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十五話「BARドラゴンハート」(レミアさんゲームなにがあるんですか?)(スカッとシスターズとかどうです?)(お!いいですね私のキャプテンコンドル強いですよ!)

 「そういえばさ~・・・」

 梅雨の中でも夏が近づき、蒸し蒸しとしてきた六月の半ば。

 パソコンの中でも排熱の鬼となる二台のゲーミングPCを筆頭に、並ぶ据え置きゲーム機や液晶モニターの数も少ないものではなく、応じて部屋の湿度と温度を上げている。

 エアコンを躊躇う理由もなく、必死に稼動し部屋を冷やしているがそれでも纏わり付く熱気にソウタもレミアもアイスを咥えて転がっていた。

 「あの時、私が当たったからいい話みたいにソウタが言ったけれど外れてたらどうしたの?」

 「ん・・・ああ。外れたらそれはそれで運のなさに諦めが付くかなと、思ってた」

 「鬼か~!あー・・・・暑いわよぅ」

 レミアが言ったあの時とは、先日ガチャで爆死してた彼女を連れて蒼太がコンビニに行った時のことだ。

 「な、その鬼っているのか?」

 「鬼?いるわよ~。と言っても鬼だけだと意味が広いけどね。ソウタの思うような悪い怖い鬼は日本にもういないけどね。」

 「そう・・・なのか?」

 「酒呑さんとは私、文通友達だよ!」

 「しゅてん・・・って酒呑童子か?FCOで居たあいつか?」

 「多分ね、二年に一回くらいふらーって手紙が届くの」

 「それは文通友達と言えるのか・・・?」

 「もう150年くらいの付き合いかな?」

 「ああ、尺度が凄い・・・」

 ドラゴンや鬼の感覚だと頻繁なのだろうか。わからん。

 「鬼種はいい子も居るけど、悪魔はだめよ!あいつら本当弄ぶことしか考えてないのだから!」

 「悪魔って前にモールのスーパーで見たあいつか?」

 「あれは下級の奴だから少し違うわね、上位とされてる子は私とかシル姉みたいに喋ったり生活したりするの」

 「ほーん・・・よく分からないが、まぁ悪魔といわれるとあまり仲良くは出来なさそうなイメージだが。」

 「ま、関わらないが一番よ」

 誰かを思い出したように頭を摩り、渋い顔をするレミア。

 「それじゃ、そろそろ準備始めようか。レミア手伝ってくれるか?」

 「あいあいさー!」


 しばらくして、ピンポーンとインターフォンが鳴った。

 一瞬、レミアが身構えるも受話器から聞こえた声に警戒を解く。


 「おじゃまします~」

 「どうぞー」

 扉を開けて、入ってくる女性が二人。綾乃とシルさんだ。

 「蒼君、はい!冷蔵庫に入れてもらっていい?」

 「了解、取りに行ってもらって悪いな」

 「いやいやー、こちらがお邪魔するのにそれぐらいはさせて貰わないとね!」

 綾乃から受け取った、抱える程の大きさの白箱を冷蔵庫にしまう蒼太。

 「いやー、それにしても前に来たときは言えなかったけれど・・・広い家だね~。レミアさんが払っているんでしょう?大丈夫ですか?」

 「シル姉よりは甲斐性あるので大丈夫です・・・。」

 「レミアが異質なのですよ、あそこまで金品に執着しているのは」

 「貰ったお小遣いを『セールだー』って一日で使う竜もあまりいないと思うわよ」

 「エルフとは違った良さがゴブリン族にはあるのですよ!」

 「わ!流石、蒼君!美味しそう!」

 「わぁ・・・!」

 居間に入ってきた二人がテーブルを見て、あげた感嘆の声に俺は少し笑みがこぼれる。

 そんな俺以上に「ふふん!ソウタだもの当たり前よ!」と何故か胸を張っているドラゴンがいたけれど無視した。


 「では二人の歓迎会を始めます!かんぱーい!」

 「「「かんぱーい!」」」

 昼から準備して、テーブル一杯に並ぶ料理。

 重箱もそうだけどこの一杯にした達成感はなかなか得られるものではない。

 そんな準備をしたのも数日前に綾乃とメッセージのやり取りをしていて、今日明日は休みという事なので、ドラゴン姉妹二人の歓迎会という宅飲みをやろうとなったのだ。 

 「あ、蒼君のポテトサラダだ!」

 「お前、昔からポテサラ好きだな」

 「うむ。蒼君のご飯を語る上でこれは外せません!」

 「そうなの?私も食べる!」

 「シルさんは好きなものとかあるんですか?」

 「私ですか?そうですわね、お肉も好きですが――あ、でも私もソウタのご飯はどれも美味しいので好きですよ」

 「そうですか、ありがとうございます」

 「蒼君、これ何で割ればいいの?」

 「うん?綾乃、酒の好みはどうなんだ?甘いのとか辛いのとか」

 「甘いの!」

 「了解、じゃあ日本酒のカルピス割とかどうだ?スプライトもスパークリング日本酒みたいだし飲みやすいぞ」

 「ソウタ~、私霧島のロック~!これ、カクニっていうのだっけ?お肉がうまぁい・・・」

 「アヤノもレミアもそんなにがっついては・・・」

 そうは言いつつも箸を止めない、シルさんだった。


 しばらく経って、今はレミアとシルさんがゲームをして、俺と綾乃はテーブルでそれを見ながら呑んでいた。

 「ふふふ、蒼兄ちゃん美味しいよ~蒼兄ちゃんのご飯久しぶりだよぅ~ふふふっ」

 「まだまだあるからなー」

 「蒼兄ちゃん!蒼兄ちゃん全く呑んでないよ!」

 「呑んでる呑んでる。」

 「いーやだめ!座って!」

 空いた皿を片付けようとした俺の腕を引っ張り、椅子へ押し戻そうとする綾乃。

 その顔は、既に頬は薄ら紅く普段から垂れ目なだが一層目尻が落ちていた。

 「解ったよ。それで綾乃仕事の調子はどうだ?横浜の職場って言ってたけど」

 「頑張ってるよー。絵の仕事させて貰えてるし、きついときはきついけどね。まだまだだなって思うことも沢山ですよ・・・。」

 蒼兄ちゃんってのはやめてくれと一応言ったのだが、酔いが回っているのか次の言葉には戻ってしまうため俺も一々言うのはあきらめた。

 「蒼兄ちゃんは?爛々と暮らしているようだけど・・・」

 「俺は三月に辞めたから今は無職だな。その時にレミアと出会って暮らすようになった」

 「蒼兄ちゃんの就職したところ『インフェルノ・システムズ』だよね、おばさんから聞いてちょっと調べたら良い噂なかった。だから辞めちゃってよかったと思うの!」

 「一応、社会人としてはどうだかなって感じだけどな」

 「蒼兄ちゃん昔からバイクとか、ゲームとか色んなものに手を出してた癖にその中でもきっちり貯金とかしてたから多分大丈夫なんでしょ?」

 「癖にって・・・ま、そうだけど」

 「それよりもだよ!そんなことよりもだよ!」

 両手でグラスを持っていた綾乃が急に、腕を締める。その仕草に胸が強調されて向かい合って座っていた俺は、目のやり場に困った。

 「私、大人っぽくなったでしょ?」

 「うん?あれ、前にも言わなかったか?大人っぽくなったよ、最初見たとき驚いた。」

 「そりゃあ、レミアさんに見慣れたアオ君からすれば?私、そんなに可愛くないしシルさんほど大きくはないけどさ?」

 「いや、だから綾乃は綾乃で大人っぽくなってるって。びっくりしたって」

 「アオ君、会う人皆に言ってるんじゃないの?」

 「そんなわけ無いだろ、俺の対女性スキル知ってるだろ?」

 「そうだね、彼女とかできないもんね!あ、シルさん変わるなら次は私がレミアさんとやるよ!」

 そう言って、テレビの方に行く綾乃と入れ違いにテーブルへ戻ってきたシルさん。

 「・・・・ソウタ?大丈夫ですか?」

 「ああ、うん。平気・・・平気だから・・・」

 綾乃は、酔うと普段は大人しい反動なのかかなり自由になるタイプらしい。

 幼馴染から「彼女できないもんね!」と断言されても、俺は泣いていない。泣いていないからシルさんそんな優しい目をしないでくれ・・・・。

 「ソウタ。お酒お注ぎしますよ」

 「ありがとう・・・ございます・・・」

 俺の人生で、その時ほど冷酒が冷たく感じたことはなかったと思う。

 それはそれとして、綾乃に変な話を振られたからか、それとも酔いが回っていたのか、とにかく俺はシルさんの目線から下げないように堪えるのに必死だった。

 

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