閑話 静寂にて
「ソウターおはよ…あれ、そっか今日も出掛けてるのだっけ…」
人間界の暦だと九月半ば、まだまだ暑さも残っているけれど季節は秋へと向かっていた。
夏終わりからソウタはちょくちょくと出かける様になった。
今日もまた朝からどこかへ行ってしまって、リビングの扉を開くと暗く静まり返っている。
外の日差しを僅かに漏らしたカーテンと点滅している機械類の光だけを少し眺めて、私は掴んだドアノブを離すことなく扉を引き戻し部屋へと戻る。
――昼飯は冷蔵庫に用意しておくから、夜は何が食べたい?
ベットに腰掛けると昨日の晩に交わした彼との言葉が新鮮に蘇った。
始めこそ、私も一緒に――と言っていたが彼曰くそれはできないらしい。
人間社会は複雑で、私は今なお知らないこともたくさんある。
だから…だから、彼がダメだというのならそれ以上は望めない、彼が何しているのか、それも彼が話さない以上は私は深入りはできない。
私も私で、部屋には絶対入らないでね!と釘さして一人きりの時間を作ろうとしたのだし、私だけがわがままも言えない。
なによりも、彼の嫌がることをしたくないのだ。
だけど、だけど――
「つまんないなぁ…」
私はそう呟いて大きな針と毛糸を手にした。