猫を使ったひとつの実験
私は数式を知らぬ科学者。故に真の科学者である。今からその研究の1つをお見せしよう。
ここに、一匹の牡猫がいる。名前は、エリアと言い、ただただ真っ白な毛繕いの上手な猫だ。この、ただの猫が、今から常識の範疇を超える。それも、とても簡単な方法で、だ。
「アニムニクス、こちらへおいで、ミッカニッカ、こちらへおいで」
こう、私が語り掛ける。すると、どうだろう、猫のエリスはその場から忽然と姿を消した。パッと消滅したのだ。まるで編集した映像のようにエリスはいなくなった。しかし、ここまででは、まだそれほど驚く事もないだろう。しかし、この最中もエリスにはとんでもない事が起こっているのだ。
そして、15秒ほど経過した今、エリアは再び現れた。2匹の黒い斑模様の猫を連れて。この2匹の猫が必ず現れ、しかも現れてすぐには眠った状態ある事を私は勿論知っていた。あとは最後の仕上げをするだけである。
「目覚めたまえ洗濯機。君の中の服は乾いたはずだ」
そう、私が言うと、2匹の猫はその場で光の渦になりグルグルと私の汚い家のなかを暴れ蝿のように飛び回ると、最後はビロンと形を広げ、薄っぺらな2枚のTシャツになった。どうだろうか? 想像できただろうか? もしできたのならば、このTシャツをあなたに差し上げよう。
この実験では、言葉とは科学を超えた魔法のような側面を持つことがわかる。上手く使えば生きる上で役に立つ素晴らしいものだが、使い方を誤れば他者を傷つけ、殺し、自分をも破滅させるに至ることもある危険なものでもあるのだ。
だから、猫のようにニャアと鳴いて日々を安穏と生きるのは、ある意味において正しい進化だったのかもしれない。




