ううんぜぇーんぜん!どっちかといいうと一番の友達ですねぇ・・・」

 「そうですか。」

 「シルひゃん!」

 急に起き上がったアヤノが、落ちていく眠たげな目で私を必死に見据える。

 一瞬の間があったと思うとアヤノが私のおなかに抱きついてきました。

 「でもれ・・・でもね・・・少し寂しかったです、なので今はシルひゃんがいて嬉しいのです!んふふふ!!」

 「それなら良かったです。アヤノ私も感謝していますよ」

 しばらくすると、アヤノはすーすーと寝息を立てていました。

 本当ならば食器など片付けたいところですが・・・アヤノに抱き付かれていますし私も大分酔いが回ってしまいましたので、寝るとしましょうか。

 アヤノの柔らかい髪を撫でる。

 どうやら、私の新しい妹はしっかりしていますが手がかかるところもあるようですね。

 くー!本当、妹は可愛いものですね!たまらんですよ!


 翌朝。

 「すいません。シルさん、私本当にすぐ寝てしまったのですか?迷惑とかかけていませんか?」

 「ええ、アイス食べたら満腹になったのかすぐに寝ていましたよ」

 「そ、それならいいのですが・・・あ、昨日の晩御飯はとても美味しかったです!じゃ、行ってきます!」

 「はい、いってらっしゃい!・・・・アヤノ!」

 「はい!なんでしょう?」

 数歩進んでたアヤノが振り向く。

 「今日もお帰りを待っています」

 そう私が言うと、アヤノは元気な笑顔で階段を下りていきました。

 レミア、私の新しい妹はどうやら酔うと記憶がなくなるタイプらしいです。

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