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05 新たな資質とソニアの護衛

「え? え? 白の属性が、呪われている?」

「そう言う話があるの。海を越えた南のほうのピレイル連邦では本気で禁忌ってされているわ。帝国でもあんまり歓迎されていないし」


 顔を青ざめさせた。南のピレイル連邦は水を信仰する国家で、この国とはかなりのやり取りがある。この街にも旅人が来たりして頻繁に交流があるのだ。


 もし、その中に白の属性を拒む人がいたら・・・。ソニアは、もしかしたらその人にひどく攻撃されるかもしれない。


 顔を青ざめさせるソニアを見て、ロザリーは慌てて言いつくろった。


「あ! でも、同じ外国のクローリー王国では白の属性は優遇されるって聞いたわ。なんでも王様自体が白の属性もちらしくてね。白の属性を使った回復とかも研究されているんですって!」

「え? そうなの?」


 日本人としての記憶があるソニアにとって、聖属性=回復はイメージしやすいものがあった。クローリー王国について知られたのは朗報だった。


「あの2国は魔法大国なのよね。魔力診断もこっちより数段詳細なのをやっているらしいわ。白と黒の属性も見るそうだし、資質も強いか弱いかだけじゃなくて詳しく見られるみたい。魔力過多だってあっちだと歓迎されるらしいから」


 魔力過多とは資質がありすぎてかえって暴走させてしまう人のことだった。その人たちは加護なしと同じくらい疎まれるらしく肩身の狭い思いをしている。


「そ、それじゃあ、私もクローリー王国に行けば」

「う~ん。クローリー王国は、ねえ。その、あんまりいいうわさは聞かないわ。なんたって帝国からの亡命者が作った国だからね。今は落ち着いているけど、その、闇魔とかいう怖いやつらに狙われていてね。そいつらが、あと10年くらいで目覚めちゃうってうわさだし」


 ソニアは口を開けたまま唖然としてしまった。クローリー王国に希望を感じていたのに、その思いはすぐにつぶされてしまった。


「や、闇魔っていうのは、あの魔族ですらも恐れる怖い種族だよね? その、人を見たら手当たり次第に襲い掛かってくる」

「うん。闇魔は帝国を滅ぼしたっていう前科もあるからね。かなり恐ろしい種族だって言うのは間違いないと思う。あの国、そんなのに狙われているから・・・」


 ソニアは自分の不運さには自信がある。あの国にわたることができてもきっとソニアは戦乱に巻き込まれてしまうだろう。


 そうなったら、きっと・・・。


「それよりも、ソニアは大丈夫? いきなり気を失っちゃうんだからびっくりしたよ」

「え? あ、うん。今は大丈夫かな?」


 話題転換したロザリーに何とか返事をすると、彼女はほっとしたように息を吐いた。


「お父様が言うには、多分魔力の使い過ぎだろうって。私たちは貴族だけど、さすがに魔法大国の貴族ほどの魔力量はないからさー。それでも、あんなに簡単に魔力切れなんて起こさないはずだけど?」


 貴族というのは平民よりも魔力量が多いものだ。ロザリーは伯爵並みの魔力があるというし、ソニアだって男爵の名に恥じないだけの魔力量を持っている。量だけ見れば、他の兄妹と同じくらいあるのだ。


 四大属性の魔法がほとんど使えないソニアには何の意味もないかもしれないが。


「せっかく白の魔法を使えるようになっても、すぐに魔力切れを起こしちゃうんじゃしょうがないよね。でも魔力量なら後天的に伸ばせるみたいよ。聞いてみたら?」

「聞いてみたらって、だれに?」


 途方に暮れたようなソニアに、ロザリーはきょとんとした。


「あれ? 聞いていない? 私は来週から私塾に通うことになったから、ソニアを守る護衛がいなくなっちゃうじゃない? だからお父様がうちに来る何人かに声を掛けて護衛をしてもらうことになったらしいのよ。そのうちの一人が、王都で魔法使いとして名を馳せた人なんだって」



◆◆◆◆



 そのあと、ソニアは父に呼び出された。執務室に入るや否や、父が2人の男を紹介してくれた。


「この2人が明日からお前の護衛をしてくれる。彼らの指示にはちゃんと従うようにな」


 書類を作りながら話す父だった。相変わらず帰ってからも忙しそうに仕事をしている。あまり話をする機会はないけど、こうして護衛を用意してくれる辺り、本人にはソニアを冷遇する気はないようだった。


「明日より護衛をさせていただきます、アレクシーと申します。よろしくお願いします」


 そう言って丁寧に頭を下げたのは、水色の髪と青い目をした20歳くらいの男性で、微笑む姿がなんだかさわやかだった。


「俺はオースティンってんだ。こう見えて、クローリー王国で魔法を学んだこともあるんだぜ。ま、今は落ちぶれて根無し草ってことだがよ」


 こちらは赤い髪をした中年で、茶色いローブに緑の目が印象的だった。なんだかこの人には威圧感があるとソニアは感じていた。


 2人とも、屋敷で何度か見かけたことがあった。多分、父が仕事を依頼していた人たちだろう。何度か仕事をして、ある程度の仕事を任せられると感じたから、ソニアの護衛に抜擢されたのかもしれない。


「えっと。ソニアと言います。明日からよろしくお願いします」


 そう言って頭を下げるソニア。貴族として簡単に頭を下げるのは間違いかもしれないが、少なくとも父には好印象のようだった。


「うむ。アレクシーくんはジラール男爵の3男だし、オースティン殿は高名な冒険者で、魔物との交戦経験も豊富だ。貴族令嬢のお前でもないがしろにしていい相手ではないぞ。ではお二方、明日からよろしくお願いします」


 そう言って退室を促す父を見て、まだ見捨てられていないと安心するソニアだった。

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