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金髪碧眼ツンデレ系少女エリザ と記号化 4

商店街といっても誰もがイメージする下町の魚屋とか揚げ物やとか肉屋とかが密集しているような感じではない。スーパーやカラオケ、雑貨屋などなどが集まりはてはアングラ系の店までかまえているかなり混沌としたストリートがある。地元の人たちはそこを商店街とよんでいるのだ。何か買いたいときはたいていそろっているし、うちから自転車ですぐつくので俺も頻繁に利用していた。休みだからかこんなに暑いにもかかわらずデートしている学生、与太話をする主婦たち、どうみてもオフ会で集合しただろお前らと思わしき沈んだ色の服ばかりを来ている男ら、ランニングをしているじいさん、家族サービス中のお父さんなどバラエティに富んだ人々がそれぞれの時間を満喫している。


そんな中でもやはり金髪に緑を基調とした服のインパクトはでかい、まだ遠めだがそれがエリザであるとはっきりわかった。よく見てみると小奇麗な店の前で足をとめている。茶色いレンガのようなタイルの外壁をした洋風の菓子店だ。


「やっと追い付いた、いきなりどっかいったら…………」

心配するだろと言おうと思ったが肺がひくついていて言葉が出ない。どうやら運動不足の重症は相当なものらしい。


「なんか気になるもんでもあったか?」

おれはショーウィンドウ越しに商品をじいっと見つめているエリザに対してそう尋ねる。


「べ、別にきになるもんなんてないんだからねっ!勘違いしないでよっ!」


案の定いつも通りの返事がエリザから帰ってくる。そりゃそうだ、エリザに好きな食べ物を設定した覚えはない。


「ままー、あのお姉ちゃんなんかしゃべり方変だよ」

「外国の方なのよ、隣の男の子が変な日本語教えてるんじゃないかしら。社会にはちょっと残念な人も必要なのよ、ああいう人を見たらこうなっちゃだめだなって周りがわかるでしょ?」

「うん!」


後ろから明るくのほほんとした雰囲気で親子の会話が繰り広げられているがスルースルー。そんなに変なしゃべり方だろうか。自分としては特に……。


『ディティールがなってないのよあんたのキャラは』

ふと、2階に上がる途中のあいつの姿が鮮明に思い出される。

待て、なんでいまあいつが言ったことなんて思い出すんだ?どうしてこんなタイミングで……。


『ままー、あのお姉ちゃんなんかしゃべり方変だよ』

今度はさっきの子供に言われたことまで沸いてきた。


いやそもそも、おれはとくになんとも思っていなかったのか?二人でデートしてきて今までの間で本当になんにも感じずにエリザを見ていたか?

その時、自分の中で抱いていた違和感とあいつの言っていた言葉がかちりと音を立てて歯車のように噛みあった気がした。


さっきまで感じてた違和感は胸やけなんかじゃない。気になってる男子とデートするつんつん系の女子はデート開始にまわりをきょろきょろするんじゃダメだ。少し照れながらこっちを気にしつつもその挙動をこちらには悟られたくないみたいな恥じらいが必要なんだ。


おれが女子高生を見てた時もそうだ。おれが描きたい、おれがエリザらしいと思うエリザならば嫉妬した表情をみせながらもどっちが好みだったの?なんて聞いてきた方がいい。

本当は自分だけを見てほしいし余所の女を見ていたなんて許せない、けど素直になれないから仕方なくそんなふうに聞いてくるそういうエリザ。


別におれはエリザが今何かをほしそうにしてるなんて思ってない。エリザは俺が作ったキャラクターだしそんな設定は書いた覚えがない。エリザがほしいものなんて俺には分からない。


それでも


からんからんという鐘の音なる中エリザの手を引いて店内に入りカウンターの前に立つ。


「すいませんレモンタルト3つ、持ち帰りで。」

気がつけばそう言っていた。隣にはきょとんとした顔のエリザがいる。


立体的にしろってのはつまりこういうことか。

たぶん今までのプログラムのエリザなら、こんなものもらっても別にうれしくなんかないんだからねっとか言い出すんだろう。でもそんなのは記号的でエリザじゃないなって思った、そんなふうに機械みたいに生産された台詞を出していくのはエリザじゃないなって。


きっとエリザならここは


「お前が好きなものとか知りたいからさ、帰ったらこいつの感想聞かせてくれよ」


「お、おいしくなかったら今度は別の場所につれてきてもらうわ。」

こんな風にいうだろうな、なんて。

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