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ネガティブだけど、正ヒロイン  作者: 小谷草
第2章 撲滅聖女と学生生活
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43 猪たちの言い分

 森の中の祭壇で、3体の魔族がおつきのオークたちと待ち構えていた。


「いやあ、見事! まさか死霊のみならずあのオークまでも倒してしまうとは!」


 叫んだのは、イノシシの顔を持つ魔族だった。ジャドゥが倒した魔族とはおそらく違う。だが似たような姿は、それを見たリースを涙目にさせてしまう。


「今日はいるのね。昨日来たときは誰もいなかったのに」

「ああ。昨日来たのか。それはご愁傷さまだな。どうにも違和感があると思ったらお前だったのか。あれだけの罠を、全部すり抜けちまうなんてな。準備のために全員が外していたのが仇になったか」


 ニヤつく魔族を嫌悪感丸出しで睨みながら、ジャドゥは質問を続けていく。


「準備?」

「そう! あの婆だけでは足りなかったみたいでなぁ! お前たちのところに行った死霊で手いっぱいよぉ! んで、何とかこれを再現しようと思ったのさぁ! ま、こいつくらいじゃあ、さっきの死霊がせいぜいだったがなぁ!」


 そう言ってイノシシが持ち上げたのは、犬耳の少年だった。頭を掴まれたその少年は完全に気を失っているらしく、ぐったりとしてよだれを垂らしている。


「ディオン!!」

「ああ。お前と同郷だったなぁ! こいつ、王族の血をほとんど引いていなかったようなんだよなぁ。あの婆にも届かない力しかないでやんの!」


 王族、と聞いてソニアは戸惑ってしまう。


「知っている子?」

「う、うん。あの子とは小さいとき、一緒に暮らしていたんだ。従兄だって。別の場所に住むからって、引っ越していったんだけど・・・」


 戸惑ったように説明するリースに、ジャドゥが唇を引き結んだ。


「いやいやいや! 助かったぜ! 探していた犬っころの王族を、ここまで連れてきてくれるたぁな! ぐふふっ! これでこいつを完成させられる! この国の貴族の卵ってやつを皆殺しにしてやるぜ!!」

「お前!!!」


 ユーグが怒りに任せて一歩踏み込んだ。しかしすぐに動きを止めてしまう。突き出された少年を見て悔しそうに足を止めた。


「くそ!! 卑怯だぞ!! 人質なんぞ!!」

「ははははは!! まさか犬っころの子供の命を惜しむとはな!! 人間のくせに!! 俺たちを迫害しているくせに今さら偽善者ぶるか!!」


 叫び声をあげるイノシシの魔族に、しかしユーグは高らかな声で反論した。


「うっせえな!! クズのくせに魔族の代表面すんじゃねえぞ! うちの領には立派な魔族だってたくさんいるんだ!! お前たちなんかに一緒にされちゃあじいちゃんたちが迷惑すんだよ!!」


 思わぬ反撃に、イノシシの魔族は目を見開いた。


「だいたいなぁ! 魔族の扱いだってその領地によって全然違うんだよ! うちには騎士団にだって魔族が居るんだぜ? 魔族が暮らす集落だっていくつもあるんだ! 人間全員が魔族を嫌ってるだなんて思い上がりもたいがいにしろ!!」

「う、うるさい!! 人間のくせに!!」


 反論するイノシシ面の魔族だが、言葉に力がない。まさかそう言う方向から反論されるとは思わなかったようだ。


「えっと、そうなの? 魔族ってみんな、人間を敵視しているかと思ってたけど?」

「聞いたことがあるぜ。バルセロナあたりの土地じゃあ結構普通に魔族とかは見かけるってな。あそこでは馬とか羊とかを世話するのに重宝しているらしい。俺は行ったことがないけどよ。つうか、行く前にお前んところの領で仕事しているうちに職にありつけたし」


 オースティンも意外そうだが納得した様子だった。


「魔王がやばいのは魔王だからってことか」

「ん? ああ、魔族の王だから魔王ってことか。そうだぜ。民衆を指揮する王ってやつにはいい奴もいれば悪い奴だっている。名前だけで善悪を決めつけるのは間違いって寸法よ。ま、俺にとっても耳の痛い話ではあるけどよ」


 オースティンの解説にソニアは納得してしまった。


「く、くそっ! そんなの信じられるかよ! 王都じゃあ毛虫みたいに俺らを嫌ってるじゃねえか! 魔族を見て大騒ぎする領だって少なくない! 近づくなよ!! 近づいたらこの子供の頭をつぶしてやる!!」


 破れかぶれになったその魔族は威嚇するように少年の体を突き付けた。ユーグは悔しそうに歯を噛みしめている。


 ふと、ソニアは視線を感じた。オースティンだ。彼は横目でサーラを見た。そのアイコンタクトで、彼が何をしようとしているかを察することができた。


「まあ落ち着けよ。魔族の生存権を認めている国だって結構増えているんだぜ? あの帝国では魔族の将だって現れたって話だ。もう魔族だからって迫害される時期は過ぎつつあるってことだな」

「嘘をつくな! くそっ! 虚言を持って我らをたばかろうなど!! 近づくな! 近づくなよ!」


 人質を見せびらかすように突き付けてくる魔族に、オースティンもユーグも、ベリルやジャドゥすらも動くことはできない。


「よ、よし! 道を開けろ! お前らはおとなしく」


 そう言って人質を掲げた時だった。


 祭壇の右手からすさまじい破裂音が響いた。同時に、隣の大木が音を立てて炎上していく。ユーグもジャドウたちも、魔族たちですらもそちらに気を取られてしまった。


 だけどソニアは――。


 滑るような足取りで、人質を掲げる魔族に接近していた。


「お、お前! いつの間に」

「それ!!」


 少年の頭を掴む右手に、容赦なくメイスを叩きつける。骨が砕けた感触と、落下する少年の体。ソニアは素早く少年を確保すると、その身を後ろに投げつけた。


「お嬢様!! ナイスっす!!」


 少年を抱きとめたサーラは素早く少年の全身を確認すると、オースティンを振り返った。


「少年を確保したっす! 意識は戻っていないけど、大きな怪我はないみたいっす」

「よしでかした! これで残すはあの連中だけだな」


 にやりと笑うオースティン。彼とは対照的に、魔族たちの顔には焦りが浮かんでいた。特にいきなり出現したソニアの存在に、度肝を抜かれた様子だった。


「こ、これが撲滅聖女の力とでもいうのか・・・」

「!!! またその名前を言った!? もしかして、あんたたちの魔王って言うのは」


 ソニアが呼び止めようとした瞬間だった。魔族たちはいっせいに何かの薬を飲みほした。ためらったような若者もいたが、ソニアを見ると急いで薬を飲みほした。


「う、うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 魔族が叫び出して、思わずソニアは下がってしまう。警戒しながら見る中で、魔族たちの姿が見る見るうちに変わっていった。体が何倍にも膨れだした。


「な、何が!?」

「自殺!? いや違う! こいつらは! 気を付けろ!」


 オースティンが警戒する中も、変化は続いた。姿が、皮って言ったのだ・イノシシのようだが二足歩行の魔族の姿から、大きな体格を持つ四足歩行の大イノシシの姿へと!!


「うそ・・・。退化したっていうの? イノシシ型の魔族から、魔物の姿に!?」

「犬の魔族が魔犬にかわったようにか? ちきしょう! ふざけんな!!」


 ソニアたちは現れた3体の大型の獣と戦うことが決まったのだった。

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