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バカップルがだべってるだけ【微改稿】

 

「冗談じゃ、ねえ、って」

「えー。ウソ、マジでえ? そりゃーおこだわ」

 美羽は俺と背中を合わせてるのに、つないだ手をゆらゆらさせながら、話半分に適当なあいづちを打って白い指でスマホをいじる。

 学校帰りの家デート。学生ってそんなもんだよな。ファーストフードとかファミレスとかでも、まあ、どこだって別にいいけど。今日はマンガを返して貰って続きを貸すから家。

 まあ、家ったって親居るし何にもないけど。

 ソファもあるけど、背中くっつけてリヴィングの青いふかふかな絨毯(じゅうたん)に二人でぺたんて座って。(たま)に相手に体重掛けたりつないだ手を引っ張り合ったりして、何でも無い事をだべる。

 膝に抱き上げたら恥ずかしいと真っ赤になって結構本気で殴られた事があって、意識されんのは嬉しいし真っ赤なかおは可愛かったけど、痛かったからやめた。並んでべったりくっつくのもくっついた側の腕ぶつけたりするし、試行錯誤の結果、背中合わせに座るので落ち着いたんだ。

 何でくっつきたがるのか? え、くっつきたくなるだろ。ベタベタしたくなるだろ、恋人だし。美羽もひっついて来るから、くっつくのヤじゃないんだろうし。

 顔は見えないけど、合わせた背中から伝わるものはあるし、手をつなぐと結構判るものがある。

 へこんでるなとか、嬉しそうだとか、偶に拒絶だとか。構ってみたり、一緒にハシャいでみたり。ただギュッと手を握ってそっとしておく事もある。

 握った手が構って欲しそうにいたずらして来たり、こっちから仕掛けたりもする。

 側にあるスナック菓子の、あんま手が汚れない奴を選んで食べながら、美羽は片手でスマホを器用にいじる。

 そう、さっきから俺の話より友達とのラインに夢中なのだ、こいつは。こんなべったりくっついてる俺は無視かよ、俺も構えよ、と抗議のつもりでつないでた手を引っ張って、くっついてる背中に少し寄りかかる。

 ちっちゃくて柔らかい背中。だから、つぶさない様に手加減してちょっとだけ押す感じ。

 「重いじゃんばか」俺の手を引っ張り返して笑い声を立てるから、また手を引っ張り返す。くっついた背中にさざなみが走って妙な具合でひびき、楽しくなった。笑い声を身体を通して聞くとこんな風なんだ。

 俺も笑って「うりうり」とふざけてもう少しだけ体重を乗せてやる。美羽の少し染めた短い髪がふわふわと俺に抗議する。花みたいな匂いが鼻先をかすめて、途端にギャハハと笑い声が弾けた。

「ちょ、重いよばかぁ。マジやめて」

「降参?」

「こーさん」

 美羽は笑って降参する。

 美羽は裏表がない。面倒な駆け引きも何もなくて、素直でわかりやすい。飾り気がないっていうのかな。や、見た目はフツウ。ううん、可愛いけど。バカだけどそんなのお互い様だし、そういうのとも違くて。

 楽しければ楽しい、悲しければ悲しい。まっすぐで、カッコつけない感じ。そこが好きだ。

 俺は寄りかかった身体を戻して、体重を乗せないで自分のよりちっちゃくてあったかい背中にべったりくっつく。美羽もそうして頭を首のあたりにコツンとくっつけて来たから、こっちも後ろ頭を乗せる感じにくっつけてみる。

 背中にすきまが出来るけど、ふわふわいい匂い。

「なに話してたっけ」

 引っ張り合った手が少し痺れて、握ったり、開いたり。美羽もそうなんだろう。細い指が気まぐれに俺の手の甲や指を叩く。 即興の鼻歌みたいにでたらめなリズムが何だか楽しい。だから俺もすべすべした手の甲をトントン叩いてみる。

「忘れてやんの」

 なんでもいーじゃん。そう笑った美羽がいたずらな俺の指に指を絡めて、手をつなぎ直す。

 何もなくったっていいんだ。

 一緒にこうしていられたら、それだけでいい。場所とか関係ない。どこだって、何をするんだって、楽しいから。

 同じ気持ちが合わせた背中とつないだ手から伝わるのが嬉しいから、美羽の手に俺も指を絡めてギュッと握る。すきまなんてないくらい深く。

 美羽は笑って握り返して、背中に寄りかかって来た。さざなみみたいな震えが伝わる。美羽にも多分同じのが伝わっただろう。


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