子犬を拾ってきた
「大河」
「ん?」
俺が料理の本を眺めながら今夜の晩御飯を何にするか考えていたら、後ろから渚が話しかけてきた。
「実は相談したいことがあるんだが」
「相談?」
俺が本から眼を離し、渚の方を向いた。
「おい、渚。それはどうしたんだ?」
そしたら、渚が子犬を抱えていた。
「拾った」
渚は堂々と言った。
「拾っただと」
「ああ、今日は遠回りをして帰ろうかなと思って川岸の所を歩いていたら、段ボールの中に捨ててあった。しかも、段ボールには拾ってくださいと書いていたので拾ってきた。それで、大河飼っていいか?」
「だめ」
俺は即答した。
「何故だ!!こんなにも可愛いんだぞ」
「お前、きちんと世話できるのか?ご飯を買う金は?家は?俺達が学校に行っている時に誰が世話するんだ?」
「そ、それは」
「考えもなしに拾ってくるんじゃない」
俺は最後にきつい一言を言った。
「た」
「た?」
「大河の馬鹿あああああ」
そう言って、渚は俺の事を馬鹿よばわりして自分の部屋に戻って行った。しかも、きちんと子犬を連れて行った。
「なんで、俺が馬鹿呼ばわりされなきゃいけないんだ?」
・・・・・はあ、少し言いすぎたかな?まあいいや、とりあえずあいつに連絡しないとな。
俺はそう思い、携帯を取り出した。
私が子犬を連れて来て、三日が経過した。
「それで、まだ、大ちゃんは子犬を飼うのを反対しているの?」
鈴は子犬を撫でながら言ってくる。
「いや、何も言ってこない」
私と鈴は、外で子犬と戯れながら話をしていた。子犬にはとりあえず太郎と名前を付けた。首飾りとご飯とトイレも買ってきた。犬小屋は龍に頼み作って貰った。
「しかし、なんで大河はペットを飼うのを禁止にしているんだ?ペットは嫌いなのか?」
「いや、あたしは逆だと思うよ」
「逆?じゃあ、大河は動物を好きなのか?じゃあ、なんで飼ってはいけないんだ?」
「えっとね、それは大ちゃんの性質のせいなの?」
「性質?それはどういうことだ?」
犬アレルギーでもいうのか?
「怖がらせんだよ」
そしたら、大河が寮の中から話しかけてきた。
「びっくりした」
私たちはいきなり話しかけられた為、驚いてしまった。太郎も驚いたのか、鈴の後ろに隠れた。
「怖がらせるとはどういうことだ?」
私は大河に聞いた。
「そのままの意味。俺は何故か知らんけど動物に怖がられんだよ」
「それは本当なのか?」
私はにわかに信じれきれなかった。
「本当だよ。小学校の頃、遠足で動物園に行った時に、動物が一匹も出てこなかったんだ」
鈴は顔を背けながら言ってきた。
この鈴の反応からして本当だろ。
「でも、お前の体質のせいで寮でペットを飼っていけないのは変な話だろう。というか、それってどう見ても公私混同だぞ」
私が大河に怒りを覚えながら叫んだ。
「わかってる。だから、ほれ、これを渡しにきたんだよ」
そう言って大河はプリントを私に渡してきた。
「なんだこれは?」
「俺の知り合いがやっている奴が獣医でね。そこの予防接種のお知らせのプリントだよ」
「え、てことは飼っていいのか」
「ああ、ただし、条件がある」
「条件?」
「きちんと最後まで面倒を見ること。俺に近づけさせないこと。この二つだ。できるよな?」
「ああ、もちろんだ」
「よかったね。渚」
鈴は嬉しそうに言ってきた。
「ああ、そうだな」
「それじゃあ、俺は買い物に行ってくるからな」
「あ、ちゃと、待て、大河」
私は去ろうとした大河を呼び止めた。
「ん、なんだ?」
「ありがとう」
「どういたしまして」
そう言って、大河は買い物に出かけって行った。
「さて、太郎。大河も認めてくれたし今日からお前は私の家族だ。よろしくな」
「ワンッ!!」
私はそう言いながら太郎の頭を撫でると、太郎は元気よく吠えた。
この後、太郎を予防接種に連れていこうとしたら、太郎が逃げ出したのは言うまでも無い。
大河も一緒に散歩に連れていけば怖がれないと思うんだがな。 by 渚