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第5話 なんでもない日が、ちょっと特別



「ここでいいの? ほんとに」

「うん。最近できたカフェでさ、パンケーキが人気らしいんだよね。見た目も映えるらしいよ?」


土曜の昼下がり。

二人は都内の小さなカフェにいた。

大通りから少し外れた場所にある、木のぬくもりが感じられる店。

混雑もなく、ちょうどいい距離感のテーブル席に腰を下ろす。


「映えるって……駿さん、そういうの気にするタイプだっけ?」

「いや、全然。でもさ、遥が喜びそうだなって思って」


遥は少し驚いた顔をしたあと、ふっと笑った。

こういうさりげない気遣いが、この人らしい。


パンケーキをシェアしながら、話す内容はたわいもないことばかり。

職場のちょっとした愚痴とか、電車で見かけた変な人の話とか。

でも、駿の話し方はどこか穏やかで、聞いているだけで気持ちがゆるんでいく。


(こういう時間、すごく久しぶりかも)


遥は心の中で、ふとそう思った。

恋人でも、友達でもない。

でも、安心できる。ちょっとだけドキドキもする。

そんな関係って、ありそうでなかなかない。


「……ねえ」

「ん?」

「さっきさ、フォーク逆に使ってたの、気づいてた?」

「え、うそ!?マジで?」


遥がくすっと笑うと、駿もつられて笑った。

そうやって笑い合うとき、自分の中の何かが少しずつ溶けていく気がする。


帰り道。

少し風が冷たくなってきた空の下、並んで歩く。


「今日は楽しかった」

「俺も。なんか……“何でもない日”って、逆にいいよね」


そう言った駿の言葉に、遥は小さくうなずいた。

何もない日が、こんなにあたたかいなんて。

たぶん、隣にいる人が駿だからだ。


(焦らなくていいんだ)

そう思えた瞬間だった。

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