2. 戦うために
スキルを習得するのに必要なアイテムを求め、街中をうろうろしていた。
エルザの持っているそのアイテムは分厚い本だが、果たして刀技のアイテムが本なのだろうか。
「んで、何処に売ってんの?」
「知ってるわけないじゃないですか。私だってセレーヌに来るのは初めてなんですから」
そう言えばそうだった。こいつも初めてか。
普通に考えて、誰かに道を聞いた方がいいよな。でもめんどくさいんだよなぁ。
小路を抜けて大通りに出ると、鍛冶屋やら武具屋やらがひしめくように並んでいた。
ここにありそうだな。根拠はないがそんな気がする。
大通りを西に進んで約15分程、その店はそこにあった。
なんか怪しげな店だが、勇気を振り絞って入ってみた。
「いらっしゃい…」
うわー、店内が不気味かつ予想通りでびっくりだわー。
本棚にはスキルが記されているであろう本がズラッと綺麗に並んでいた。
こんなにあるのね、スキルアイテム。
「どのような物をお探しですか…?」
暗い感じの店員が話しかける。
「えっと…刀技の物をですねぇ…」
「刀技ですね…少々お待ちください…」
どうなってんだよこの店は。店員にやる気と気力を感じられないぞ。
「日々書物と共に暮らしていては、ああなりますよ」
「つまり本がお友だちか…悲しくなってきたな」
「ですね」
エルザが無表情で頷く。お前、絶対そう思ってないだろ。心の中で嘲笑ってるだろ。
しばらくすると、店員が奥から巻物を持ってきた。
「極東から伝えられた秘伝の巻物です…少々お高いですが…」
なんと値段は30,000セル。俺の所持金では
手が届きませんわ。エルザさーん。
「まぁた私が払うんですか?仕方ないですねぇ…今度夕食奢って下さいね?」
「あ、はい」
思ったより安い代償だ…いや、こいつまさか、大食いじゃないだろうな?
まぁそんな訳で、俺は巻物をゲット出来たわけだ。エルザの奢りで。
いつか夕食を奢らせていただきます。
* * * * * * * * * * *
店を出た俺は、早速巻物の中に目を通した。
ザッと纏めると、クエストをクリアするとポイントがもらえて、それが一定値に達するとスキルが解放されるそうだ。
極東秘伝ということもあってか、技名が全て漢字になっている。なんかかっこいいな。
最初に習得できるのは『空刃』というスキルで、遠距離攻撃らしい。
近接~中距離専門の刀で遠距離って、中々使えるんじゃない?
あと折角だからと魔法(雷)の本も買った。
こっちは単属性しか覚えられない分、値段が安かった。自腹だからな?
こちらの最初のスキルは『ボルティ』。
詠唱は"光れ儚き稲妻よ"。
威力は期待出来ないが、汎用性に優れていて、麻痺効果が魅力的だ。
初期の割には中々の良スキルだとは思うが、後々習得できるスキルがチートになりそうだ。
エルザ曰く、固有魔法ーーーいわるゆユニーク魔法もあるらしいし、魔法ってすごい。
固有魔法はステータスで確認できるそうだが、異世界人とはいえ、転移だし流石にそんなに期待できないよなぁ…と思ったら。
タクト=カゲヒサ lv2 電磁 翻訳
エルザ=バレット lv34 黒雷
あるじゃないですか固有魔法。怖いよ、流れがテンプレすぎて怖いよ。
電磁ってなんだろう、と思って調べてみると、そのままの意味だった。
磁力を操り、あらゆる法則をねじ伏せて敵を抹殺する固有魔法。
説明が怖いです。抹殺て…。
しかし、説明からしてすごく強そう。期待。
lv30で解放らしい。
思ったより低いなぁ。
というかエルザさんもあるのね。
それにしてもこれ、武器スキルより魔法の方が強いんじゃないの?
そこんとこどうなの?訊かないけど。
一口に固有魔法と云っても、様々な魔法が存在するようだ。
例えば、電磁なら汎用魔法と攻撃魔法があって、それぞれ別の魔法として区分されている。
電磁の最下級汎用魔法は電磁力といって、磁石を出し、磁力を操って色々できるようだ。
続いて最下級攻撃魔法は電磁砲。
これについては文字化けしていて、詳しくは解らない。その内解るようになるだろ。
あと、翻訳ってのが気になった。
多分予想通りだけどね…。
この世界の言葉を日本語に翻訳する能力。
また、日本語で発言した場合、この世界の言葉に翻訳される。
だ、そうだ。
やっぱそういうのはあるんだな。
まぁないと生きていけない気もするが。
で、そんな事を考えながら冒険者ギルドへ行くと、エルザが突然、
「何かクエスト行きましょうか」
と言い出した。
「そうだな、確かにその方がスキルの習得は早そうだ。がーーー」
エルザの腹の虫が鳴りだした。
「昼飯がまだだよな」
「あぁ…そ、そうでしたね」
エルザは少々赤面して、恥ずかしげにうつむいた。
* * * * * * * * * * *
昼食を終えた俺とエルザは、再びギルドに来ていた。
「私、こいつと戦いたいです」
エルザが指差した用紙には、黒龍討伐と書かれていた。
「バカかお前…」
「駄目ですか?」
「間違いなく死ぬって」
俺が指摘すると、エルザは何故か残念そうに肩を落とした。
早まるな、お前。
俺は再度クエストボードに目をやると、面白そうなクエストに目が留まった。
ゴブリンロードの討伐 報酬:10000セル
ゴブリンロードと言えば、図鑑によれば下級のあまり強くない割に多くの経験値とお金を戴けるという、初心者が喜んで狩りそうなモンスターだ。
某RPGの鋼の不定型モンスターと金の不定型モンスターを足して二で割った感じだな。ついでに防御力ダウンHPアップな。
受付嬢曰く、ゴブリンロードは現在、大量発生しているらしい。
「乗らない手はないな」
「ですね」
俺は早速そのクエストを受注すると、平原の方へ駆け出していった。
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予想通り、ゴブリンロードは結構な数が生息していた。
前回のように木々が視界を遮ったりすることもないので楽に見つかるし楽に狩れる。
お陰様でもう20体だ。
因みにエルザ:俺=8:2だ。
そのせいかおもったよりレベル上がらないんだよなぁ。
タクト=カゲヒサ lv6
エルザ=バレット lv42
「なぁエルザ、もう少しバランス考えてくれよ?」
「貧弱なタクトさんが悪いですっ!エクティリカッ!」
また一体のゴブリンロードが黒焦げになった。
「その魔法好きだなぁ、お前」
俺もゴブリンロードと戦闘しながら、エルザに話しかけた。
ところでゴブリンロード一々めんどくさいから今後はGRでいいかな?いいよ。ありがとう。
「魔力消費に対して威力が高いので、効率がいいのですよ」
エルザがGRを杖で殴りながら、俺の呼び掛けに対応する。
「へぇ~」
そういうの気にするのか。まぁそうだよな。
掠り傷しか与えられないのに魔力全部消費したりしたら、最早使い物にならないもんな。
~数時間後~
いくら大量発生といっても、100体も倒せるとは思ってなかったわ。
後半はほぼ作業だったなぁ。今となってはいい思い出だが。
タクト=カゲヒサ lv38
エルザ=バレット lv61
レベルも38となり、晴れて固有魔法が使えるむうになったわけだ。
ギルドに達成報告と換金を頼むと、結構な額になった。
報酬10000+(GRの耳5000×100)
=510000セルになった。
51万!?51万ってなんなんだよ!?現実感無さすぎだろ!?
流石にそんな額は持てないということで、山分けした後銀行に預けた。
というか銀行あったのか。
255000セル中205000セルを預けて現在の所持金は50300セルだ。
半端な数字だが気にするな。
そんなわけで大金を手にした俺は、そろそろ家でも買ってみようかな、とか馬鹿なことを考えるのだった。…まぁ拠点はセレーヌ確定だが。
主人公「磔斗」の固有魔法の種類についての説明。
電磁力
→魔法磁石を出すことができ、それを磁力を駆使して自在に飛ばして攻撃したり、別の物質に付着させて、それを磁力で動かしたりできる。
電磁界
→指定した一定範囲内の金属に負荷をかけることができる。例えば、動きを制限したり重量を大きくしたりできる。電磁力による磁石も指定できるため、様々な用途で活用できる。
電磁砲
→電磁力発動中にのみ使用できる攻撃魔法。魔力を魔弾に変え、磁石をレールとしてそれを高速で射出し、着弾時に爆発を起こして広範囲かつ高威力の攻撃を行う。魔力消費量は自由に調整でき、消費量が多ければ多いほど高威力になる。様々な派生形がある。
電磁波
→一定範囲内の磁場を乱してジャミングできる。また、電磁による人体への介入により、相手を一時的に麻痺させることができる。コントロールが難しく、慣れないと自身に介入される恐れもある。
超雷電磁砲
→電磁砲の派生形。雷属性が付与され、威力の割合も上昇した。
獄焔電磁砲
→電磁砲の派生形。火属性が付与され、威力の割合も上昇した。
更新予定、、、