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異世界は、思ったよりも楽じゃない  作者: 琥雫狐
序章 プロローグ
1/10

プロローグ

 意識を失い、視界がホワイトアウトする。

 そして気が付いた時、俺、陰久磔斗は見覚えのない場所にいた。

 森っぽい。見渡す限り、木、木、木。

 小高い陵か?それとも山か?

 しかし、どうなってんだ!俺はさっきまでベッドで寝てたはずだぞ!?

 誰かがここへ運んだのか?

 ドッキリ?ドッキリなの?

 それとも俺に恨みがあって殺すために…?

 …いやいや、それはないわ。

 これはもしかして。

 ラノベとかでよくある異世界転移ってやつか。

 ははっまさか。

 そんなわけないだろ、馬鹿か俺は。

 ここはただの山だ。ただの山。

 別に何もないじゃないか。

 警戒して損したわ。

 さて、さっさと降りるか……ん?

 あれは…スライム?

 しかも某RPGみたいな愛嬌があるわけでもなく、本当に人を食べそうな、ホラーにいそうなスライム。

 おいおいおい、まさか本当に異世界なのか?

  …本当にあるんだな、異世界。

 謎の感動。信じててよかった。

 異世界ならきっとステータスとかあるだろう。

 ラノベを沢山読んでおいてよかったぜ。

 こういうのは心の中で唱えるのがお約束だよな。

 …ステータスっと。


 タクト=カゲヒサ lv.1


 まあ、予想はしてたけどね。

 でも初期位置が山中とかないわ。

 近くに村とかあるかな。なかったら詰みだよな…。

 とりあえず山を下ってみるか。

 「道中で人に逢ったら道でも訊くか…」

 モンスターの気配を避けながら山を少しずつ下っていく。

 山中に人気はなく、結局山を下りきるまで人に逢うことはなかった。

 山を下ると、そこには平原が果てしなく広がっていた。

 街道を通る馬車。冒険者風の人間。あとモンスター。

 本当に異世界に来てしまったようだ。

 道が解るはずもなく、道に入ると直感で東側へ歩くことにした。

 暫く歩いていると、スライムに遭遇した。それもでかいやつだ…。

 たまたま近くに落ちていた木の枝を拾って、武器代わりにした。攻撃力など皆無である。

 でもスライムに物理など効くのだろうか…?液体に枝を突き刺すようなものだもんな…。

 流石に正面に立つと危険なので、タイミングを見計らってスライムの横へ移動する。

 そして枝でスライムを一閃してみた。

 

 手応えなどなかった。


 まぁ予想通りだけどね。…萎えるわぁ。

 最早勝機などないのでは…いやいや、諦めるな俺。

 試しに石ころをぶつけてみた。

 水の中に物が落ちるように、ドボンと音を立てて、それはスライムの中に沈んだ。

 ダメージ?そんなの無かったに決まってるでしょ。

 スライムってこんなに強いっけ。最弱ってイメージがあるんだけど。

 次なる攻撃方法を考えていると、スライムがこちらに突進してきた。

 あんなのに触れたらと思うとゾッとするわー。

 ということでスライムとは逆方向に全力疾走した。

 しかしさすがはレベル1、素早さ低いのかいつも以上にスピードが出ない。

 一方、スライムはじわじわとこちらに近づいてくる。

 俺は悟った。これ、終わったんじゃないか、と。

 最初から逃げればよかったんだ。

 正直勝てるんじゃないかな、とか、転移したんだから何かチート能力あるんじゃないかな、変な期待した俺が馬鹿だった。

 うーん…とりあえず死にたくないなぁ。

 なんとかならないかなぁ。

 そんなこと願ってもこの現状が変わる筈もなく、俺はただただスライムから逃走していた。

 すると、俺の顔のすぐ隣を一筋の稲妻が通り過ぎ、スライムに命中。

 スライムは蒸発して石っぽい何かが残った。

「思ったより小さいですね…」

 そこに居たのは、杖を持った魔法使いみたいな格好をした少女だった。

「助かった、ありがとう」

 さっきの雷当たってたら死んでたけどな。ホントスレスレだったわー。

「私にとっては造作もないことなのです。これから何処へ向かうのですか?」

 その少女が小首を傾げて尋ねてきた。

「近くに大きな街がないか探してるんだ」

「成る程街ですか…なら首都まで案内しましょうか?」

「いいのか?」

 まぁ俺にとっては有難いことだ。

 素直に頼むべきだっただろうか。

「問題ないです、私もこれからそこへ向かうところだったので」

 つまり自分の目的地に行けて尚且つ、道案内もできて彼女にとっては一石二鳥、俺に損もない好条件ってわけだ。

 なら断る理由はないな。

「なら是非頼む」

「任せて下さい!この私が無事、首都まで送ってみせましょう!」

 フラグに聞こえるのは俺だけだろうか……?

「私はエルザといいます、貴方は?」

「俺は磔斗だ、よろしく頼む」

「タクトさんですか、珍しい名前ですね」

 そうか異世界では珍しいか。

 街道を真っ直ぐ歩いていると、徐々に日が傾いてきた。

「うーん、今日は野宿ですかねぇ」

「何!?野宿だと!?」

「嫌ですか?嫌なら一睡もせずに一人で行ってください」

 なんてことを云うんだこいつは。絶対死ぬじゃん。

「違う違う、一回してみたいと思ってたんだよ」

 俺が彼女の誤解を訂正すると、

「野宿が夢なんて、変な人ですね」

と返した。

 別に夢なんて一言も云ってないんだけど。


 * * * * * * * * * * *


 野宿の為に薪を集め、食材を集め、薪を集め…。

 そうこうしていたら辺りもすっかり暗くなってきた。

「そろそろ夕食にしましょう」

 エルザが釣ってきた魚を焼きながら、俺は空を眺めていた。

 そこには大都会の東京では見れないような星空が広がっていた。

「そんなに星空が珍しいですか?」

 エルザが訊いてくるので俺は、

「俺の故郷では、こんなに綺麗じゃないんだよ」

と答えた。

「そうなのですか」

 エルザが焼き魚にかぶりつく。

 あ…腹減ってきたなぁ。

 俺も食べるか。

「いただきまーす」


 焼き魚は素朴な味だった。

 不味くはないが、旨いわけでもない、微妙な味だった。

 まぁ調味料使ってなかっただけだが。

「きっと明日には到着しますよ」

 エルザはそう云うと、寝袋に身を包んで、すぐに眠った。

 今日はもう遅いし、寝るとするか…。


 * * * * * * * * * * *


 朝起きて、徒歩で歩くこと三時間。

 エルザの案内によって、俺は最初の街に到達した。

 セレーヌという街だそうだ。

 一目で治安が良いと解るほど綺麗な街並みだった。

「この後どうするのですか?」

 エルザが尋ねる。

「冒険者登録でもしようかなぁと」

「奇遇ですね、私もです」

「お前冒険者じゃなかったのか」

 てっきり冒険者だと思ってたぞ。

「ギルドを探しましょう」

 エルザに促され、ギルドを探すことになった俺。

 そもそもセレーヌの街は当然ながら初めて来るので、何処に何があるかなど解る筈もなく、半分迷走状態での探索となった。

 というか広すぎるんだよこの街。

 見つかる気がしない。

「ところでタクトさん、武器は?」

 おっと、忘れてたぜ。

 武器がなかったら冒険者やってられんわな…いや、そんなことないか。

 魔法を使えばなんとかなる。きっと。

 でも一回でいいから刀を使ってみたいよね。

 彷徨っていると武器屋を発見。

「激励ということで武器を1つ、買ってあげましょう」

 エルザがそう云うと、足早に武器屋へ入って行ったので、俺もそれに続いた。

 中に入ると杖や直剣、更には刀も売られていた。

 真っ先に目に入ったのは、黒光りする漆黒の刀だった。

 『黒刀零式』というらしい。ダークな感じがカッコいいね。欲しいわぁ。

「兄ちゃん、目が効くねぇ」

 突然後ろから、武器屋の親父が話し掛けてきた。

「その刀はこの店一の業物だぜ」

「成る程道理で高いわけです」

 その価格、80,000セル。高いのかは知らないが、エルザ曰く高いらしい。

「仕方ないですねぇ…約束は約束です、買いましょう」

「あざーっす」

「まいど!」

 エルザから刀を受け取ると、武器屋を出て再びギルド探しを始めた。

 道行く人に尋ね、それを手掛かりにギルドへ向かうこと30分。

「やっと着いたな…」

 俺達は第二のチェックポイント、ギルドへ到達した。

 ギルドの中はやけに賑やかで、昼間だというのに、酔い潰れている冒険者もいた。

 夜勤明けだろうか。

「登録窓口はっと…あぁ、あれですね」

 エルザが指差した方向には、登録窓口と書かれた看板があり、その下に受付嬢が待機していた。

「すみませーん、冒険者登録をしたいのですが」

 俺が受付嬢さんに話しかけると、受付嬢さんがこちらを向いた。

「登録ですね…ではこちらにお名前を」

 そう云われて紙を出された。が、俺がこの世界の文字を知っているはずがなかろう。エルザ、頼んだ。

「はいはい…」

 エルザがその紙に名前を記すと、受付嬢さんはそれを持って奥の方へ去っていった。

 暫くすると受付嬢さんが掌サイズのカードを持って戻ってきた。

「こちらがタクト=カゲヒサ様、こちらがエルザ=バレット様のギルドカードです」

 そう云われてギルドカードなるものを渡された。

 おぉー、これがギルドカード。

 初めて見るわー。

 その後受付嬢さんから色々説明があった。ランクとかクエストとか。

 因みに俺とエルザはFランク(底辺)である。

「パーティ登録はなさいますか?」

 パーティ?…あぁパーティね。所謂チーム的なあれか。

「折角なのでお願いします」

「おい、何勝手にーーー」

「人手は多い方が良いですよね?」

 何も言い返せない。

 まぁ、この世界の情報源として、仲間にしておくべきか。


 思わぬ形で始まった俺の平和な異世界冒険者ライフが今、始まる!…といいなぁ。

 タクト=カゲヒサ 主人公 人間 ???

 突然異世界に飛ばされた少年。17歳。帰宅部。

 

 エルザ=バレット 人間 黒雷(ヴォルグ)

 異世界で出会った魔法使いの少女。非常に強い魔力を持っているようだが…。16歳。


2017/5/29 ストーリー追記+修正

2017/10/31 後書き追加

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