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ネガティブだけど、正ヒロイン  作者: 小谷草
第1章 撲滅聖女と自領での生活
20/47

20 修行は続く

 その一室に白い光が満ちていた。


 椅子に座るオデットに、ソニアが魔力を放っているのだ。部屋全体を輝かせるような濃い魔力を浴びせられているにもかかわらず、オデットは目を閉じてそれを受け入れている。


「どう?」

「よく分かんない。前は、その白いのから危険な気配を感じたんだけど」


 ソニアは心配そうに尋ねたがオデットに首を傾げられてしまう。


「うん。少し傷が薄くなった。この分だと、そのうち元通りになるんじゃない?」

「今回試したのはこれで、こういう効果があったってことか。なるほどな」


 ロザリーがオデットを励まし、オースティンが結果をメモしている。


 あの日以来、毎朝みられる光景だった。オースティンが術式を作り、ソニアが白い魔力でそれを試していく。白の魔力で傷をなくせるよう試行錯誤しているのだ。


 白の属性を使った癒しは少しずつ効果を上げていて、ロザリーの左腕は、もう何にも問題なく動かすことができるようになった。


「やはり白の魔力での回復はすごいですね。私にまで使えるようになるには時間がかかりそうですが」

「へっ。でも俺の腰痛までよくなったんだから大したもんだよな」


 マノンも協力してくれているのだ。血縁関係のない人を癒せるようになりたいと何ともなしに言ったソニアに実験台になることを立候補してくれ、傷ができるたびに試させてくれる。


「最初は大変だったけどね。白の魔力がマノンを焼いちゃったり。でも、最近は私たち以外も癒せるようになってきた。やっぱりソニアはすごいよね」

「全然だよ。私なんか。この分だと、マノンたちを癒せるようになるのはいつのことだか。師匠がいてもこれだから、やっぱり」


 ロザリーに褒められてもソニアは相変わらずだ。


「じゃあ、私はそろそろ行くわ。明日は少し時間があるから、日課にも参加させてね」

「あ、今日はもう行くんだ。気を付けてね~」


 手を振って出ていくロザリーを、ソニアは笑顔で見送った。


「で、今日もやるんでしょう?」

「まあ日課ってそう言うもんだし。お姉ちゃんやマノンも瞑想とかはやってるって言ってたし」


 あれこれ言いながら日課を始める2人を、オースティンが微笑みながら見守っていた。



◆◆◆◆



 以前は母やチャールズと一緒にいることが多かったオデットだが、今はソニアと一緒にいることが多くなった。


 最初は前向きな理由ではなかった。拒絶されたのだ。顔に大きな傷をつけられたオデットは、母や兄には受け入れられなかった。近づいてもあからさまに追い払われることが増え、次第に部屋に引きこもりがちになった。


 母に連れられて外出することもなくなった。例の婚約者もどきからも絶縁状のようなものが届いたらしい。多くの人に手の平返しされて、オデットは人間不信になってしまったようだった。


「あの時は大変だったなぁ。私とお姉ちゃんが部屋に行っても頑として入れてくれなくて。すすり泣く声とかも聞こえてきて」

「なにやってんの? サッサとしないと、家庭教師の先生が来ちゃうでしょう? 私だって、オースティン先生の授業を受けたいんだから」


 オデットに言われ、慌てて準備を始めるソニアだった。オデットは顔に包帯を巻いたままだが、本人はもうそのことを気にも止めていない。いつの間にかソニア以上に日課に集中しているのかもしれない。


 オデットを部屋の外に連れ出したのは、オースティンだった。


 部屋に引きこもるオデットに、オースティンは父からの手紙を持って訪ねていった。そこで何が話し合われたのか、ソニアは知らない。でも結果としてオデットは部屋から出てソニアの治療を前向きに受け入れるようになって日課にも加わるようになった。


「ん? なに」

「いや、その傷も、そのうちなくなりそうだと思ってさ」


 怪訝な顔をするオデットにソニアは取り繕うようなことを言った。


「ま。オデット嬢ちゃんの傷はそのうちなくなると思うぜ。やっぱり白の癒しはすげえやな」

「何言ってるんですか。師匠が術式を考えてくれるおかげですよ。まあ、師匠の友人が、白の回復の術式を覚えてくれていたこともすごいですけどね」


 オースティンの友人という魔法王国の子爵は若いときに白の魔力にほる癒しを体験したらしい。その時にある程度度の術式を予想し、オースティンたちと共有した。その結果が今につながり、ソニアも白の魔力で回復できるようになったのだ。


 数十年前に一度受けた術式を解析するのもあれだし、それを使ってソニアが使えるようにカスタマイズしてくれるのもとんだもない。ソニアは、オースティンの友人は変人ばかりだと思ってしまった。


「さて。始めますか。白の魔法を使いこなして、私だって一人前になれることを証明してやれるんだから!」

「私だって負けない! 今から頑張って修行すれば、素質が少なくても魔術師になれるって証明してやる!」


 意気込むソニアに負けじと言い返すオデット。そんな彼女たちを見てオースティンは大声で笑いだした。


 だが、彼らは知らなかった。


 白の魔力が、ソニアの魔力量を飛躍的に高めてくれることを。ソニアだけでなくロザリーやオデット、はてはオースティンやマノンの魔力量まで高めてしまうことを。その結果、魔法王国の貴族なみの魔力になってしまうことを。


 この時の彼女たちは想像だにしなかったのだ。

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