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落第召喚士は最弱から英雄へ

作者: でんじ
掲載日:2026/02/23

 その日、俺は“正式に”落第した。


 王立魔導学院・最終実技試験。


 闘技場の中央で、俺の前に立っているのは監督官と、見慣れたクラスメイトたち。そして観客席には、次代のエリート候補たちを見に来た貴族たち。


「ユウ・クロード。魔力量、基準値の三割未満。攻撃魔法、初級未満。総合評価――落第。」


 淡々とした宣告。


 ざわめき。


「やっぱりな。」

「召喚しか取り柄ないくせに、その召喚も弱いんだろ?」

「スライム王子の誕生だな。」


 笑い声が刺さる。


 俺は拳を握った。


 分かっている。俺は弱い。


 魔力が少ない。火も雷もまともに出せない。防御魔法も持続しない。唯一使えるのが“召喚魔法”。


 ――ただし、呼び出せるのは小さなスライムだけ。


「最後に、形式だけでも実演を。」


 監督官が冷たく言う。


 俺は小さく息を吐いた。


 円陣を描き、詠唱する。


「契約に応じよ。来たれ、我が眷属。」


 魔法陣が光り、ぽよん、と音を立てて現れたのは、半透明の小さなスライム。


 観客席から失笑が漏れる。


「はは、やっぱりそれか。」

「子どもの遊びだな。」


 スライムは俺の足元でぷるぷる揺れている。


 分かってる。弱い。誰よりも。


 でも――


 その瞬間。


 警報が鳴り響いた。


 闘技場の外壁が爆ぜ、巨大な魔獣が乱入してきた。


 黒い毛並み。赤く光る目。全身を覆う瘴気。


「暴走個体だ! 結界を張れ!」


 上級生たちが慌てて魔法を放つ。


 だが。


 炎は弾かれ、雷は吸収され、氷は砕かれる。


 一撃で三人が吹き飛んだ。


 観客席は悲鳴に包まれる。


「撤退だ! 学生を下げろ!」


 だが、魔獣は闘技場の中央に陣取り、逃げ道を塞ぐ。


 俺の前に、その巨体が迫った。


 足が震える。


 勝てるわけがない。


 俺は落第だ。


 でも。


 後ろには、逃げ遅れた少女がいた。


 銀色の髪。見覚えのある顔。


 ――レイナ・ヴァルディア。


 元・学院首席。


 禁呪事故で失脚した、堕ちた天才。


 彼女は立ち上がろうとして、膝をついている。


 魔力暴走の後遺症。


 今の彼女は戦えない。


 魔獣が咆哮する。


 俺は、無意識に叫んでいた。


「頼む……!」


 足元のスライムが、ぴくりと震える。


 その体が、わずかに光った。


 ……?


 魔獣の爪が振り下ろされる。


 その瞬間。


 スライムが跳ねた。


 あり得ない速度で。


 魔獣の腕に絡みつく。


 次の瞬間、爆発的な光。


 轟音。


 闘技場が揺れる。


 土煙が晴れたとき。


 魔獣の腕は、消えていた。


 切断されて。


 沈黙。


 全員が、俺とスライムを見る。


 スライムは、さっきよりも一回り大きくなっていた。


 体表が淡く発光している。


「……進化、した?」


 あり得ない。


 召喚獣が、戦闘中に。


 レイナが、震える声で呟く。


「その召喚……普通じゃない。」


 魔獣が再び咆哮する。


 今度は本気だ。


 俺は震える足で立ち上がる。


 落第だろうが関係ない。


 弱いままで終わるつもりはない。


「いくぞ。」


 スライムが応えるように震える。


 そのとき、俺はまだ知らなかった。


 この力が、王国の禁忌に触れていることも。


 俺の落第が、世界を揺らす始まりになることも。


 ただ――


 俺は初めて、戦う覚悟を決めた。


(続く)


 その日、俺は“正式に”落第した。


 王立魔導学院・最終実技試験。


 闘技場の中央で、俺の前に立っているのは監督官と、見慣れたクラスメイトたち。そして観客席には、次代のエリート候補たちを見に来た貴族たち。


「ユウ・クロード。魔力量、基準値の三割未満。攻撃魔法、初級未満。総合評価――落第。」


 淡々とした宣告。


 ざわめき。


「やっぱりな。」

「召喚しか取り柄ないくせに、その召喚も弱いんだろ?」

「スライム王子の誕生だな。」


 笑い声が刺さる。


 俺は拳を握った。


 分かっている。俺は弱い。


 魔力が少ない。火も雷もまともに出せない。防御魔法も持続しない。唯一使えるのが“召喚魔法”。


 ――ただし、呼び出せるのは小さなスライムだけ。


「最後に、形式だけでも実演を。」


 監督官が冷たく言う。


 俺は小さく息を吐いた。


 円陣を描き、詠唱する。


「契約に応じよ。来たれ、我が眷属。」


 魔法陣が光り、ぽよん、と音を立てて現れたのは、半透明の小さなスライム。


 観客席から失笑が漏れる。


「はは、やっぱりそれか。」

「子どもの遊びだな。」


 スライムは俺の足元でぷるぷる揺れている。


 分かってる。弱い。誰よりも。


 でも――


 その瞬間。


 警報が鳴り響いた。


 闘技場の外壁が爆ぜ、巨大な魔獣が乱入してきた。


 黒い毛並み。赤く光る目。全身を覆う瘴気。


「暴走個体だ! 結界を張れ!」


 上級生たちが慌てて魔法を放つ。


 だが。


 炎は弾かれ、雷は吸収され、氷は砕かれる。


 一撃で三人が吹き飛んだ。


 観客席は悲鳴に包まれる。


「撤退だ! 学生を下げろ!」


 だが、魔獣は闘技場の中央に陣取り、逃げ道を塞ぐ。


 俺の前に、その巨体が迫った。


 足が震える。


 勝てるわけがない。


 俺は落第だ。


 でも。


 後ろには、逃げ遅れた少女がいた。


 銀色の髪。見覚えのある顔。


 ――レイナ・ヴァルディア。


 元・学院首席。


 禁呪事故で失脚した、堕ちた天才。


 彼女は立ち上がろうとして、膝をついている。


 魔力暴走の後遺症。


 今の彼女は戦えない。


 魔獣が咆哮する。


 俺は、無意識に叫んでいた。


「頼む……!」


 足元のスライムが、ぴくりと震える。


 その体が、わずかに光った。


 ……?


 魔獣の爪が振り下ろされる。


 その瞬間。


 スライムが跳ねた。


 あり得ない速度で。


 魔獣の腕に絡みつく。


 次の瞬間、爆発的な光。


 轟音。


 闘技場が揺れる。


 土煙が晴れたとき。


 魔獣の腕は、消えていた。


 切断されて。


 沈黙。


 全員が、俺とスライムを見る。


 スライムは、さっきよりも一回り大きくなっていた。


 体表が淡く発光している。


「……進化、した?」


 あり得ない。


 召喚獣が、戦闘中に。


 レイナが、震える声で呟く。


「その召喚……普通じゃない。」


 魔獣が再び咆哮する。


 今度は本気だ。


 俺は震える足で立ち上がる。


 落第だろうが関係ない。


 弱いままで終わるつもりはない。


「いくぞ。」


 スライムが応えるように震える。


 そのとき、俺はまだ知らなかった。


 この力が、王国の禁忌に触れていることも。


 俺の落第が、世界を揺らす始まりになることも。


 ただ――


 俺は初めて、戦う覚悟を決めた。


(続く)


 その日、俺は“正式に”落第した。


 王立魔導学院・最終実技試験。


 闘技場の中央で、俺の前に立っているのは監督官と、見慣れたクラスメイトたち。そして観客席には、次代のエリート候補たちを見に来た貴族たち。


「ユウ・クロード。魔力量、基準値の三割未満。攻撃魔法、初級未満。総合評価――落第。」


 淡々とした宣告。


 ざわめき。


「やっぱりな。」

「召喚しか取り柄ないくせに、その召喚も弱いんだろ?」

「スライム王子の誕生だな。」


 笑い声が刺さる。


 俺は拳を握った。


 分かっている。俺は弱い。


 魔力が少ない。火も雷もまともに出せない。防御魔法も持続しない。唯一使えるのが“召喚魔法”。


 ――ただし、呼び出せるのは小さなスライムだけ。


「最後に、形式だけでも実演を。」


 監督官が冷たく言う。


 俺は小さく息を吐いた。


 円陣を描き、詠唱する。


「契約に応じよ。来たれ、我が眷属。」


 魔法陣が光り、ぽよん、と音を立てて現れたのは、半透明の小さなスライム。


 観客席から失笑が漏れる。


「はは、やっぱりそれか。」

「子どもの遊びだな。」


 スライムは俺の足元でぷるぷる揺れている。


 分かってる。弱い。誰よりも。


 でも――


 その瞬間。


 警報が鳴り響いた。


 闘技場の外壁が爆ぜ、巨大な魔獣が乱入してきた。


 黒い毛並み。赤く光る目。全身を覆う瘴気。


「暴走個体だ! 結界を張れ!」


 上級生たちが慌てて魔法を放つ。


 だが。


 炎は弾かれ、雷は吸収され、氷は砕かれる。


 一撃で三人が吹き飛んだ。


 観客席は悲鳴に包まれる。


「撤退だ! 学生を下げろ!」


 だが、魔獣は闘技場の中央に陣取り、逃げ道を塞ぐ。


 俺の前に、その巨体が迫った。


 足が震える。


 勝てるわけがない。


 俺は落第だ。


 でも。


 後ろには、逃げ遅れた少女がいた。


 銀色の髪。見覚えのある顔。


 ――レイナ・ヴァルディア。


 元・学院首席。


 禁呪事故で失脚した、堕ちた天才。


 彼女は立ち上がろうとして、膝をついている。


 魔力暴走の後遺症。


 今の彼女は戦えない。


 魔獣が咆哮する。


 俺は、無意識に叫んでいた。


「頼む……!」


 足元のスライムが、ぴくりと震える。


 その体が、わずかに光った。


 ……?


 魔獣の爪が振り下ろされる。


 その瞬間。


 スライムが跳ねた。


 あり得ない速度で。


 魔獣の腕に絡みつく。


 次の瞬間、爆発的な光。


 轟音。


 闘技場が揺れる。


 土煙が晴れたとき。


 魔獣の腕は、消えていた。


 切断されて。


 沈黙。


 全員が、俺とスライムを見る。


 スライムは、さっきよりも一回り大きくなっていた。


 体表が淡く発光している。


「……進化、した?」


 あり得ない。


 召喚獣が、戦闘中に。


 レイナが、震える声で呟く。


「その召喚……普通じゃない。」


 魔獣が再び咆哮する。


 今度は本気だ。


 俺は震える足で立ち上がる。


 落第だろうが関係ない。


 弱いままで終わるつもりはない。


「いくぞ。」


 スライムが応えるように震える。


 そのとき、俺はまだ知らなかった。


 この力が、王国の禁忌に触れていることも。


 俺の落第が、世界を揺らす始まりになることも。


 ただ――


 俺は初めて、戦う覚悟を決めた。


(続く)


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