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【5】 ─執務室 11時─
お父様の執務室の前まで来てみた。
元々、明日の卒業パーティの前に、相談していた事について話があるのだし、先に話を聞いておくのは悪くないわよね。
……そう思ったのだけれど。
「お父様?」
コンコンと扉をノックするも、中からお父様の返事が返ってこない。
「いらっしゃらないのかしら?」
ノブを回してみるも、ガチャガチャと音がするだけで、扉は開く気配がない。
鍵が掛かっている……と、言う事は。お父様は留守なのね。
「いつもはこの時間、中でお仕事をしてらしてるのに……」
少し待てばお父様に会えるかしらと思って、少しみっともないと思いつつ、扉の前で座って待って時間を潰していると、ハウスキーパーが歩いているのを見つけた。
お父様の事を聞いてみると、どうやら朝食の後に、所要で出掛けられているとの事。
今日中には戻ってこられるとの事なので、その頃にまた来てみればいいかしらね。
あら、もう13時なのね……。
そうしたらこの後は、どうしようかしら。
本を読みに書斎行く ⇒【59】へ
演奏ホールでピアノを弾く ⇒【27】へ
庭園に花を見に行く ⇒【54】へ
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【6】 ─執務室 13時─
お父様の執務室の前まで来てみた。
元々、明日の卒業パーティの前に、相談していた事について話があるのだし、先に話を聞いておくのは悪くないわよね。
……そう思ったのだけれど。
「お父様?」
コンコンと扉をノックするも、中からお父様の返事が返ってこない。
「いらっしゃらないのかしら?」
ノブを回してみるも、ガチャガチャと音がするだけで、扉は開く気配がない。
鍵が掛かっている……。お父様は留守なのね。
「いつもはこの時間、中でお仕事をしてらっしゃるのに……」
少し待てばお父様に会えるかしらと思って、すこしみっともないけれど、扉の前で座って待って時間を潰していると、ハウスキーパーが歩いているのを見つけた。
お父様の事を聞いてみると、どうやら朝食の後に、所要で出掛けられているとの事。
今日中には戻ってこられるとの事なので、その頃にまた来てみればいいかしらね。
そうしたらこの後は、どうしようかしら。
演奏ホールでピアノを弾く ⇒【27】へ
庭園に花を見に行く ⇒【54】へ
本を読みに書斎行く ⇒【59】へ
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【7】
会場に入ると、わたくしのエスコートをしてるのが、殿下ではない事に、周囲からざわつきの声が上がる。
中には殿下と男爵令嬢の流した、根も葉もない噂を信じてる人達からは、ニヤニヤとした侮蔑の表情を向けてくる人もいたけれども、わたくしが意に介さず堂々としているのに圧されたのか、こちらに近寄っては来なかった。
それでも近寄ってくる馬鹿な人とか、少しはいる者だと思っていたので、これには正直拍子抜けした感があるわ。
「案外、皆こっちに来て、何か言おうとかする人っていないものなのね」
わたくしの言葉に、マティが耐え切れなくなったのか、フハッと噴出した。
「義姉さまが、これだけ堂々と会場入りしていれば、普通は近づいてこないんじゃないかな。
そもそも、侯爵家に対してそんな無礼な対応をした日にはどうなるかなんて、火を見るより明らかなんだし。その勇気があれば、喧嘩吹っ掛けてきてみなよって話なんだよね。
ま、義姉さまに何かされる前に、売られた喧嘩は僕が搬送料込みのお値段で買ってあげるけれどね」
……マティがどす黒い笑みを浮かべながら、どす黒いオーラを振りまいて歩いてるから、誰も近づいて来ないのではなくて……?
うん、そこは突っ込まないでおきましょう。わたくし、何も見なかった何も見なかった。
そんな風に、二人で会話をしつつ会場内を歩いていると、俄かにまた入口に方が騒がしくなってきた。
「何かしら……あら」
他の人の視線の先を見て、わたくしは思わずと言った様に声が出る。
喧騒は何のことはない、殿下と男爵令嬢が二人そろって入場しただけだ。……だけなのは間違いないのだけれど。
ざわつきの理由は、それ以外にもあるようで、何が原因かは、わたくしも見てすぐに納得をした。
ドレスやスーツがお揃いのデザインで、殿下と二人で、互いの瞳や髪の色を、それぞれドレスやスーツのピアスやカフスなどの箇所に散りばめているのも、予想通りではあるんだけれども。
男爵令嬢……ヒロインのドレスが問題だった。
王家の人にしか使ってはいけないドレスのデザインや、腰のリボンのレースの装飾デザインはもちろんの事、頭上を飾るティアラは、結婚式の時に、王太子妃殿下が飾るはずの物。イヤリングと胸元のブローチは殿下の目の色である橙色、ドレスは結婚式でも上げるのかと言わんばかりの純白で、ブーケまで持ってるしそのブーケも殿下の髪と同じ金に花が染められている。
その姿だけでも、皆ドン引きだけれど、さらに殿下にしなだれ掛かる様にくっついて腕を絡めて胸を押し当てている……。うん、なんかもう凄くて言葉が無いわ。
ある意味、大変に、それはもう、皆様方の記憶に残る卒業パーティになりそうね……。
「うわ……婚約者でもないのに、エスコートされてるだけでも最悪なのに、ドレスや装飾品だけでなく、ティアラとかあれ、基本宝物庫に保管されてる物でしょ? ありえない……。正気を疑うんだけど」
マティも、ヒロインのドレス姿に、思い切り眉を顰める表情を浮かべた。
そんな周囲の状態に気が付かず、ご満悦な表情で入ってきて。
キョロキョロと辺りを見回して、わたくしの姿に気が付くと、意気揚々とこちらへと向かってきた。
え、もう断罪イベント開始するの?
確か婚約破棄云々を叫びだすのって、卒業パーティか盛り上がった途中だったはずなんだけれど……。
わたくしが悪役令嬢な行動を取っていなくて、断罪のシナリオイベントに影響が出てきちゃったのかしら……。
そんな事を思われるとは当然思ってない殿下達は、ニヤニヤしながらわたくしの前にまで来ると、わたくしとマティの姿が目に入って、あからさまに殿下がチッと舌打ちするのが聞こえてきた。
わたくしが一人でパーティに来ていると思っていただろうから、エスコートしている相手がいて、詰れないのがご不満なようね。顔にありありと出ているわ。王族として、表情に露骨に出してくるのはどうかとも思うけれども。
忌々しげな表情の殿下だけれども、そのままチラリとわたくしの胸元へと目線を移動させてきた。
何を人の胸を見てるんだこの男。と思ったけれど、どうもわたくしが付けてるバラを見ている……?
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