死にたがりな僕、生きたがりな君
初投稿です。
ーー僕が死にたい。と言ったとき君がどんな顔をしていたのかはよく覚えているよ。
僕は何度も君のことを見ているからね。
君は閉じていた目をゆっくりこちらに向けながら傷ついたように、けれども同時に僕を哀れむようにこう言うんだ。
ーーだったら死ねばいいじゃない。と。
そりゃそうだ。なんせ彼女はその時、白いベットに横たわって、腕には点滴を注入するためのチューブがつながっている状態、要するによくドラマで見る典型的な病人スタイルだったのだから。
詳しい病名や症状は知らないけれど、明日死ぬかも知れないし、十年後に死ぬかもしれない病気に彼女はかかっているんだってさ。
そんな彼女に向かって今まで風邪をひいたこともない僕が死にたいなんてほざくんだ。
僕が彼女の立場だったらふざけるなって思うね。
でもしかたないじゃないか。死にたいんだもの。
そして君は続けて、私は生きたいわ。と聞き逃しそうな小さな声で呟くんだ。
もし、僕がそれを聞きとれなかったとしてもきっと君がそう言ったのだとわかる。そう断言しよう。
だって、僕は何度も君のことを見ているからね。
明日も生きていられるといいね。
僕はきっとそう言うのだろう。
思ってもみないことを言うのは僕の特技のひとつだからね。
そうね。あなたは早く死ねればいいわね。
僕の言葉に対して彼女はこう言った。
もしかしたら君も僕と同じ特技を持っているのかもしれないな。
そのあともいつもと同じように、僕は死にたい。私は生きたい。などというとりとめもない会話をして面談時間終了になるのだろう。
そして絶対に、僕と君は別れ際にこう呟くんだ。
「生きたい」 「死にたい」
とね。
その次の日、彼女は死ぬ。
僕はそれを見届けた後、病院の屋上から飛び降りて死ぬ。
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------意識が覚醒する。
あぁ、またなのか。
「君の願いだけ叶うのは不公平じゃないかなぁ。」
思わず一人ごちてしまう。
こういうことをされると神様というのはいつでも残酷な存在なんだ。というのを実感させられるなぁ。
まあ仕方ないか。
憂鬱な気持ちを切り替えて、なるべく自然に見えるような笑顔が作れるかどうか確認する。
うん、大丈夫そうだ。
大きな深呼吸をひとつしてから、目の前のスライド式のドアをゆっくり開ける。
真っ白い部屋の中に入り、彼女の寝顔をいつものように眺めながら、僕は呟く。
「死にたい」
これはジャンルどれが当てはまるんですかね?