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閑話「シスコン先生」(アヤノ、本棚が少し空いたようですが何をしまったのです?)(ええっいや、別に何も隠してないですよ。あはは・・・。)

 「どうしましょうかね。」


 私は腕を組み思案する。これからを。


 ――とりあえず、止まろうかしら。


 翼を広げ空中で身体を静止させる。

 認識阻害の術をかけておけば空を飛び続けても文句は言われませんが空を生身で飛ぶというのは人間が言うほどいい物でもない。

 「ふふ、レミアもやるようになりましたね。これからもっとめちゃくちゃに乱暴になってくれるのかしら?ハァハァ、お姉ちゃんたまらんです」

 確かに、望んでいた。妹がこうなってくれる事は。

 そもそも私はあの子の全てを受け入れるので何でも来いなのだ!――ですが!

 「あの人間が邪魔ですね・・・流石に殺すのは管理協会からも怒られてしまいそうですし、ああでもその時のレミアの顔が見てみたいような気も!」

 私が受け入れるのはあの子、レミアがいつでも私の近くで居てくれるからこそ。

 上界の時間感覚は人間界の暦からすれば長い。

 ふらっと百年振りに会って次に会うのは千年後かもしれない世界だ。

 私達は人間界のようにおよそ決まった寿命の中を生きるのではない、いつか来る死のときまで生きる。

 それは雲間に射す陽のように気ままに訪れ、それを自然と受け入れるものだと私達は知っている。

 だからこそ私はやはり悩む。

 「さて、どうしましょうか」

 今はまだ意識していないでしょうけどもしも、あの人間に恋をして愛を覚えてしまえば――上界の者と人間の愛は決して最後は幸せにはならない。

 レミアは恋愛幼児だからそこまで気にしなくて良いと思う反面で、今まで人間を避けて上界で暮らしていた彼女が少ない経験値でそれを恋だと決め付けてしまうのも十分に想像できる。

 だからまだ上界に帰る訳には行かないのです、それに久々に来た人間界ですしもう少し楽しみたいもの。

 問題は妹と違って私はそこまでお金も無い。

 この前ゴブリン街の大バーゲンでかなり使ってしまいましたし、父にも咎められたばかりなので借りるわけにも行かない。

 そもそもお金があったとしてもどうしていいのか分かりませんが。

 「うーん。どうしましょう。」

 私は地面に降り立ち認識阻害を解く。

 その場所は川沿いに作られた『ながくぼ』?という公園のようで多様な樹木や花々が整えられて植えられていて、太陽が中天に差し掛かった頃の今は歩いている人間もまばらだった。

 ベンチに腰掛けて考える。

 レミアのことを、そして私のこれからを。

 「うーん・・・」

 「あの?」

 「やはりもう一度、妹に・・・」

 「あのー?」

 樹に休む鳥でしょうか、それとも蜜に誘われた虫でしょうか。

 額を押さえながら私は考える。何一つ思いつかないものを考える。

 「あのっ!」

 「え?あ、きゃっ!?」

 目を開けると人間がいた。しかもこちらを覗き込むようにしていたので私は驚き背もたれの無いベンチから落ちかける。

 声を掛けてきた女性は咄嗟に私の手を掴み引き上げた。

 「えっとすみません!何かお困りなのかなって・・・外国人さんですか?髪の毛赤いし、スタイルも良い・・・」

 「いえ私は――」

 「せっかくの可愛い服も埃まみれですし、とりあえずうちでシャワー浴びますか?ああ、いやお知り合いの方がいらっしゃるか!ええと、あっ言葉分からないか!えっと・・・ええっと、マイルーム・シャワー フク アラウ ドウ?」

 あたふたとしながらも見ず知らずの私を気遣っている様子の女性。

 私、いや上界の存在をしる人間の可能性も考えるがその女性の瞳からは純粋な気持ちが組んで取れた。


 だとしても気まぐれが過ぎたのでしょう。


 「ああ、いえ。日本語で大丈夫ですよ、ではすみませんシャワーお借りしてもよろしいですか?」

 「は、はい!」

 都合が良かったのもありますが、私が人間の誘いに乗るなんて――


 「へぇ、それは大変でしたね。妹さんの家を訪ねて日本にきたらその妹さんは急用で会えなくて、泊まる所に困っていたら荷物を盗まれて大型トラックの砂の一部が落ちてきたなんて!」

 「ええ、本当どうしようかと思いました。アヤノさんに声かけてもらえて助かりました・・・。」

 小さな箱の様な家で私はシャワーを借りて今はこの部屋の主らしいアヤノという女性とココアを飲んでいる。

 シャワーいいですね、知識として知ってはいましたが暖かくて気持ちよかった。

 服もアヤノの物を着ていて、花の香りがする服が心地よい。少し胸が窮屈ですがそれは贅沢というもの。

 しかし思いつきで作ったこんな話を簡単に信じるんですね。

 正直驚きましたが人間を浅慮な生き物だと思えばそこまでだ、しかしこの女性一人に限ればいつか騙されて不幸になりそうと心配を覚えてしまいそうなほどです。

 とはいえ――。

 私はこのアヤノと名乗った女の子を見る。

 ゆるく巻いた髪や垂れた目尻でとてもふわふわと絵に描いたような優しさを溢れさせた、そんな女の子だった。

 心の中でレミアと被せているとそんなレミアも可愛くて仕方が無い、いつかやってもらおう。

 そう決めて。

 「シャワーお借りしてしまったばかりか服まで洗ってもらってしまって申し訳ないです。」

 「いえいえ!そんなそんな!」

 ――あの、四角い箱に繋がれた一枚板。確かげえむ?をやったときにも使いましたね。

 「あの、あれは・・・?」

 「あれ?ああ、パソコン・・・は流石に分かりますよね、ペンタブですね。私駆け出しのイラストレーターなので」

 「いらすとれーたー?」

 「あれを使って、パソコンで絵を描くのですよ」

 「アヤノさんは画家さんだったのですか?」

 「画家ってそんな大層な者ではないですよ!あと綾乃でいいですよ。さん付けはなんか恥ずかしいので!」

 「そうですか?」

 さて。再びこれから、どうしましょうかね。どうやってレミアを連れ出すか考えないと。

 「あの・・・携帯とか使いますか?とりあえず妹さんに連絡取らないと・・・いやそれよりもまず警察かな?」

 「そう、ですね・・・あの・・・」

 「はい!なんでしょう!」

 私も人間界に住んでみるのもいいかもしれないですね。

 ――それはどんな気まぐれだったんでしょうか。そんな事を思ってしまうなんて。


 「もしよかったら、不躾なお願いなのですが・・・住まわせてもらうというのは可能でしょうか・・・」

 それに断られても何の問題も無いので言うだけ言ってみようと、全く当たらないと有名な『銀の星月』(※上界、六層「ユニコーンエリア」のアクセサリーショップ)の会員くじを引くぐらいの気持ちで言った。


 「はい?」

 少し間が空いてアヤノは目を丸くさせて首を傾げる。

 「妹は結構奔放で行動が読みにくくてですね・・・一応私ご飯とかなら作れますが、いやそういう問題ではないですね。すみません忘れてください」

 「えっと、あの・・・うぅーーーん!ちょっと外で待っててもらってもいいですか!」

 そういうとアヤノは私を部屋から追い出すと扉を閉めると、外からでも聞こえるほどドタバタと音が聞こえた。


 「すみません!!お待たせしましたっ!!」

 しばらくして扉が開かれ、私はまた部屋へ戻る。

 大きな変化は見られないが本棚の一部などがしまわれたようだ。

 「えっと、布団はこれを。それで荷物とか・・・はないのでしたね、そしたら服とか買わないと私のでは胸のサイズがくるしそうですしそれから――」

 「あ、あの・・・本当によろしいのですか・・・?」

 「はい!困ったら助け合うのが人の世です!それに春から一人暮らしを始めましたが少し寂しかったので・・・こんな綺麗なお姉さんとなら嬉しいくらいです!」

 「そういえば私の名前がまだでしたね。私はシルと呼んでくださいアヤノ。」

 「シルさんですね!ではしばらくよろしくお願いします!」

 「さんはいいのですよ?アヤノ。こちらこそすみませんがお世話になります」

 「私はさん付けの方がしっくり来るので気にしないでください!では、とりあえず服とそれに・・・とりあえず今から買いに行きましょうか!」

 「はい、アヤノ。」

 一つ息を吸う。

 シンプルな内装の中に可愛い小物が並んだこの部屋はほんのりと木の香りと花の香りがした。

 柔らかに微笑むアヤノを見て私も微笑む。

 「改めてよろしくお願いします」

 「はい!」

 ただの気紛れならば、気ままに流れる風のようにどこまでも流れてみるのもまた面白いのかもしれません。

 不思議と彼女からはあのソウタという男と似た匂いを感じます。

 もしもあの男がアヤノと同じような人間ならばレミアは幸せになれるのかもしれない。

 私は姉としてそれを見定めねば。

 妹の幸せが姉の幸せなのですから!


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