【52】【53】【54】【55】
【52】 ─執務室 15時─
お父様の執務室の前まで来た。
コンコンと扉をノックするも、いつもなら中からお父様から入室許可の声が掛かるのに、いつまで待っても声が掛からない。
ノブを回してみても、ガチャッと鍵が掛かってもいた。
いつもは鍵なんて掛かってないのに……。急用でも出来てしまったのかしら。
「……留守なら仕方ないわね」
いつもならお父様のご帰宅を待つ所だけれど、そろそろ夕食の時間だし、明日は、朝からパーティの支度で大わらわだものね。
今日はもう部屋に戻って、明日のパーティに備える事にしましょう。
※もし執務室の鍵を持っているのであれば、
鍵に記された番号から、《41》を引いた数の番号へ進んで、執務室に入るのでも構わない。
鍵がなければ⇒【63】へ進む
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【53】 ─演奏ホール 15時─
演奏室に入ると、部屋に置かれているグランドピアノの前にまで移動した。
小さい頃から、この部屋の音が響き渡る設計になってるのが好きで、よくここでピアノを弾いたり、家族の演奏を聴かせてもらったりしていた。わたくしのお気に入りの部屋の一つでもあるのよね。
義弟はバイオリンの方が得意だけれど、私はピアノが好き。
前世でも学生時代はピアノのレッスンを受けていたりしたので、これはもう性分と言えるかもしれない。
ピアノに近づいて、鍵盤蓋を静かに持ち上げ、屋根を突上棒で押さえる。
そのままの流れで椅子に座り、鍵盤へと手を触れた。
曲は暗譜しているので、譜面台を上げる事はせず、わたくしはそのまま、静かに曲を弾きだし、演奏室に音を響かせていった。
⇒【18】へ進む
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【54】 ─庭園 13時─
庭園へ出てみると、庭師がすでに花に水を上げた後の様で、若干花や葉が水滴を滴らせている。土も若干湿っているわね。風で運ばれてくる土の香り、わたくし結構好きなのよね。
花達も瑞々しく咲き誇ってて、見てるだけでも気分が上がってきそうだわ。
バラの花が好きなので、たくさんのバラを見ながら歩く。
何本か部屋に飾る様に後で持ってきてもらおうかしらとか、徒然なるままにのんびりと時間を過ごした。
うん、たまにはこういう時間も悪くないものね。
のんびりしていたら、そろそろ15時になる頃になっいたのね。うん、そろそろ移動しましょうか。
花を十二分に堪能したわたくしは、満足な気分のまま、ゆっくりと庭園を後にした。
書斎へ本を読みに行く ⇒【15】へ進む
庭園へ花を見に行く ⇒【42】へ進む
お父様の執務室へ行く ⇒【52】へ進む
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【55】
「トルデリーゼ・ルントシュテット!! 私は第一王子たるキリルの名に於いて、貴様との婚約を破棄するとここで宣言する! 貴様の様な性格がドブのように濁って腐りきったような者が、私の婚約者など、不釣り合いにも程がある!!」
突然の殿下の婚約破棄宣言に、周囲は先程以上にざわつきを見せ始める。
大半は困惑した囁きや、わたくしへの憐れみの眼差しが殆どのようね。
「そして私はこちらの、マリーリア・ベルツ嬢と、新たに婚約をすることをここに誓う!!」
マリーリア男爵令嬢の腰に手を回しながらそう宣誓する殿下の姿。
婚約破棄を叫んだと思ったら、その場ですぐに、別の女性と婚約をするとの叫びに、卒業生も在校生も、教師や演奏されてた楽団の皆様や、給仕をされていた方々までも。
全員が全員何を見せられてるのか聞かされてるのか理解出来ないと言わんばかりに、ポカンとした顔になって、殿下達を見つめた。
「殿下」
わたくしはカーテシーの状態から、静かにスッと姿勢を戻し、殿下を静かに見つめた。
「この婚約は王家と我が家でわたくし達がまだ幼い頃にとりきめたものです。陛下や王妃陛下はご承知なのでしょうか?」
「ハッ! 私ももう学園を卒業し、これからは陛下である父の跡を継いでいき、後々には王となるのだからな! 何も問題あるまい!」
いや、問題ありまくりですが?
確かに殿下は立太子されてますが、だからってそんな独裁者的な発言を今からしたら、殿下の派閥にいる貴族達が「この人の下にいて大丈夫なのか」みたいに思われてしまいますが。
案の定、パーティに参加されていた生徒の親御さん達の中には、今のやり取りだけで、眉をしかめていたり、既に伝令を飛ばそうとしている人も見受けられる。
陛下にしても、あの自分にも人にも厳しい陛下の耳に入られた日には、大変な未来が待っていると思わないのかしら……。
まぁ、そんな事気が付いてもない、考えてもないのでしょうけれども。
「殿下、まずは陛」
「まず権限がどうこうよりも!! 貴様は学園にいた時、リーリアを陰でずっと虐めていたのだろ! この陰湿な性悪女め!」
「わたし……本当に辛くて……でも私は平民の出ですし、仕方ない事なのですと……」
わたくしの発言を遮り、あらぬ罪を着せようとし、更には会ってもいない令嬢はわたくしにいじめられたとポロポロと涙をこぼし始めてきて。
「リーリア! そなたは何も悪くない! 私がもっと早くに婚約を破棄し、アイツを処刑なり国外追放なりして処分していれば、これほど悲しませずに済んだものを……!」
「あぁ、キリル様……!!」
……。
…………。
………………。
二人共愛称で呼び合い見つめ合うと、周囲の視線なぞ気にする事なく、ヒシッと抱き合う。
前世の小説やマンガでよく見た、断罪劇中の中に突如始まる三文芝居。
読んでた分には「来た来たー!」位のテンプレ展開で笑ってたけれども、あれは関わりない第三者だから出来るのねと、よーーく分かるわ。
何を見せられてるのかしら。と言う気持ちと。
うわ、ウザッ。空気読みなさい貴方方。と言う気持ちと。
その他にも色々な冷メタ目で見るだけの状況に、巻き込まれた側のわたくしは今すぐ邸に帰ってしまいたくなっている。が、そこはなんとか耐える事にして。
わたくしは額に手を当て、ハーッと一つ息を吐いた。
今、殿下の口から出た【処刑】【追放】【処分】、これはマズい発言なのを、わたくし含め、周りの人達は判っている。
これは殿下が王になったら、自分達も同じ目に合う可能性があるからだ。
生徒や先生方は真っ青だし、来賓の方々や一部生徒の親御さんは、生徒を連れて静かに退場しようとまでしている。
自分で自分の首を絞めた事に気が付いてない殿下はまだ、抱き合っていた。……まだやってたのね。
とりあえず、このままではどうにもならないしと、わたくしは話を進める事にした。
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