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第28話 「カーテン越しに、あなたと過ごす午後」


カーテンの向こう、やわらかい光が差し込む午後のリビング。


「……なんか、いいね」


遥がそうつぶやいたのは、特別なことが何もない、ただの休日だった。


テレビもついてない。

BGMも流れてない。

ただ、新しいカーテンが風に揺れる音と、ふたりの呼吸だけがそこにあった。


「……何が?」


「この、何もない感じ。引っ越してからずっとバタバタだったじゃん?」


「たしかに。箱開けながら騒いで、荷ほどきして、笑って、叫んで……」


「やっと、“普通”が始まった気がする」


駿は湯気の立つマグカップを遥に渡した。


「ありがとう……ん、あったかい」


ソファに並んで座って、それぞれのマグを手に持ちながら、

話すことも、黙っていることも、どちらも心地よかった。


「引っ越してから、まだ1週間なのに……もう、ずっとここで暮らしてる気がするよ」


「うん。遥が隣にいるからかも」


「……またそうやって、ずるいこと言う」


「でも、事実だし」


遥はくすっと笑いながら、駿の肩にもたれかかった。


外では車の音も、人の声もしない。

ただ、ふたりの世界がそこにだけあるような静けさ。


「今日って、なんの日だっけ?」


「えーっと……何もない日」


「……そういう日、もっと増えるといいな」


「それ、めちゃくちゃ贅沢な願いかも」


「そうかな?」


「何もない日を、ふたりで“幸せ”って感じられるのって、結構すごいことだと思う」


「……そっか」


静かな笑いが、部屋をやさしく包んだ。


光が、カーテン越しに、ふたりの時間をそっと照らしていた。

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