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七話「ドラゴンシスターズ」(開放キャラ、あんなに苦戦したのに性能微妙じゃない・・・?)(ほら格ゲーだってCPU最強にすると人外な反応するだろ?そんなもんだ)

 「・・・・・ソウタ。」

 「・・・・ううん?」

 レミアの神妙な口調に、居間に少し重い空気が流れる。

 時刻は朝10時、今日も五月の暖かい日差しがさす晴天な一日になることだろう。

 そんな中で、レミアが心痛な面持ちで発する次の言葉に俺は構える。


 「足が痛いわ・・・。」


 その言葉に、普段であれば「お前な」と少し呆れてるであろう俺だが今日は――


 「奇遇だな俺もだ・・・。」

 首肯した。

 昨日のピクニックの疲労は思いのほか身体に来ていた。

 はたまた、俺も年をとったということだろうか?

 「ソウタはまだ若いんだから・・・だめだよ、そんな事言っては・・・うう、脚がみしみしいってるぅ・・・」

 「人間の10代と20代は天と地の違いがあるのですよお嬢さん・・・ああ、喋ると腰に響く・・・」

 そもそもその見た目、十代の子に言われたくない。

 ――が。まぁ、昨日の飛行距離を考えれば仕方ないのかもしれない。

 神奈川から中国のほぼど真ん中に行って、また日本に戻ってビキニ環礁の日帰り旅だもんなドラゴンの尺度は分からないがきっと楽ではないのだろう。

 「レミア、昨日はありがとな。本当普通では出来ない体験が出来た。」

 「どういたしまして!また行きたいところあったら言ってね!ちょっと数日は無理だけど・・・。」

 「そうだな。また行こうな。」

 湿布か何かあったかなーと転がりながら薬箱に手を伸ばそうとしたとき、玄関の扉がどんどんと叩かれた。

 このマンションは一回の受付でコールして、こちらが認証しないと外部からの進入は基本(・・)出来ない。

 もちろん隣人が用があったり、他の部屋の来客者が間違えてくることがあるのかもしれない。

 俺は煙草吸うからもしかしたら苦情もあるかもしれないな。

 だが、この叩き方はきっとおそらく多分確実に間違いなく、あの人だろう。

 オートロックとかお構い無しで四階の廊下に直接乗り込めて、この場所を知っている基本の外の例外たる人物。

 「レミア!レミア!今日はいるのでしょう!!ねえ!ねえ!・・・・・ね、ねえ・・・お願い・・・ひぐっ・・・レミア・・・ううう・・・」

 俺はレミアを見る。

 タオルを頭に被り、頭を抱えるレミアの顔には『NO』と書かれているようだった。

 「うーんでも、隣人さんの目もあるから家の前で泣かれるのはちょっとまずくないか?」

 「う・・・そうなの?うーーん・・・じゃあ、仕方ないね・・・」

 レミアは意を決するように、目を瞑ると一息漏らして玄関へ向かった。

 「うう、足が痛い・・・」と漏らしながら。とぼとぼと重い足取りで。


 ・・・・・・・

 「うん!ソウタさんは紅茶もコーヒーも淹れるのが上手いですね!」

 すすり泣いていたのも何処へやら、嬉しそうにコーヒーに手をつけるシルさん。

 きっとレミアに扉を開けてもらえたのも嬉しかったのだろう。

 「しかし、シルさん・・・ジャージですか?前とは大分服装変わっていますが・・・」

 前回――レミアを尋ねてやってきたシルというこの女性。

 レミアの姉であって、レミアと同じくドラゴンだろう、尻尾とか角とかあるし。

 ただ異なっているのは服装だ。

 先日はゴスロリチックなフリフリのドレスを身に纏っていたシルさんだが、今日は上下大きめのジャージだ。

 女性として、出るところはしっかり出ている体形故に胸のラインとか、太腿から上っていくラインが前の服以上にはっきりして特殊な趣味感が一層強くなった気がする。

 なんか女子大生の部屋着を見てしまっているみたいだ(偏見)

 「シル(ねえ)、‘今日は’って言ってたけれど昨日も・・・まぁ来たのよね。聞くまでも無いか。」

 「ええ、昨日着たら気配も無いから逃げちゃったのかと思って・・・透視したらまだ家具はあったようなので今日っまた出直してきたわけです。」

 セキュリティも、プライバシーも無いですね。もう突っ込むのもヤボだけど。

 シルさんを横目に俺もレミアもデビモンを進める。

 「ね、ねえ・・・少しはこっちに関心を持ってはもらえないのかしら・・・?」

 「別にもうシル姉と話すことは特に無いし、あ!!ソウタ!ジムリーダーが回復の薬使ってきたんだけど!!」

 「あー、序盤のジムは結構強く感じるから少しレベル上げておいたほうがいいぞ・・・えーとシルさん、服装がかなりラフになってますがどうしたんですか?多分こっちの世界の物ですよね?それ」

 「そうよ、シル姉お金そんなに持ってないはずでしょ!帰ったようにも見えないしどこに泊まったのよ」

 一貫して、シルさんには素っ気無いというかサバサバした物言いだなレミア。

 いや、昨日のネリさんを思えば同郷の人にはこんな感じなのが普通なのかな?

 「ふふーん!私も人間と一緒に住むことになったのです!アヤノという可愛い女の子とですよ!どうです!それならレミアも私と一緒に来てくれるでしょ!!」

 「いや。」

 レミアの即答にまた涙目になるシルさん。

 アヤノという名前に俺は少し引っかかりを覚えるが、自分の知っている人物とは違うだろうな。

 流石にそんな偶然はないと思う、そう珍しい名前でもないし。

 そういえば、俺の知っている綾乃は今何しているのだろうか?昔から絵が好きで、応じて上手だっのもあって本人もイラスト(それ)系で就職を探していたと思うが・・・・就職を機に東京に来た三年前から会っていないから分からないな。

 ちなみに、俺のスマホのロック画面の画像は専門学校卒業祝いに綾乃に描いてもらった当時好きだったゲームのキャラの画像だったりする。


 「私も・・・レミアと・・・げえむ・・・したいな・・・」

 ぽつりと、シルさんが呟いた。

 そんなシルさんの言葉にレミアを見るが露骨に苦そうな顔をしていたが、「ま、まあお客さんだし家族なのだからそんな邪険にしなくても・・・」とレミアをなだめて俺は据え置きゲーム機の配線を変えた。

 流石にこちらもいじめているみたいで心苦しい・・・。

 簡単操作で、友達が来たときにやる鉄板ゲームは決まっている。『大乱闘スカッとシスターズ』と『ロミオカート』この二つならば間違いは無い筈だ。

 会社の仲の良かった先輩と携帯機版をよくやったな・・・でもその先輩も二年前に辞めてしまったから一年程度しか遊ぶことはなかったが。


 『大乱闘スカッとシスターズ』とはあるゲーム会社タイトルの様々な人気キャラが一様に集まって戦うゲームだ。

 まさか、森で動物達と暮らすほのぼのゲームまで参戦するのには驚いたものだ。

 最初は操作がおぼつかない様子だったが一時間もするとシルさんの操作もなかなか上手くなっていた。

 前回遊んだ『およこしストリート』は勝ち方とか少しコツがいるが、こういう直感的なゲームは手になじむのも早い。

 レミア曰く『シル姉、商才とか皆無だしね』との言葉も添えられていたのは忘れておこう。

 そう言っていたレミアは普段、俺の影響もあってか1vs1のしっかりとフレーム単位での読み合いのある格ゲーをやっているせいなのか割と操作に苦戦している。

 4戦目あたりで無敵ハンマー禁止令がレミアから出されるくらいには。

 そしてシルさんが一位になった時、偶然リザルト画面に大きく『warning!!』の文字が出る。

 「な、なんですのこれ!?」

 「あれ?まだ開放していないキャラあったのか!シルさんそれ絶対倒してください!」

 「え、え、えっ?だから、な、なにが???」

 いきなり始まるシルさんvsNPCだが、いきなりのことで慌てたシルさんのキャラが場外へ吹っ飛んでキャラ選択画面へ静かに移る。

 「ソウタ今の何?」

 「なんなんですか!今の!凄く驚きましたよ!!」

 「あー、今のは乱入と言うかトータル戦闘回数が何回――とかキャラ開放の条件が揃うと、今みたいにリザルト後に来るんだよ。多分次も終ったら来るだろうから、それを倒すとそのキャラでも遊べるようになるんだ。」

 「なるほど、じゃあ次から一位になってあいつを倒せばいいのね?りょーかい!」

 「わ、わたしだっていきなりで遅れをとってしまいましたが次こそ・・・!」

 なんかこういうノリに懐かしさを覚えながら、俺もコントローラーを手にする。

 次の勝者レミア、NPC戦敗北。

 「むきー!なにあの回転攻撃!がけに落としたのに掴んできたわよ!」

 勝者俺、蒼太。NPC戦敗北。

 「開放戦のCPU何気に強いんだよな、あの超必殺技渡すと厄介だな・・・」

 勝者シルさん、NPC戦敗北。

 「むー、なんかボールみたいに上下に叩きつけられて遊ばれた様でむかつきます!」


 ・・・と、苦戦しながらもあーだこーだ言いながらやっていると。

 「「「やったーーーーー!!!」」」

 遂にNPCを倒し、キャラ選択画面が少し広くなった事に三人とも満足を感じていた。

 「わーい!」と両手を出すレミアにハイタッチ、自然な流れでシルさんともハイタッチ。

 熱に当てられたのか、すぐ気付いたのか「あっ・・・」と言葉を漏らしたシルさんの顔はどこか赤らんでいるように見えた。

 「あら・・・もう気付いたらもうこんな時間ですね。」

 「ん・・・あ、本当だ。シルさんご飯食べていきますか?いいよな、レミア?」

 「ま、まあ・・・いいよ。どう?シル姉」

 「今日は帰りますわ。」

 その言葉が意外だったのか、目を点にするレミア。

 「え?本当?え、ソウタのごはん嫌いなの!?」

 「いえ、そうではないですよ。私もソウタさんのご飯はまた頂きたいですが今日は私がアヤノに作らなくてはいけないので。」

 そう柔らかく微笑んだシルさんをみて、シルさんが始めてやってきたときに、レミアが「私以外のことなら凄く真面目だ」と言っていたのを初めて理解できた気がした。

 玄関でシルさんを見送る俺とレミア。

 「今更だけど、シル姉こそ人間に洗脳とかして無いでしょうね?」

 その引き際のよさに今だ疑問を呈しているレミア。

 「していません、あなた私をなんだと思っているの。」

 「出会いがしらにソウタを殺そうとしたものだと思ってる」

 え、あの時のレミアは確かに、見たこともないほどの剣幕だったけど俺殺されそうだったの!?

 「まあ、仕方がありません。私もソウタさんに関しては大丈夫だと考えを改めます・・・あの・・・だから・・・」

 ――?少し、気恥ずかしそうに自分の指を絡めているシルさん。

 「ま、また!げえむしてください!」


 その姿と言葉に、自分でも忘れていた記憶がフラッシュバックした。

 昔、隣の家に綾乃が引っ越してきたばっかりの頃一緒にゲームをした別れ際同じ様なことを言われたっけな。

 「ああ、楽しかったのならまた来てください。レミアもいいだろ?」

 「ま、まあ時々なら・・・・・・私も楽しかったよ姉様・・・・・」

 最後の方かなり声が小さくなっていたが、レミアの言葉を聞き届けるとまたにっこりと笑いシルさんは四階の廊下の手すりを蹴り、夕日に照らされながら飛んでいった。

 「あー・・・シルさんに普通の入り方教えておかないとな・・・・」

 「そうだね・・・・」

 「それじゃレミア、入ろうか。」

 「うん!この後はストロークファイターやろ!!」

 「その前に、飯だな。どうしようかな」


 「というかレミア脚の痛みは大丈夫なのか?」

 「あ”、言われたら急に来た・・・いたたたった・・・・」

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