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04 呪われた属性

「たしか、ファンブックに書いてあったな。光と闇の属性は、ちょっと工夫しないと発現できないって。四大属性は2次元の広がりだけど、光と闇は3次元。ここから、上下二属性なんて言われているんだけど」


 改めて調べてみたら、上にも下にも魔力を遮る壁のようなものがあった。上はたぶん白で、下は黒・・・。たしかあの主人公には黒の資質はなかったはずだった。


「もう・・・。魔力を動かすだけで汗だくだよ。魔力を上下に動かすのは特に気合がいるんだよね。でも、上のほうの壁みたいのを壊せば! 白って、あのゲームで一番優遇されている属性なんだよね。じゃあ、魔力を操作して、と」


 必死になって、魔力を上に移動させる。すぐに何かに遮られたけど、それを壊すように何度も魔力を叩きつけるとと・・・・。


「!!」


 何かが、崩れ落ちていく。その瞬間、自分の魔力が何かに染まっていくのを感じた。


「と、止まらない! 私の魔力が、何かに変わっていく! これ、まずくない? 消火! 消火しないと!」


 慌てたソニアは、器官の下のほうへと魔力を移動させた。叩きつけるように移動させた魔力は、下のほうにあった壁もあっさりと破壊した。


「な、なんで? なんで!」


 パニックだった。下からあふれた魔力が、おそらく上と同じような気配がしたのだ。上下に挟まれた魔力は驚くほどくっきりと、同じ色へと染まっていく。


 あわあわしながら手をかざした。そうしないと、魔力がどんどん膨らんで、ソニアごと爆発してしまう気がしたのだ。


「どどどど、どうしよう!? これ、何とかしないと!」


 確か、体の中の魔力は手のひらから放出させることができるはずだった。この膨らみそうになる魔力を、一時的に外に出すことができれば!


「えっと、放出された魔力は属性ごとの効果を見せるはずだけど・・・。うん! やってみよう!」


 手のひらから体の外へと白の魔力を放出させていく。そしてかなりの量の魔力が、手のひらの前へと集まっていくと、見る見るうちに膨らみだして・・・。


「ソニア? 起きてる?」


 地下室の入り口がそっと開かれた。そこには、トレイを持ったロザリーが戸惑ったようにソニアを見ていた。


「お、おねえちゃん」


 ソニアが言った時だった。姉の顔を見て安心したのか、集中が切れた瞬間に見る見るうちに膨らんでいき・・・・。


 大きな音を立ててはじけ飛んだのだった。


 地下室中に衝撃が走り、棚の上にある荷物が崩れ落ちていく。その様子を眺めながら、ソニアは自分の気が遠くなるのを感じた。


「ソニア! 大丈夫!? ソニア! ソニア!」


 叫ぶ姉の声を遠くに感じながら、ソニアの意識は闇へと溶けていくのだった――。



◆◆◆◆



「まったくこの子は! 荷物を落としちゃうなんて! 本当にどうしようもないんだから!」


 意識を戻すなり怒られてしまった。


 あの後、大きな揺れに驚いたのか、両親がすぐに地下室に駆け寄ってきたのだ。そして落ちている荷物と気絶したソニアを見て判断した。


 ソニアが何かをして荷物を落としてしまい、そのせいで屋敷を揺らしてしまったのだと。


「幸いなことに荷物の中に割れ物はなかった。お前をここに入れるのも考え物だな。というか、本当にここに入れられるだけのことをしたのか? いくら魔法が使えないとはいえ、あんまり無理なことを言うなよ」

「でもこの子が!!」


 父カルロスの言葉に反論するカリーヌだった。夫婦喧嘩を始める2人を何ともなしに見つめていると、兄のフランクが睨みつけてきた。


「本当に加護なしというのはどうしようもない。騒ぐだけ騒いで迷惑をかけて。少しは恥ずかしいと思わないのか」

「兄様! そんな言い方!」


 すぐさま反論するロザリーを見ることもなく、フランクは鼻を鳴らした。


「そんなので大丈夫なのか? お前も5年後は学校に通うんだぞ? お前の評判が悪いと、私やロザリーまで何か言われる。チャールズたちにも悪影響があるかもしれん。お前の学園入りは本気で考えなければならないな」


 喧嘩しながら戻っていく両親と、不機嫌そうに去っていく兄の背中をぼうっと見ていた。膝枕をしてくれたロザリーが心配そうな目を向けてきた。


「ソニア。大丈夫? 痛いところはない? あ、白髪! 根元が白くなってる! まだ小さいのに悩んじゃってるのよね。本当は結構つらかったりしない?」

「うん。私は、大丈夫だよ」


 まだ子供なのに、白髪まで生えてくるなんて。


 落ち込みながらも、姉を安心させるために微笑むソニアだった。でもロザリーの表情は腫れない。しばらく口を閉ざすと、意を決したように聞いてきた。


「さっきの爆発、多分荷物が落ちたせいじゃないよね? ソニアが何かした衝撃で、荷物が落ちた感じがしたわ。あれは、何? あの時何が起こったの?」

「あ、あれは・・・」


 ソニアは口ごもった。心配してくれる姉に嘘を言うのは気が引けた。だから思い切って、ロザリーには告白することにしたのだ。


「あれは、多分私の中にある白の属性がやったことだと思う。自分の身体を見て見つけたんだ。私の中に、白の属性が眠っていることを」


 ロザリーは目を見開いた。


「白の、属性? あの、呪われた属性が、ソニアの中に眠っていたというの?」


 口に手を当てて驚くロザリーに、今度はソニアが目を見開く番だった。

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