どっちを選んでも嫌な予感しかしない
今日は待ちに待った運動会。
「あー、これから翡翠学園の運動会を始める」
校長が舞台の上で宣言した。
「ふあー」
俺はやる気なさそうに欠伸をしながらその光景を眺めていた。
「大河、やる気なさそうだな」
俺の欠伸を見て、しっかりと頭にハチマキを巻いている渚が聞いてきた。
「うん、ないよ」
俺は正直に答えた。
「そういう、お前はやる気があるな」
「もちろん。勝負なんだから勝ちたいだろう」
「そうか、がんばれ」
俺は適当に渚に言葉をかけておいた。
「それでは、選手のみなさんはそれぞれの待機場所にいどうしてください。プログラム一番、男子150M走にでる選手の人はスタート位置に移動してください」
アナウンサーの指示の元、俺達は全員行動し始めた。
「よお、大河」
「あ、姉さん」
俺が待機場所で自分の席に座っていると、揚羽がやって来た。
「なんだやる気なさそうだな」
「そりゃあ、俺の場合ほとんど出れないからね」
「あ~、お前も爺から注意された口か」
そう、俺は運動会が始まる何日か前に煉磨に『お主はみなとレベルが違いすぎるから、競技に出るなとは言わないから、少し力をセーブしてくれぬかの?』と言われたのだ。
「うん。そうゆう姉さんも?」
「ああ、私が出れば女子が可哀想だとも言われたよ」
うん。そりゃあ、爺さんに同意見だ。
「それで、大河。お前はどの競技に参加する予定なんだ?」
「借り者競走、騎馬戦、棒倒し、鬼ごっこ」
「なんだ。ほとんど私と一緒じゃないか」
うわ~、ますますやる気がなくなった。
「まあ、とりあえず。頑張れよ」
「うん。そうするよ」
揚羽はそう言って俺から離れて行った。
それから時間が流れていよいよ、俺が出る借り者競走の競技になった。
「ルールを説明します。スタートして、机にある封筒をどれか選び中に、入ってる紙に書かれている人物を探して、その人と一緒にゴールするだけです。なお、書いてるのは人物だけとは限りません。物の名前が書いているかもしれませんし、パフォーマンスが書かれているかもしれません。ちなみに去年には、そのおかげで告白をした人もいますので。そこら辺は配慮してください。あと、同じ人同士が書かれた場合は早い物勝ち、または奪ってください。それではそろそろスタートします。」
アナウンサーが長々と説明し、俺はそれを聞いて大丈夫なのかと不安になったが、他の生徒達と一緒にスタート地点に立った。
「それでは位置について、よーい・・・・・ドンっ!」
「死ねえええええ、大河」
そしたらいきなり、俺の両隣りの奴らが殴りかかって来た。
「あほか」
「あぐっ」
「ふぐっ」
俺はそれらをいなし、前のめりになった、両者の後頭部を掴み、顔と顔をぶつけせた。
「まずは、2人」
「おっと、いきなり、琥牙大河を最初に蹴散らそうとした男性2人が返り討ちに遭ったあったぞ」
「おい、アナウンサー、これってありなのか?」
普通はなしだろ。
「ありです。ぶっちゃけ、この借り者競走はなんでもありなので、いきなり、選手を狙ってもいいのです。ちなみに、琥牙大河選手の場合はレベルが違いすぎるので、正当防衛以外は手を出さないでください」
「それって差別だ」
「文句を言うなら、強くなりすぎた自分に言ってください。それより、早く走ってください。失格にしますよ?」
「ちっ」
俺は舌打ちをして、さっさと走り始めた。
机の所に着くと、さっそくどの封筒にするか選んだ。
まあ、俺はどれでもいいんだけどね。そこで、俺は適当に封筒を取ろうとした。
「あ、琥牙選手。お待ちください」
そしたら、アナウンサーに止められた。
「今度はなんだ?」
「あなたにはあなた専用の封筒がありますから今お届けします」
とても、嫌な予感だするんですけど。
俺は係りの子から封筒を受け取り、紙に書かれている文字を確認した。
以下の者たちを連れてゴールせよ。
・巫女 付属品 メガネ
・メイド 付属品 猫耳
・武人 付属品 スパッツ
・水着を着ている少女 付属品 浮輪
・浴衣 付属品 団扇
「ふざけんなあああああ!」
俺は紙を呼んで叫んだ。
「こんなの無理だろう」
「衣装はこちらで用意するので、似合いそうな人を連れて来てください」
「だから、無理だって」
「文句が多い人ですね。わかりました。なら、こうしましょう。もう一枚、その机の上から選んでください。そして、その内容と今の内容を比べてどちらかをやってください。これなら文句ないでしょ」
「ああ、ない。それじゃあ、これだ」
俺は机の上から一枚、封筒を選び、中から紙を出し内容を黙読した。
ゴール前で次のことをしてゴールしてください。
・自分の意中の女性を連れて、告白しなさい。そして、OKならどこでもいいのでキスをしてください。
もう、棄権していいですか?
俺は本当に思ってしまった。
「なあ、これって引き直しって」
「駄目です。それだと、くじ引きの意味がありません」
ですよね。
「さて、どうしますか?今、引いたものにしますか?それとも、さっきの奴にしますか?あと、両方にしますか?」
「いや、それは遠慮しとく」
「なら、早くどちらかを選んでください」
アナウンサーが急かすように言ってくる。
さて、どっちにしよう?