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06 魔力を少しずつ増やす方法

「えっと、オースティンさんは、魔術師として活躍されているんですよね」

「なんだ、嬢ちゃん。魔術師としての仕事に興味があるのか」


 思い切って尋ねたソニアに、オースティンは面白がるような顔になった。


「魔術は面白いぜ。体の大きい魔物だって、俺の身体でも倒せるんだからよ。それなりの修行は必要になるがな」

「やっぱり。魔術ってすごいんですね」


 胸を張るオースティンをソニアはキラキラした目で見つめてしまう。


「魔術を使えばいろんなことができる。こうやってな」


 オースティンは言いながら、空中に魔法陣を描いた。魔法陣を構成する赤い文字が輝きだすと赤い火の玉に変わっていく。そしてそれが宙に浮かぶと、音を立ててはじけ飛んだ。


 まるで小さな打ち上げ花火のようだった。ソニアは思わず手を叩いた。オースティンは得意気に鼻をすすった。


「ま、こんな感じだな。俺は火と風に適性があってな。この系統の魔術なら一通り覚えてるぜ。それ以外の属性も、ある程度は使えるな。ま、魔法王国まで行ったのは伊達じゃねえってことさ」

「すごいですね! 私は魔法が全然使えないから余計尊敬しますよ!」


 ソニアは思わず詰め寄った。


「ソニア様の得意な属性は何ですか? 私は見ての通り水に適性があり、いくつかの魔術を覚えています。身体強化以外にもね。もし同じでしたら教えて差し上げますよ」


 横からアレクシーが口をはさんできた。どこか揶揄するように思えたのは気のせいだろうか。


「い、いえ。その・・・。私は、本当に資質に恵まれなくて」

「え? でも他より優れた属性くらいあるでしょう? まさか、加護なしでもあるまいし」


 頭を掻いたソニアに、アンソニーは驚いてみせた。


「アンソニー。やめろ。幼くともソニア嬢ちゃんは俺たちの保護対象だろうが。あんまりこの子の資質を明らかにすることを言うんじゃねえよ」

「しかし、ですよ? 護衛対象がどんなことをできるか把握しておくのは大切じゃないですか。それによってこちらの動きも変わってきますし」


 言い訳するアンソニーを、オースティンは厳しく睨んだ。


「俺たちが何をできるかを伝えるのはいい。だが、護衛対象の属性を全部知ろうとするのは御法度だろうがよ。ここではだれが聞いているかわかんねえんだぞ! ったく。お嬢ちゃんが小さいからってよ。学園で学ばなかったか? 他人の属性を聞き出すのは失礼だってよ」

「くっ! ・・・。失礼します。先に玄関で待っていますので」


 アンソニーは憤慨し、足早にその場を後にした。


「おいおい。護衛は明日からとはいえ護衛対象をほおっておいて先に行くのか? これだから最近の若え奴はよ」

「えっと・・・。なんか、すみません」


 恐縮して頭を下げるソニアに、オースティンは溜息を吐いた。


「お嬢ちゃん。ああいう場合はな。答えなくていいし、無視したっていい。常識はずれなことをしてるのはあいつなんだからよ。お嬢ちゃんが自分の属性を明らかにする必要はない。護衛主が戦わないようにするのが、俺たちの仕事なんだからよ。叱責したっていいくらいなんだぜ。まだ10歳だから仕方ねえがな」


 オースティンはソニアが叱責すると思って口を出さなかったようだ。今さらながらそのことに気づき、ソニアはますます恐縮してしまう。


 沈黙が続いてしまった。いきなりのミスに申し訳ない気持ちになったソニアだったが、思い切って聞いてみることにした。


「あの・・・。魔力量を増やす方法って、何かないのでしょうか」

「ん? お嬢ちゃんは魔力量を増やしたいのか?」


 意外そうに聞かれ、ソニアはあわあわとした。説明したいけど、自分の属性を明らかにしないようと言われたばかりだった。オースティンの意外そうな顔にたじたじになってしまう。


「えっと、あの、その」

「いいぜ。教えてやるよ。まあ増やすって言っても、そこまで効果があるわけじゃねえけどよ」


 そう言って鼻をすすると、オースティンは客間へと向かった。おそらくそこで、魔力量の増やし方を教えてくれるかもしれない。


 部屋の真ん中で、オースティンはソファーをどかしてどっかりと座り込んだ。胡坐を組んで腕を膝に乗せ、目をつむってみせた。


「こうやって座って、魔力を全身に行き渡らせるんだ。そして祈るのさ。魔力量が増えるようにってな。魔力ってやつは人の希望を叶えるために動く。こうやって瞑想を続ければ少しずつ魔力量が増えるって寸法よ」

「おお」


 オースティンの身体に、きれいに魔力が流れているのが分かった。ソニアが感嘆の声を漏らすと、オースティンは茶目っ気たっぷりに片目をつむってみせた。


「こうやって毎日10分くらい瞑想すれば、少しずつ魔力量を高められるらしいぜ。まあ、1回くらいやっただけじゃあ実感はないが、毎日続けるとな」

「す、すごい! あの、私もやってみていいですか?」


 頷くオースティンを見て、ソニアも早速やってみた。部屋の中に座り、腕を組んで目をつむる。そして、魔力を循環させれば!


「!! なんだ? 最初から、魔力を動かせている? 魔力の操作は、資質に影響されるはず・・・!!」


 楽しく動かすソニアの耳にそんな声が聞えてきた。不安になって片目を開けると、驚愕して固まるオースティンの顔があった。


「白の、魔力だと」


 オースティンのうめくような声が、ソニアの耳に届いた。

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