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1章~黒の信念~ no,2「生徒会権争奪戦」

「ここが高等部の武闘結界だ。装備の整備カウンターから仮眠室まで、必要なものなら何でもそろってる。プレパレイションルームは8部屋だ。そこから直接転送室に行けるようになってるから中等部のより使いやすい。」「へぇ……」施設を見回しながら考える。(プレパレイションルームから直接、って事は、結界の中で初めて相手の装備が分かるって事か。今までみたいに装備を見られる事がないから、装備対策のいたちごっこはできないわけか。)今までなら、プレパレイションルームから転送室まで歩いて行かなければならず、その装備を見て、その相手に相性のいい武器を…じゃあその武器に適した防具を……そんな事をして時間ギリギリまで始まらない事がしょっちゅうだった。ありがたい変更点だ。「じゃぁ、役員決め終わらすか。クロウ、ジン、メリー、ユレイの順に1から4番のプレパを使ってくれ。」「はい。」

プレパレイションルームに行くと、中等部から見慣れた姿見やバックパッカーがあった。バックパッカーは、生徒証をかざすと事前に預けた装備を転送してくれる機械だ。当然、まだ何も入れていない。ついでなので鞄から予備の剣を一本だけバックパッカーに突っ込み、転送。いつもの装備を整えて入ってきたのと反対側に入る。これも見慣れた転送室だ。いつものように死亡予防などの各種魔法がかけられ、切り取られた世界へ転送される。久々のその感覚に、胸が躍った。


「“十字屋敷”か。こればっかりは中等部と変わらないな。」十字屋敷…東西南北にのびたその名のとおり十字形の屋敷だ。特徴はその広さと、各方角の窓から出られる庭、その中央にある噴水だ。噴水は太い水路から吹き上げており、流れに逆らえば屋敷の地下や別の庭の噴水に移動する事もできる。屋敷自体は噴水の水源がある地下、一番楽に庭に出られる見通しの良い一階、隠れる所や物が多く、部屋が多い上、窓の無い二階、そして十字の交点にある、四つ全ての庭を見通せる展望台。ここでの戦いのキーは、状況に応じた位置どり。一階は見通しが良い分、相手に目認されやすい。二階は隠れられて有利かと思うが、逆に逃げ場が無さ過ぎる。庭は展望台の絶好の的だし、展望台は複数の庭に人がいたらどちらしか狙えず、これもリスクを伴う。地下は噴水を使う奴の通り道なので水中からの奇襲の可能性がある。(どこも一長一短……まぁ、”待ち“は無いな。)転送された場所は、一階……庭を見る限り東端だ。剣を軽く握っただけの緩い構えで、中央に向かう。が…中央にさしかかった時点で目認されたらしい。「[ファイアクラッカー]!」「うお…!」突然の襲撃。咄嗟

に前に飛び込みかわす。《クロウ、左!》「[斬月影衝]!」ルゥナの声に体が反応し、左に剣を振り抜く。魔力を込めて鋭く降られた剣は、その三日月形の軌跡を刃に変え、襲撃者を襲う。ルーン流魔法剣術の初歩、[斬影衝]の変形だ。が、短射程だが軌道に尾を引く特徴があるクラッカーに阻まれる。「…ユレイ…!」ゆったりとしたした白い魔術ローブ、竜骨のついた炎精両手杖、剥き出しの敵意。「……今日こそ…雪辱を晴らすわッ![フレイムチェイサー]!」「上等![センス・オクトーバー]!」お互いに武器を強化する魔法をかける。[フレイムチェイサー]は武器の軌道を追いかける火炎弾を発生させる術。[センス・オクトーバー]によって冷気を帯びた剣で火炎弾を相殺してしまえばいい。「…やぁっ!」予想通り、足元を狙って杖を振ってくる。バックステップで杖をかわし、チェイサーだけを狙う。(…!?)チェイサーが来ない。俺の剣は大きく空を切る。ユレイの顔が笑いに歪むのが見えた。「チェイサーをかけたのは……こっち!」「……っぁ!」蹴り。ローブに隠れて見えなかったが、ブーツに鉄板が打ち付けてあるようだ。脇腹に刺さる鈍痛。次にチ

ェイサーによる連撃が(………あ。)思った。チェイサーが蹴りの軌道を追いかけても、俺を直接蹴ったんじゃ意味ないじゃん。足が俺に当たる、即ちそこで蹴りの軌道が終了する、足甲の長さ分足りなくなるんだから。予想通り、火炎弾は俺に当たる一歩手前で消失する。「……あ。」向こうも気づいたらしい。が、もう遅い。「[フルムーンバッシュ]!」得意の超短射程魔法を放つ。円形の力場が俺の前に出現し、ユレイが遠方へ飛ばされる。すかさず魔力を足に纏い猛ダッシュ、追撃。「[斬月影衝・集][斬月影衝・槍]!」剣の軌道を変えた二種類の斬月影衝を放ち、フィニッシュに入る。「……[月光剣・破]!」大量の魔力を剣に流し込む。濃紫の光が剣を覆う。「らぁぁぁぁっ!」爆音と共に剣を振り下ろす。「…っくぅ…」ユレイも体制を立て直し杖で剣を受けるが、到底受けきれるはずもない。杖ごと叩き斬り、ジ・エンド。「…あきらめ…ない……んだから……」死亡判定が下され、結界の外、転送室へ戻される。ここで受けた傷は完全に治療される。(諦めない…か。)交流戦で戦い、勝利して以来ずっとこうだ。まあ、向こうはことごとくケアレスミスで負けて

いる。強い事は確かなのだが。「……あ痛てて……」《一番、クロウ・ナイトサイドによって四番、ユレイ・ライトが死亡判定を受けました。残り、三人です。》「ちょっ……?!」突然のアナウンス。こんなの聞いてない。(場所こそ言われてないものの……厄介なアナウンスだな。)誰が活動的に動いているかだとか、最後の二人になるまで隠れきる戦法をとっている奴がいる、なんて事が手に取るように分かってしまう。「うーん……これは対策をたてないとなぁ……」「呑気だね。」「いやー…だってこれさぁ……ってちょっとまて次から次へなんでこうも俺と当たる?!」背後から声をかけてきたのは、ジン。そして更にジンの向こうからも。「狙ってますもの。」「同盟組んでやがるし?!」「戦い慣れている相手同士じゃ意味がありませんもの。」「……はは」「…どうしたのさ?怖じ気づいた?」「いや。こっち五人だし。」「「???」」二人共呆けている。まあ、初対面だしなぁ。「……んー」剣を再び構える。ジンは大剣に中程度の防具、メリーは二丁拳銃の先端にナイフが括り付けてある遠近両方に対応した武器と、重装防具。陣形はタテでジンがメリーを庇う

体制だ。「いつまでぼーっとしてるつもりッ!」ジンが大剣を引き、距離を詰めてくる。「[鎧破兜砕撃]!」「[鍔打・天]」横に大きく振り抜かれる大剣を、両手を添えた鍔で受ける。手首に鈍い痛みが走り、剣が宙に舞うのが視界の隅に映った。とりあえずそのまま倒れ込む様に振り抜かれる大剣をかわし、宙返りの要領で距離を取る。メリーが俺の剣を遠くへ蹴飛ばすのが見えた。「あらー……」「呆気ないなぁ。終わり?」「ではないですわよねぇ?」人の剣を蹴飛ばしといて笑顔で言わないで欲しい。「いやぁ…参った参った…ぶっちゃけどうにかなると思ってたからさ。」「なめられた物ですわね。主席になって天狗ですか。」「うーん…やっぱ二対一はキツいわ。…………だからさー」「組むな、って?それは無いね。これで終わりならそれまでさ。」「いやいや、んなこと言わ無ぇよ……だからよ。二人でやるわって言おうと思って。」「さっきから五人だの二人だの…真面目にやって下さらない?」「……[精霊憑依:浮脚靴&桜散鎌]。」魔力の充填が終わり、三日月の精霊、クレーセンが俺の身体を一部支配するように憑依する。地面からほんの少し浮く感覚。いつ

の間にか左手に、華奢な見た目の柄に消え入りそうな薄く鋭い刃。服装も袖の無い動きやすい物になっている。他からみれば一瞬で姿が変わる…変身だ。正直魔力を溜めて居る間、ジンかメリー、どちらかが痺れを切らさないかビクビクだった。二人が唖然としているのを見ると、笑いが零れる。「…くっ……っ…くくくっ…」「時間稼ぎ…っ!」『さァ、続キと行コうカ!』俺とクレーセンの声が二重奏を奏でる。軽く細い鎌は、剣より格段に早い攻撃をジンにお見舞いした。肩を抉る一撃に、苦痛に顔が歪む。すかさずメリーが赤い銃弾を撃ち込みながらフォローに入ってきた。ジンも意図を察し、下がる。《お二人共切り替えが早いですね…私を呼ぶのも納得です。》(二人とも強い…とにかく判断の速さとコンビネーションの質が凄い。)二丁拳銃の銃剣と弾丸の連続攻撃を避けながら打開策をねる。「[銃術:アルファ‐カトレア]!」トリガーに指を掛けながら銃を回す連続銃撃。至近距離での攻撃に急所を避けるので精一杯で、右肩に二発、腕に一発、左肩に一発もらった。その時、リボルバーが回っていない事に気がついた。(回らない…魔法銃か。リボルバーは飾り付けの

フェイク…)「メリー!」再び陣形が入れ替わる。邪魔のしにくいベストなタイミングだ。肩に簡易な包帯を施したジンの大剣が再び俺の横をかすめ、床に突き刺さる。床にひびが入り、破片がビシビシと飛ぶ。「……!」「まだまだ![跳蛇襲砕顎]!」床を離れる反動を利用して、大剣を斜め振り上げてくる。とっさにしゃがんでも髪が何本もぶった斬られる。憑依の研ぎ澄まされた反射が無ければ間違いなく顔から真っ二つだろう。「っしゃぁ!」しゃがんだまま鎌を振り上げて一閃。決定打だった。《ジン・ベルセルクがクロウ・ナイトサイドによって死亡判定を受けました。残り二名です》「まだまだ行くぜっ!」疾駆。俯いていたメリーは顔をあげ、二丁剣銃を構え直した。スケートをするような浮遊状態でのスピンで連続的に鎌での一撃を振るっていく。メリーはその一撃一撃を丁寧に交わし、銃撃を放ってくる。バックステップをしながらの銃撃は狙いが全然定まってなかったが.俺の反撃が、始まる。

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