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Estate.  作者: 本庄茉白
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3/4

Date 7/10

朝から原稿を書いていた手を止めて、目を上げた。

 そろそろ、手も、目も大分疲れている。

 窓の外に目をやれば、空は真っ赤に染まっていた。

 サキを誘ってお茶でも飲もうか。

 そんなことを思い、立ち上がった。

「サキー」

 声をかけたけれども、いつもならば返るはずの明るい声はない。

 出かけているのだろうか。

 玄関に向かうと、玄関は開け放ってあった。サキの靴はない。

 とはいえ、まさか玄関を開け放ったまま、どこかに行くわけもないだろう。おそらく裏庭にでもいるのだろうとあたりをつけ、俺は縁側へ向かった。

 裏庭には、背の高い向日葵が沢山植えられている。サキは、おそらく向日葵に水でもやっているのだろう。

 縁側から裏庭を覗くと、思った通りサキはそこにいた。

 声をかけようとした俺は、思わず口をつぐんでしまう。

 なぜならば、そこに立っていたサキの纏う空気は、俺の知っている、明るく子供のようなサキのものではなかったから。

 夕日に照らされて真っ直ぐに向日葵を見上げるその姿は、まるで一枚の絵画のようだった。

 ただ、美しいと思った。

 凛とした空気を纏い、真っ直ぐに立つ彼を、俺はただ、美しいと思った。

 この人が、本当に俺の前で明るく笑っていたサキなのだろうか。

 そんな疑問が頭をよぎる。

 ふ、と彼がこちらを向いた。

 絵画のようだった空気が均衡を失い、動き出す。

「あれ?真宏?」

 一瞬驚いた顔をしたサキは、次の瞬間すぐに笑顔になった。

「ごめんね、何か用事だった?」

 そう聞いてくるサキに先ほどの空気は感じられない。なぜか少しほっとして、俺は口を開いた。

「用事、ってほどでもないんだけどさ。お茶でも飲もうかと思っただけで」

「あぁ、そだね。もう水もやり終わったし、お茶飲もう」

 嬉しそうにこちらへ向かうサキの向こう側、背の高い向日葵たちを俺は見遣った。

「この向日葵、サキが植えたのか?」

「え?うん。そうだよ。元気に育って嬉しい」

「どれも大分大きいよな」

「そうだねえ。もう少ししたら、きっと綺麗な花が咲くよ」

 そう言い、サキも向日葵を再び見上げる。

 横顔が、赤い夕日にくっきりと照らされていた。

「……でも、向日葵も嬉しそう」

「?」

「真宏が、この家にいるから」

 サキが、微笑んで俺を見つめた。

 それは、俺が今までに見たことのない、笑顔だった。


 熱い風が吹き抜けて、窓辺の風鈴を揺らした。

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