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【29】
青いバラが綺麗な色合いだけれど……チラリと受付の後ろにある他の色のバラに目をやる。
色々な色があるけれど、その中に一際目を引く紫色のバラが目に入った。
「……」
今日のわたくしのドレス、ラベンダーカラーなので、濃い青色よりは、あの紫色のバラの方が良さそうね。
青色も捨てがたくて悩んだけれども、最終的紫のバラを選ぶことにした。
「青じゃなくて、紫のバラを頂けるかしら?」
「え?」
わたくしが青色のを選ばなかったのが意外なのか、受付の男性は、驚いて軽く目をしばたたかせて、こちらを見つめてきた。
……確かにわたくしは青色が好きだけれど、そこまで驚くのは、少々大袈裟なのではなくて?
「あ、あの……こちらの青いバラは、本当に希少な種で、ここまでの色合いになるのは珍しい事でして……。青色の方がよろしいのではないでしょうか?」
「そうね、その色もとても素敵な色で、いつもならきっとそっちしたけれども、今日のわたくしのドレスの色からすると、紫のバラの方が良さげなのよね」
「……確かに……そう、ですが……」
青色を勧めたからか、わたくしが紫を選んだ事で、少し困った表情を浮かべてるわ。多分わたくしが青色を好きなのを知ってる人なのかもしれないわね。
「たまには紫色も悪くないもの。紫色のバラをお願い出来るかしら」
「あ……はい、かしこまりました」
受付のは人が持ってきてくれた紫のバラを受け取り、胸に飾ると、わたくしたちは会場へと入っていった。
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【30】
わたくしの行動に偽りがない事を認める、陛下の署名が入っている。
うん、大丈夫。これで明日の断罪イベント、乗り切ってみせるわ。
「ありがとう、お父様。これで明日の殿下から無茶ぶりにも対抗出来るわ」
「いや、これくらい構わんよ。そもそも殿下ご自身で処理せねばならない書類をリーゼに丸投げしていたり、外交も任せきりでご自身でせず、その上でリーゼがやってもいない事の噂を流した上で浮気相手の女と婚約破棄を企み、しかも卒業パーティという大事なイベントでやろうとするなど、こちらとしても堪忍袋の緒が切れるものだったからね」
「お、お父様……?」
あ、あら……?
あまり顔に出さない人だから気が付かなかったけれど、お父様、もしかしてかなり怒ってらっしゃる……?
ヒロインである男爵令嬢の貴族のルール無視のやらかしだけでもだいぶ怒っていらしたけど、お父様は表に見せないだけで、わたくしが思う以上に怒っていらしたのね。
いつもニコニコとして温和な印象が強かったから気が付かなかったわ。
最近羽ペンの消耗が激しいことを、チラリとセバスから聞いていたけれど、それも理由に一つだったのかしら。
「ふふ……」
「どうかしたかい」
「いえ、なんでもないわ、お父様」
わたくし、お父様にもマティアスにも愛されているのねと、改めて実感出来て。
この後待っているであろう、断罪イベントだって怖くないと思えたわ。
「本当にありがとうございました。後はわたくしが見事殿下の企みを破ったという報告をお待ち頂ければと思います」
お父様のお仕事の時間をこれ以上奪う訳にもいかないので、用事も終わったのもあり、そのまま部屋を退出しようとしたところ、ドアノブに手を掛ける前にお父様から声を掛けられた。
「リーゼ」
「はい?」
「……あぁ、伝えるべきか少し悩んだけれど、一応伝えておいた方がいいかもと思ってね」
「え、えぇ……なんでしょうか」
「バラの花がね、急遽明日のパーティで使われるらしく、大量の発注があったとの動きを聞いている」
「バラの花……ですか」
卒業生の胸には在校生から花を一凛飾る伝統はあるにはあるけれど、それは卒業パーティではなく、卒業式の時の事よね。明日のパーティでもそれをするとかかしら?
でも卒業式に飾る花はバラではなくて、他の花のはず……。卒業式ではないから、バラにしたとかかしら?
大量に急遽発注があったと言う事は、確かに何か怪しく感じられるわ……。気のせいとも受け取る事も出来るけれど……。
お父様が言葉を濁すという事は、はっきりとした情報が掴めなかったのかしら。
「すまないね。入ってきたのが、今朝方の情報なので、まだ使用目的とかそういった物までが分かってないんだよ」
「そうだったのですね。いえ、教えて頂き、ありがとございます。明日はバラの花には注意をしてみますわ」
「あぁ、そうしてくれ」
もしも花の発注が殿下や男爵令嬢であれば、他の人はともかく、わたくしは絶対気を付けた方がいいものね。
お父様に礼を改めて言うと、わたくしは今度こそ執務室を後にした。
※父親から、断罪を避ける為の書類を『14』枚受け取った。
この枚数をメモしておく事。
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