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二十七話「ドラゴンちゃんは外に出ない。」(そういえばアヤノたちの荷物帰るときに私の宝物庫に入れたままだわ)(ああ、そういえば翌日に取りに来るって・・・やべ留守電沢山着てる・・・)(私も謝るわ・・・。)

 たった一週間弱だが地元で過ごした時間は自分を見つめなおし再出発をする有意義な時間だったと思う。

 気持ちの充実感を胸にこのマンションに帰ってきたときには一から頑張ろうと決めたんだ。

 ・・・・決めたはずだったんだ。

 「レミア・・・今何時だ・・・・」

 白む脳内、途切れかける意識をなんとか保ちながら身体を起こす。

 「今・・・えっと深夜の35時・・・・」

 「あのアニメ見てからその言い方気に入ったな・・・その言い方をするなら58時くらいかな・・・二徹までは記憶ある・・・」

 元々透き通る白肌のレミアの顔が白くなると青さが目立つな。

 「とりあえず私、『干物弟 さいくつくん』のエンディング見た記憶が無いからもう一回流すね・・・」

 「俺はもう少し寝る・・・うぁ、目が張り付く・・・」

 レミアが身体を起こしレコーダーから録画アニメを再生させる。

 画面を見つめる彼女は目の下に深い隈を刻み、背筋は曲がり、まるで毛繕いをする猿のよう。

 きっと俺もあんな真っ青な顔をしていることだろう・・・。

 こんなことになっているのも三日前おそらく帰ってきた途端にレミアが――


 「ソウタ!溜まっているアニメ全部見るわよ!」


 そう言って俺も付き合っているうちに夜が明けて・・・変にハイになってきて・・・。

 「ああ・・・眠気が凄いのに身体がぎしぎしいって口が変にさっぱりしすぎて気になって寝れねえ・・・」

 そして、現在に至るという。

 また一から頑張ろうと思ったのは本当なのだが喉元過ぎればなんとやら、人間そう簡単には変われないのだ・・・情け無い話だが。

 この前のドラゴン姉妹歓迎会のときに用意していた大量のお菓子が未だ残っていて、徹夜のお供には事欠かなかったのもこうなった要因の一つだろう。

 「・・・・ん?レミア?」

 「くかーー。」

 「ね、寝てやがる・・・無理も無いが。とりあえず起きたらなんか美味いものを作ってやろう、よし俺も寝よ・・・」

 

 「ソウタ私気付いたの、いえ思ったの!」

 「なんだ藪から棒に、頬に米ついてるぞ?」

 「あ、ありがと!はむはむ・・・ってちがーう!違うのよ!」

 再び手にしたお茶椀を置くレミア。

 結局俺達は夕刻まで寝ていてそこから起き上がりシャワー浴びて、今は今日初めての食事を取っているところだ。

 「私達はあれだったのよ!!」

 勢いよくテレビを指差す、画面には今朝も視聴中に寝落ちたため三回目の『さいくつくん』が再生されている。

 さいくつくんは学校では秀才の男の子が家の中では女装をしゲームやアニメ三昧の生活を、家の中でもしっかりした姉と繰り広げる人気の日常系ギャグ漫画だ。

 「で・・・あれがどうしたんだ?」

 「いやね、そもそも私はどちらかといえばあっち側(ひきこもり)なのよ。確かに人間恐怖症はかなり治ったわ!でもね違うのよ、私の中の引きこもり魂を蔑ろにしてはいけないの!それをさいくつくんを見て思い出したということなのよ!」

 「・・・・・は?」

 一体この子は何を言い出したんだ?

 俺が意図を測りかねていると彼女は言葉を続ける。

 「つまりね!つまり・・・あの・・・えっと・・・」

 「つまりレミアは引きこもりたいと?そもそも出かけるたってこの前はそこそこ長く出たけどそれ以外だと五月に行った弾丸ピクニックとコンビニとかショッピングモールに日用品を買いに行くくらいだろ?あー、帰りに綾乃と話してた海水浴とかBBQとかが嫌って事か?」

 「ち、ちがうの!だから、だからえっと・・・これ食べたら格ゲーやるわよソウタ!たった一週間で手のタコが消えてきてしまったわ!」

 「お、おう?全然構わないけど・・・」

 「あとおかわり!」

 「・・・?ま、いいか。よっし俺もなまってるだろうしやろう」


 「んなーやっぱ下手になってるー!」

 「この少し触らないと指が引っかかって上手く押せない感じはなんだろうな。」

 後ろに寝転んだレミアが端で流しているテレビを見る、世界風景を色んな目線から流していく番組だ。

 「ね、ソウタはどこか行きたいところは無いの?」

 「行きたいところか・・・そりゃあげれば色々あるだろうけど・・・」

 白銀の長髪、ルビーのような真紅の双眼、小さな唇、純白の角、蒼銀の鱗を並ぶ尾、レミアというドラゴン少女の姿。

 俺は隣に寝転がるその子を見る。

 「ん・・・?何?」

 「ふふ、いやなんでもない。そうだなまたどこか俺かレミアが思いついたら行こう」

 「その時はまた優雅に連れて行ってあげるわね!よし!もう一回!」

 「おう。とりあえず来週海開きらしいから海水浴しようって綾乃が張り切ってたし、シルさんもレミアに買う水着を本気出して選んでるらしいぞ」

 「え?シル姉が??聞いて無いんだけど!!」

 「シルさんなら大丈夫だろ」

 「まぁ、いいか!よし5本先取ね!」

 少し乱雑に物が置かれた部屋、手を伸ばせば様々なゲームに手が届いて眠くなったら身体にかけるタオルがその辺にあって。

 なんというか・・・ああ、俺達の部屋だなとしみじみ感じる。

 引きこもり魂か、確かに蔑ろにするのはよくないな!

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