第19話 「それでも、一緒に選びたかったから」
週末の午後、式場見学のために訪れたチャペルのロビー。
晴れ渡った空に、白い建物がまぶしく映える。
「……ここ、すごく雰囲気いいね」
遥がそう言って駿の方を見ると、彼は少しだけ緊張した表情で頷いた。
「うん。写真よりも、実際に見ると印象違うな」
ふたりで手をつなぎながら、案内スタッフの説明を聞いてまわる。
天井の高い挙式会場、木目調の温もりある披露宴会場、きらびやかな装花。
どれもが美しく、でも...選ぶのが難しい。
「ねえ、このドレス、どう思う?」
遥が試着室から顔を出すと、駿は一瞬固まった。
「……反則じゃん、それ」
「は?」
「似合いすぎて、言葉出なかった」
「ちょ、やめてそういうの!本気照れする!」
「だって本当だもん」
そのあとは照れてしどろもどろになりながらも、ドレスの後ろ姿のリボンまでじっくり見てくれる駿に、遥の頬はずっとゆるみっぱなしだった。
──けれど、その日の帰り道。
「……正直、ちょっと疲れたね」
「うん。でも、全部“ふたりで選ぶ”って、やっぱり大事なことだと思う」
遥は小さく頷いた。
「ケンカしても、うまくいかなくても、一緒に笑える未来にしたいなって、今日思った」
「それ、俺も」
駿が握った手に、遥はそっと力を込めた。
「だから、選ぶのに時間かかっても、ちょっと面倒くさくても……“ふたりで”選びたい」
「うん。絶対そうしよう」
その手のぬくもりは、式場の記憶よりもずっと強く遥の胸に残った。




