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第1話 始まりの日

新しい小説を書き始めました。

投稿はあまり頻度が高くないかもしれませんが良かったら読んでいってください。

「到着したか?」


 端末から聞こえてくるのはしゃがれた声。


「…はい。予定通り到着しました。はぁ…」


 溜息を吐きつつ、竜口たつぐち 若那わかなは、視線を前方に移す。

 桜の花弁が舞う中、桜並木の先に建っているのは今日から若那が転入する古凪ふるなぎ学園。

 今となっては珍しく、創立から63年の高等学校で全校生徒数424人、部活動が盛んで多くの部活動から全国大会出場者を輩出している。


「はぁ…面倒だ…」

「ため息なんてついてちゃ駄目だよ?」


 若那が振り返ると髪を後ろで結んだ活発そうな少女がいた。恐らく新入生なのだろう。真新しい制服の一部に赤色が使われている。


「…そうですね。じゃあ、僕はこれで。」


 若那は校舎に向かって歩き出した。


「え?ちょっと待ってよ!」


 少女の声に若那は足を止めた。


「…なんですか?」


 昇降口の近くの時計は7時55分を指している。若那は8時までに職員室寄らなくてはならないため、立ち止まっている暇はない。


「この学校に私の知り合いっていなくてさ。君も誰かと一緒にいるわけじゃないんでしょう?私は夏目なつめ 灯理あかり。これからよろしくね。」


 そう言って灯理は右手を差し出した。


「…。」

「…ん?あれ…?」


 そこで灯理は若那の制服を見てようやく気づいた。自分の制服と色の違う部分があることに。


「緑色…?えっ…もしかして、新入生じゃ、ない、ですか?」


 自分は新入生なのに対して若那は新入生ではないと気づき、中途半端な敬語になっている。


「今日から2年に転入します。では、行く場所があるので。」


 若那は慌てている灯理を放置し、職員室に向かう。




 若那が職員室の扉を叩き、中へ入ると1人の女性がすぐに寄ってきた。


「君が竜口君ね。私があなたのクラスの担任になる成川なるかわ 叶江かなえよ。よろしくね。」

「はい。よろしくお願いします。」


 叶江は右手を差し出し、若那もそれに応える。

 叶江の机に連れられ、2人が椅子に腰をかける。叶江は机の上に置かれた書類を手に取り、軽く眺めてから若那を見た。


「転校が多いのね。この学校にもあまり長い期間はいられないの?」

「はい。恐らくですが…」

「そう…短い間だけどよろしくね。2・3年生は明日から登校になるわ。授業は8時50分から始めるから、それまでには自分の座席に座っていてね。座席は明日には黒板に書いてあるわ。明日、教科書類を渡すから、鞄は持ってきてね?」

「はい。分かりました。失礼します。」


 若那は職員室を出て、廊下を歩く。昇降口でスリッパを脱ぎ、校舎から出て、校門からも出たところで端末を取り出した。


「もしもし、竜口です。手続きが終わりました。」

「ご苦労。だが、名前を名乗る時はーー」

「それは恥ずかしいので。」

「…まぁ、いい。登校に備えろ。」

「…はい。」


 食材や日用品が入った袋を持ち、閑静な住宅街を歩く。しばらくして見えて来たのは今日から若那が住むことになるアパート。お世辞にも新しいとは言えないが、学園からは近いため通学はあまり苦にはならないだろう。

 階段を登り、鍵の番号を確認すると、部屋に入り、今日は外出はしないため、鍵とドアチェーンを閉める。

 若那がこの部屋を見たのは初めてになる。前回の部屋よりも広いためか、口元が少し緩んでいるようにも見える。

 食材を冷蔵庫に入れると、若那は昼食として買ってきた弁当を食べる。その後、備え付けのシャワーを使い汗を流し、寝巻きとして使っているジャージに着替え、ベッドに横になった。数秒もかからないうちに若那は眠りに落ちた。

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