出会い
夕日の日差しが差し込む放課後の学校。
死のう。
小学校の私はそう思い屋上に繋がる階段を上がっていた。
私は苛められている。
いつからか、わからないが、気が付いたらそうなっていた。
始めの頃は、無視をされたり、物を隠されたりだった。
でも、最近では靴を捨てられたり、教科書を刻まれたり、机に死ねを書かれたり、などなどエスカレートしてきた。
親にも相談しようと思った。でも、もしこのことを相談するともっと恐ろしいことをやってやると脅されたため相談できないでいる。
私は屋上の扉を開け、屋上に出た。
「よかった。誰もいない」
私は周りを確認して誰もいなかったことに安心した。
誰かいたら邪魔されるかもしれないしね。
私は飛び降り防止フェンスを乗り越え、向こうの方に立った。
「今日でこの景色ともお別れか」
私は少し寂しくなったがつらい思いをするよりはましだった。
「お父さん、お母さん、ごめんね。先に逝く私を許してね」
私は決心が揺るぐ前に飛び降りようと一歩踏み出そうとした。
「ん~、止めはしないけど、死んだって良いことないよ?」
そしたら、いきなり後ろから声をかけられた。
私は驚いて振り向こうとした。
「「あっ」」
そしたら、そのままバランスを崩して落ちてしまった。
これで、私死ぬんだ。
私、そう悟り目を瞑った。
「・・・・・」
しかし、いつになっても体中に衝撃がこない、それどころか誰かに片手を掴まれている感触がした。私は不思議に思いゆっくりと目を開けた。そしたら、そこには左眼に眼帯をした少年が私の肩手を掴んでいる姿があった。
「何かあったが知らないけど、目の前で飛び降り自殺を見さられちゃ寝起きが悪いよね」
少年は苦笑いをしながら、私の肩手を掴んでいた。
「は、離して!」
私は少年に向けて大声で言った。
「なんでさ?離したら死んじゃうよ?」
少年は冷静に答える。
「私は死にたいの!」
「じゃあ、なおさら離せないよ」
少年の腕に力が籠るのがわかる。
「ど、どうして?」
「どうしてって、俺がここで手を離したら俺が君を殺したようなもんじゃない」
「じゃあ、助けなければいいじゃない」
「知らないよ。勝手に体が動いたんだから」
「勝手にって」
どうして?初めて会った私を助ける意味なんてないのに。
「ところで、そろそろ引き上げていいか?って、引き上げるなって言われても引き上げるけどねっ!」
少年はそう言って私を軽々と引き上げた。
「よっと」
そして、そのまま私を抱き上げて転落防止フェンスを乗り越えた。
「とりあえず、これで安心かな?」
そう言って、私をゆっくり下ろしてくれた。
私はその場にしゃがみ込んでしまった。
「さて、もう遅いし帰るか。お前はどうするの?」
少年はのんびりと私に言ってくる。
「えっと」
私はそこで言うのを躊躇ってしまった。
せっかく、助けてくれたのにもう一度、自殺するなんて言えない。
「・・・・・私も帰るよ」
今日はもう無理だなと、私は思った。
「じゃあ、一緒に帰るか」
少年は私に手を差し伸べてきた。
「う、うん」
私は少々、顔を赤くして手を掴んで立ち上がった。
「じゃあ、行くか」
「うん」
そして、少年は歩きだした。私もその後ろについて行く。
「あ、そうだ。お前の名前ってなんて言うんだ?」
少年は階段を降りながら聞いてきた。
「名前?」
「そう、名前。と、その前に俺から言わないとな。俺は琥牙大河。お前は?」
「私は優燈。朝瀬優燈」
これが私と大河の始めての出会いだった。
「ん、朝か」
私は時計を確認しながら意識を覚醒させた。
久々に懐かしい夢を見たな。
あの時、私が大河に助けられなかった、私はここにはいない。大河は私の命の恩人なのだ。今の私は大河の物。いや、正確に言えばあの時、助けられた時に私の命は大河の物になったのかもしれない。だから、私は大河に身も心もささげる。
このことを大河に言ったら大河に怒られるかもしれないのでこのことは黙っておこう。
私は静かに隣を見た。
隣ではまだ大河が眠っている。
なんで、隣で大河が寝ているのかというと、私が大河の布団に忍びこんだのである。
この後、すぐにここから脱出しないと、大河に怒られてしまう。
だから、私は大河を起こさないように布団から出た。
「あ、忘れる所だった」
私は部屋を出ようとした所で、朝の日課を思い出した。
「大河、愛してる」
私は軽く大河の唇に自分の唇を重ねた。
大河、愛している by 優燈
友人でお願いします by 大河