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【8】
どっちも素敵だから迷ったけれど、青いバラを選ぶ事にした。
この深みのある青色はわたくしの着ているドレスの色にも似合うし。
青色が好きなわたくしが、こんなに綺麗な色の青いバラを選ばない筈が無いわよね。
「本当に綺麗な色の青色よね。花はそちらの青いバラのにするわ」
「かしこまりました。それではこちら、青いバラとなります」
「えぇ、ありがっ……いたっ!」
花を受け取ったと同時にピリッと指先に軽い痛みがった。
何かしらと痛みが出た場所を、左手の人差し指を見ると、わずかに小さく血がプクリと出てきている。
指先の血を見た受付の人が、すぐにわたくしから青いバラを取ると、バラを凝視し、念入りに確認を始め
た。
「!……、花に僅かながら棘が残っておりました……! も、申し訳ございません……!!」
花に棘が残っていたことで、真っ青になると、ガクガク震えながら、頭を下げられた。
確かにこういう棘は、普通あらかじめ処置しておくものね。
しかも使用するのが、貴族の子息令嬢達ともなれば猶更。
とは言っても、ガタガタ震えながら平身低頭になってしまってる目の前の男性の背後には、色とりどりの膨大なバラの花。
……うん、この数全部のバラの棘を処置するのって、かなり大変よね。
「いいわ、棘が刺さったと言っても、指先にほんの少しだったし」
「え……?」
罰が下されるとでも思っていたのか、何も言われない事に、目の前の男性が、驚いてこちらを見つめた。
「このバラ、卒業式でもないのに、これだけ用意するだけでも大変だったでしょう? しかも好きな色を選べるとなると、さらに用意する数も増えるのだし。それらの数の棘をすべて完璧に処置するのは、短期間では厳しいもの。少しの処理漏れ位、仕方ないわ」
「あ、ああ……ありがとう…ございます……!!」
何度も何度も泣きながら頭を下げられてから、改めてわたくしは、きちんと棘の処理をされた青いバラを受け取り、胸に飾ると、わたくしは、会場内へ入っいった。
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【9】
セバスから受け取った鍵を使いまわすと、ガチャリと鈍い音を立てて、扉が解錠された。
一応もう一度、コンコンと扉をノックすると今度は「入りなさい」とお父様の声耳に届いたので、わたくしはゆっくりとノブを回して扉を開けた。
「あら」
セバスが言った15時に執務室に来ると、いつもなら書類処理を行っているのに。今はソファーに座て、ゆっくりと紅茶を飲んでいる姿が目に入った。
「ごきげんよう、お父様。お時間よろしいかしら」
「あぁ、この時間は予定は入れてないからね。構わないよリーゼ」
向かいのソファに、恐らくセバスが淹れたであろう紅茶がすでに用意されていて。カップから湯気がまだ立ち上ってて、今し方淹れられたのが分かる。
わたくしはそのままソファに座り、カップを手に取り、紅茶を一口ゆっくりと口に含む。うん、流石セバスね。美味しいわ。
「さて」
静かにカップを置くのと同時に、父が口を開く。
「リーゼ。これが望みの物だよ」
机上に書類の束が置かれるのを見て、わたくしは軽く口角を上げた。
書類の内容は、ここ最近噂として広まっている、わたくしの噂。
やれ、男爵令嬢を階段から突き落としただの、紅茶をぶっかけただの、教科書を破いただの、ベッタベタなネタのオンパレード。
そして、それらのやらかしが全て冤罪である事の証拠をくまなく記されたのが、この書類。
わたくし自身、断罪イベントを避けるためにも、自分の行動については誰か第三者といる様にしたり、責任者としての立場にいる方に証明してもらってたけれど。
それ以外にも、お父様が我が家の騎士達に伝えて、より第三者からの証言を貰ってこれたものを書面にしてまとめた物だ。
……。
…………?
「あら……? お父様、騎士達に頼んで貰ったのは分かるのですが、それにしても、細かな記載がありすきるようですが……?」
ペラペラと書類を捲ると、その内容が、まるで天井裏から四六時中覗いてたかの様な事細かな行動の報告内容に首を傾げた。
内容に間違いはないから、確かにわたくしの行動を記した物ではあるから、助かるけれども。
「あぁ、それはね、陛下に相談して影を付けさせていたんだよ」
「え、陛下の影ですか!?」
陛下の影なんて、それこそ諜報隠密行動のプロフェッショナルな方々じゃないの。
「殿下の行動には、陛下も頭を抱えていてね。相談した結果、殿下にも件の男爵令嬢にも、そしてリーゼにも影を付ける様にとなったんだよ。本当はリーゼに伝えるべきなのは分かってたんだが、陛下に、リーゼの行動に裏が無いかを確認させるためにも伝えない様に言われてしまってね」
事後報告になってしまって、すまなかったねとお父様が頭を下げられた。
確かに何も言われなかったのはビックリしたけれども、言われたらわたくしの性格上、気になってしまって、ぎこちなくっなっていたのは確かだわ。
それに陛下の言う様に、行動に裏が無いかをしっかり証拠として作るなら、当事者であるわたくしには伝えないのが一番だものね。
「大丈夫よ、お父様。陛下の仰ってる事は間違ってないもの。陛下に相談してくださって、ありがとうございます」
殿下や男爵令嬢にも影を付けているとの事であれば、それこそいざ断罪イベントが起きた時に反論しても、殿下達は逆に何も言えなくなる筈。
これは強い証明になるわ。
改めて、お父様へ報告書として挙がってきた、この目の前の『14』枚の書類にしっかり目を通した。
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