第12話 君に甘やかされすぎて、今日も幸せ
週末。街にはにぎやかな音楽と、手をつなぐカップルたち。
その中に、遥と駿の姿もあった。
「今日は服を一緒に見に行きたいって言ったの、遥だよ?」
「そうだけど……駿くんとお買い物デートって、ちょっと緊張するじゃん……なんか、“彼氏”って感じがして……」
「俺、彼氏じゃなかったっけ?」
「え、いや……その、彼氏なんだけど……」
「ふふ、かわいいな」
からかうような駿の声に、遥は軽く肩をすくめた。
でも、口元は自然とゆるんでしまう。
ブティックの中、鏡の前で服を合わせる遥を見て、駿がふと一歩近づく。
「その色、似合ってる。肌がきれいに見える」
「えっ……そ、そうかな」
「うん。こっちも悪くないけど、さっきのほうが、遥っぽい」
言葉はシンプルだけど、その視線がやわらかくて、優しくて、
遥の胸はまたしても“好き”のカウンターを振り切りそうになる。
「じゃ、これにする……」
「うん。レジ、行こっか」
お店を出たあと、信号待ちのとき。
ふと、人が多くて少し押し合うような場面になった。
その瞬間──
駿がさりげなく、遥の肩を引いて、自分の前に立たせた。
「……あ、ありがとう」
「人多いからね。転ばないように」
その仕草があまりに自然すぎて、
遥は心の中で何回目か分からない絶叫を上げた。
(ああもう、なんでそんなにスマートなの!?)
(優しくて、でも全然押しつけがましくなくて……)
(惚れ直すってこういうことなんだ……)
帰り道、駿がふと手を差し出した。
「疲れてない?」
「……ちょっと。でも、楽しい」
「そっか。じゃあ、もう少しだけ一緒に歩こう」
その手は、優しさと愛情のぜんぶが詰まってるみたいで。
遥は、ぎゅっと握り返した。




