初任務概要
「では本題、ブリーフィングだ。」
シルベさんが、手元の端末で写真を見せてくる。
それは、窓ガラスやショーケースの割られた、宝飾店の写真だった。
「強盗事件が起こった。監視カメラの映像によると、五人組のようだ。」
そういいながら、五人の顔写真をホワイトボードに貼り出す。
「暫定だが、分かっているのは生成の異能だ。確認されているのは金属バットのみ。イメージしやすいのだろうな。
だが、それだけしかできないと決まったわけではない。油断はするな。」
そういって、少し間を置く。
シルベさんの顔が少し曇ったようにも見えた。
「そしてもう一人だが、一般の警察では手も足も出なかったらしい。触れることさえ叶わなかったと。」
その言葉に、僕は息を吞む。
警察の手に負えない仕事が超常警察に回ってくる。
知ってはいたけど、やはり重い仕事だと改めて実感する。
「そこで君の異能だ、スピカ。
君の異能はチエと相性がいい。
音を消しての奇襲だ。
君ならできるね?」
と、僕に白羽の矢が立つ。
僕の異能なら確かに音は消せる。
けど、チエさんの異能って、何なんだろう?
「あの、質問いいですか?」
答える前に確認だけしておこうと、恐る恐る声を上げる。
「何かな?」
「チエさんの異能って、どんなものなんですか?」
「彼女の異能は、鎖を出すものだ。
その上、その鎖で絡めた相手の異能を減衰、強度によっては完全に使用不可にもできる。」
そんなシルベさんの説明に、チエさんはどこかバツが悪そうにも見える。
「まぁ、大体そんな感じよ。」
乱暴に言葉を放つチエさん。
早くこの話を終わらせてほしそうだった。
鎖の音を消す。
視認できる以上、イメージするのはさほど難しくは無いだろう。
「出来ると思います。」
と、先程の質問に僕は答えた。
「よろしい。
ここからは具体的な手筈だ。
異論や修正案があれば、いつでも口を挟んで構わない。」
シルベさんはそう言うと、一度僕の方を見た。
「彼らが集まっている部屋については調べがついている。監視も立ててある。
外に出た時点で君たちに連絡を入れよう。 このメンバーは屋外の方が強い。」
確かに、鎖の異能は狭い屋内では使いづらそうだ。
ほかのメンバーは、そこまで影響はなさそうに思えるけど……。
「まずはチエの鎖、スピカの消音を組み合わせての奇襲だ。
死角からとなれば、知覚や予知等、攻撃を予期するタイプの異能でなければ防ぐことは難しいだろう。」
僕が失敗すれば作戦そのものが不成立になる。
不安な気持ちは拭えない。でも、超常警察に入ったんだ、やれないなんて……。
「大丈夫?」
その言葉にはっとする。
ケイさんが、僕の顔を心配そうに覗き込んでいた。
「スピカさん、心配しないで。
失敗しても、誰かがフォローしてくれる。そのためのチームなんだから。
もちろん、成功させるのが一番だけどね。」
シアさんが、柔らかな笑みを向けてくれた。
「そうそう、僕たちの見せ場もちゃんと残してくれないと。」
と茶化すようにリンさんが言う。
「あんた目立ちたいだけでしょ。」
すぐ横から、チエさんがツッコミを入れた。
「そう言うことだ、あまり気負わなくていい。
一手で決まるかどうかも分からないからね。
もしそれで無理なら、リンの速さで。
相手が攻撃を読めるなら、対応しきれない速度での捕縛だ。
ケイはいつも通り、そのサポートを。」
リンさんの速さ?
網とか押し出すのかな。
それにケイさんのサポートってなんだろう。
いちいち聞いてたら話も進まなくなりそうだし……。
そんなことを考えている間に、話が進んでしまう。
「それでも無理なら、その場での対応になるだろう。
触れることさえ叶えば、シア、君の異能は大きな情報源だ。」
シルベさんが一度言葉を区切った。
「今回はスピカの初任務だ。
それぞれの異能、力量、スタイルを理解し合ってもらいたい。
とはいえ、特別な事をして欲しいわけじゃない。
できる範囲のことを。できないことは補いあってだ。いいね?」
「はい。」
皆と声を揃えて返事をする。
初任務への緊張と不安を抱えながら、ブリーフィングルームを後にした。




