表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悪役令嬢ゲームブック】正しいルートでトゥルーエンドを【ルートは7通り】  作者: 九十九沢 茶屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/30

【78】【79】【後書き】

【78】


 しばらくピアノに触れる事がなかったのもあって、自分の好きな曲を弾いていると、演奏ホールの扉を開ける音が聞こえてきた。


 手を止めて扉に視線を向けると、扉から顔だけひょっこりと覗かせる、義弟のマティアスの姿が目に入った。



 義弟の名前はマティアス、マティアス・ルントシュテット。わたくしの三つ下の義弟。

 

 お母様がわたくしを産んだ後亡くなってしまって、お父様が他に妾を作る事をよしとしない事もあり、我が家の、侯爵家の跡継ぎとして、マティアスは養子としてやってきたのだ。


 とは言っても、無理やりお金でとかご家族から引き剝がしてとか……ではない。

 マティアスの本当のご両親は、彼が幼い頃に、事故で亡くなってしまった事もあって、うちが引き取ったという経緯なのよね。


 お父様はマティアスにも、不当な扱いをする事なく、わたくしと分け隔てなく愛情を注いで育ててくれ、利発で実直な子に育った。


 跡継ぎとして育ててはいたけれど、マティアスが10の歳を迎えた時に、彼の両親、生い立ちについてもきちんと両親は知らせた。

 社交界で会合などで、これから公爵家の嫡男としてやっていくのに、耳障りな事を言ってくる輩はごまんといる。その前にきちんと伝えたのだと言う事だった。


 話を聞いたマティアスは、驚いてはいたけど、落ち着いて静かでもいた。一週間だけ考える時間を欲しいとの言葉に、私たちは頷くと、マティアスは一週間部屋から出てこなかった。


 大丈夫なのかと心配になったけれど、一週間後に、話してくれたこと、育ててくれた事に感謝しする事、きちんと公爵家の跡継ぎとして、恥じない様にしていくと、晴れやかな顔で言ってくれたのを、今も覚えている。

 今では跡継ぎとして、お父様の仕事をよく手伝っているのを見る様になった、わたくしの自慢の義弟。


 

 そんなマティアスの趣味の一つが、バイオリンの演奏だ。

 プロ顔負けの演奏の腕前なので、跡継ぎでなければ、演奏家としてやっていけたかもしれない程の腕前なのよね。本人はそこまでではないと言っているけれど。


「義姉さま!」


 嬉しそうに声を上げると、にこにことした顔で、部屋に入って来た。



 ⇒【39】へ進む




 ꕤ.。✼••⋅⋅⊱∘┈┈┈┈•>✾<•┈┈┈┈∘⊰⋅⋅••✼。.ꕤ




【79】


「……」

「どうしたの義姉さま? 急に静かになって」

「あぁ、そうね……今後についてどうしたものかと思って……」


 ハァと一つ溜息をついて、チョコを一つ口に入れた。


 殿下の婚約者だったから、本来ならわたくしは家を出て、王妃として婚姻後は王城住まいとなる筈だった訳だけれども。

 それが昨夜の騒動であっという間に婚約解消になってしまったため、自分の未来像のビジョンが浮かばなくなってしまい、わたくしはもう一度息を吐いた。


 王妃として嫁ぐ事が無いということは、ここにいる事になるけれど、侯爵家の跡継ぎとしては、既にマティを養子として引き取っている。

 マティはお父様の期待以上に跡継ぎとして立派に育った。わたくしが後を継ぐと言う選択肢は無いだろう。


「どこかの後妻か、修道院か、かしら……」


 前世を思い出すよりも前から、元々そこまで結婚したいとかなかったので(貴族としての政略結婚の覚悟はあったけれども)、それなら寄付金を多目に納めて、どこかの修道院で過ごすのがいいかしらね……。


 侯爵家の資産に手を付ける気はないから、そうなるとわたくしの手持ちの資産に限られるけれども。正直働いたことの無い、小娘の資産だけでは寄付金を多めにと言っても限界はあるから、いくつか質の良い宝石等の装飾品やドレスを売ったりすれば行けるかしら……。


「何だ、義姉さまは、この後の事について心配していたの? 大丈夫だよ、何の問題もないから」

「え、それどう言う事? まさかもうどこかの後妻への嫁ぎ先が決定しているとか?」


 水面下で話が進んでいたのかしら?


「あははは! まさか、違うよ。仮に父様がそんな話を進めていたとしても、僕が止めるし、それにそもそも、父様が義姉さまをどこかの後妻や修道院に出す事なんかしないよ」

「……じゃ、どうするの? どこかの家に侍女として出すとか?」


 それなら仕事内容を覚えれば働けるし、家にお金を入れる事も出来るから、そう言う話があるなら、私も前向きに検討したいと思う。

 と、思ったのだけれど、マティの眉間にシワがみるみるとよって行く。


「もう違うよ。侍女として働く義姉さまもきっと素敵とは思うけれど、働きに出なくても解決する方法あるでしょ」


 ニコニコと。

 ニコニコと。


 顔の前で手を組み、軽く首を傾けながら、嬉しそうに、それはもう楽しそうに。

 マティはそう問うてきた。


「え……? え、な…にが、ある……かしら……」


 本当に分からなくて、マティの笑みに圧を感じて。

 わたくしは、軽く冷や汗を流しつつ尋ね返した。


「ふふ、そんな身構えなくてもだいしだよ。だって、ただ僕のお嫁さんになるってだけなんだから」

「 」


 ……。

 …………。


 およめさん?


 およめさん、って……なんだったかしら……?



 およめさん……お嫁さん?



 ああ、お嫁さんか!



 なるほど、わたくしがマティの……、……。



「お嫁さん!?」



「うん」


「わたくしが!?」

「そう」

「マティの!?」

「そうだよ」


「だって、わたくしとマティは姉弟で家族じゃないの。家族は結婚出来ないじゃない」

「ははは、義姉さま。家族なのは確かだけど、僕は養子なんだよ」

「あ」


 そうだった。


 マティは侯爵家を継ぐ者として、遠縁の男の子をマティを養子として育てるために我が家に来てもらったんだわ。

 頭では分かっていたけれど、姉弟として接してきていたから、もう家族の一員の意識が強かったし。


「義父さまにはね、先に伝えてたんだ。あの殿下と義姉さまがの婚約が解消する様な事があれば、僕が婚姻を結びたいって」


 あなた、そんな話いつの間にお父様と進めていたの……。


「義父さまも、殿下と男爵令嬢の噂は当然耳にしていたしね。もしそうなる事があるなら、僕を一旦他の親類の養子にと手続きして、改めて僕が婿入りするって約束してくれてたんだ」

「……」


 なんか、思ってた以上に話が水面下で進みすぎてて頭が追いつかないのだけれど……。

 わたくしが固まってるのに気が付いたのか、マティが眉を軽く下げ、少し困った様に笑った。


「うん、義姉さまが、僕の事を義弟としか見てない事は分かってる」

「……」

「だから今は、そのままの家族愛でいいよ」

「……いいの?」

「うん」

「ゆっくり意識して行ってね。僕も義姉さまが僕の事を意識して貰えるように、これからは行動していくから」

「え、行動?」

「うん」


 そう言うが早いか、マティは席を立つと私の方に顔を近付けて、唇に近いギリギリの端の所にキスを落とした。


「!!!!!」


 チュッとリップ音を立てて顔を離したマティは、それはそれは満足そうな売れしそうな笑顔を浮かべる。


「もう遠慮せずに義姉さまにアプローチ出来るんだもん! ガンガン行くからね? 覚悟しててね?」

「え、えええ……」


 突然頬に(一応唇を重ねてないから、今のは頬よね、頬になるわよね?)キスをされて、そんな経験ろくすっぽ無かったわたくしは、あっという間に顔から火を吹いた位にまで真っ赤になる。


「ふふ、義姉さま可愛い」


 そう言いながら今度は手を取ると手の甲にもキスを落としてくる。


「マティーー!!!」


 アハハハと楽しそうに笑うマティとは対象的にわたくしは堪らす声を上げた。



 わたくしを意識させるって言ってたけど、予想よりも行動的なそのアプローチに、わたくしは「これ、もしかしなくてもかなり早く捕まるんじゃ……」という予感がただただ脳裏をよぎるのだった。





 その後、お姫様抱っこされたり、壁ドンされたり、何度もデートに誘われたり。


 そうしてマティは、宣言通りガンガンアプローチしてきて。

 わたくしもマティは嫌いではなかったし、少しずつ、本当に少しずつだけれども、マティを家族ではなく、異性として意識していく様になってきて。


 そうして一年半も経つ頃には、マティの事を意識しすぎて、顔をろくに見る事も出来ず、屋敷内でわたくしとマティの追いかけっこが日常と化し。




 さらにそれから一年もしないで、婚姻を無事に結ぶ事になった。


 


「義姉さま……うぅん、リゼ、愛してる」

「わたくしもよ。ね、マティ。幸せにしてね。でもマティも幸せになってくれなきゃ嫌よ?」

「もちろん。リゼの幸せが僕の幸せなんだから!!」





 マティは、それはもう、これ以上無いほどに嬉しそうな満開の笑顔を浮かべてくれて。



 わたくしもその笑顔を見て、幸せを感じながら、お互いの唇をゆっくりと重ねていった。




             ルート① トゥルーエンドクリア







ここまで読んで頂き、ありがとうございました!




悪役令嬢でゲームブックはずっと作りたいと思っていたので、楽しく書けました。





以下ネタバレ含めた呟きです。



ルート、最初は3通りくらいかなーとか呑気に考えて進めてたのですが、アイテムの所持、エスコートの有無、バラの選択だけでかなりルートが分かれると気が付いてら改めてルートを確認したら7通りになってしまって、ちょっと気が遠くなりかけました。


最初は、全部マティアスとくっつく予定だったのですが、留学するルートは、エスコートもなく、書類を貰ったりなどの選択肢もなくマティアスとの接点が話の中で泣く、主人公側のマティアスへの好感度が家族愛以上にならないなと思い、留学エンドは、死亡エンド以外ではくっつかない流れにしました。


バラ毒ルート、正直こっちの方が主人公ピンチになるし、トゥルーエンドはこっちなのでは・・・?と途中で思ってしまったのは秘密です。

青バラを選ぶのは、選択肢として間違っているので、トゥルーエンドにはならないという流れなのでグッドエンドになりました。





攻略対象も、最初はマティアスだけでなく、次期公爵もいました。


公爵とのイベントは庭園で発生予定だったのですが、そこを書いてる途中で「これ、公爵の後にマティアスルートもあるんだよな? え、エンディングルート数やばくない?」と気が付いて、公爵ルートは抹消。


と言いつつ、マティアスルートだけで話を書いてる途中で執事(セバスではなく、トルデリーゼ専属の執事)のルートとかあったら面白そうだなーとか思ってしまったりも。


執事ルートの話はいつか書いてみたいです。




感想やいいねとかあれば嬉しいです。


メンタルが豆腐どころか豆乳なみに弱いので、厳しい言葉は避けて貰えたら嬉しいです゜(゜´ω`゜)゜。ピー


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
Xから来ました。 ゲームブックは初めて読んだのですが、無事トゥルーエンドを迎えられて良かったです! 自分でルートを選択して読み進めるので、楽しくて他のルートも読んでみたいと思います!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ