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黄金の騎兵と遺されし双刃

掲載日:2025/06/17

 金色に輝く巨大な槍斧(ハルバード)が、空を裂き、大地ごと草木をなぎ払う。


 その猛撃を紙一重でかわした《対峙する者》に、さらなる追い打ちが迫る。

 風が咆哮となって横なぐりに吹き荒び、身体をかすめるだけで皮膚が裂けるようだった。

 横転しながら逃れようとしたその姿を、風圧が弾き飛ばす。

 視界が揺らぎ、意識の輪郭が崩れていく。

 最後に映ったのは、宙を裂く黄金の蹄。

 ひと蹴りで、夢のように、すべてが遠のいていった。


 何人を屠ろうとも、《対峙する者》は現れる。

 荒野に屍を積もうと、その行列は絶えることがない。

 それは《別の誰か》であり、《同じ誰か》でもあった。


 死闘は、いつも夢のように訪れ、夢のように終わる。

 槍斧が、円盾が、蹄が。

 悔恨の色を湛えた顔が、まるで誓いを呑みこむように消えていく。


 騎兵は、その戦いに誓いを刻んでいた。

 それは他でもない、自ら選んだ誓いだった。

 だからこそ、幾度も槍を振るい、盾を叩きつけ、蹄を振り下ろす。

 《対峙する者》の姿を識ることもなく、想いを知ることもない。

 ただひたすら、蹂躙することだけが存在の意味だった。


 また一つ、小さな盾が宙に舞う。

 何度目のことだったか、もはや数えることすら忘れてしまった。

 かつては身を守るためのそれも、今や紙切れに等しい。


 《対峙する者》は体勢を崩しながらも、地を蹴って踏みとどまる。

 騎兵の槍斧が空を切り裂き、黄金の軌跡が振り下ろされた。

 金属がぶつかる鋭い音が、大地を震わせる。


 折れた曲剣(シミター)と、どこかの屍から奪い取った錆びた長剣(ロングソード)

 その二本の剣を交差させ、迫る刃の柄を受け止める。

 剣が軋み、力が食い込む。

 それでも、剣を滑らせながら一歩、踏み出す。


 右手の曲剣が、黄金馬の腹へ突き刺さる。

 馬が(いなな)き、騎兵の巨体を跳ね上げる。

 金の塊のような体が、草原に墜ちる。

 砂塵が舞い上がり、時が滲む。


 《対峙する者》は、荒れた風を踏みしめて跳躍する。

 逆手に構えた長剣が、しなるように騎兵の首元を穿つ。


 身体を貫く冷たい衝撃。

 その瞬間、騎兵は何かを思い出しそうになる。

 歓喜に染まった《対峙する者》の表情が、まるで幻のように光を帯びて揺れている。


 遠ざかっていく黄金馬の嘶きが、地を這うように伝わる。

 それは終わりの音。

 だが同時に、始まりの音でもあった。


 誓いは、まだここにある。

 薄れゆく意識の奥で、かつて何度も繰り返し抱いた想いが、再び胸に宿る。


 いつかの《対峙する者》の顔が、夢とも現ともつかない霞のなかに浮かぶ。


 今の自分は、どんな顔をしているのだろう──


 誰にも届かぬ問いが、静かに、胸の底に落ちていった。

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