第11話 好きが止まらない
「──もう、無理」
遥はソファの上でクッションを抱えながら、ふにゃりと崩れ落ちていた。
「ど、どうしたの?」
キッチンから顔を出した駿が心配そうに覗き込む。
「好きすぎて、心臓がもたない……」
「えっ?」
「駿くんのエプロン姿、ずるい……好き……惚れる……」
駿は笑って、でもちょっとだけ耳が赤くなる。
「いや、それはこっちのセリフだから」
「え?」
「さっき、“美味し〜”って言いながらおかわりしてた遥の顔、かわいすぎて、こっちが死ぬかと思った」
「し、死なないで!? じゃあもう、お互い一生リザーブ機関で心臓補強しないとね!」
「なにその例え(笑)」
笑い声が部屋に広がる。
手料理の匂いと、甘ったるい空気と、あたたかい会話。
どれもが、愛おしい。
食後。ソファでくっついて、映画を観る。
内容なんて半分も頭に入ってこない。
駿の肩に寄りかかるだけで、遥の心はずっとフルボリュームで“好き”を連呼している。
「……なんでそんなに好きなんだろう」
「え、今の聞こえた」
「うわあああ聞こえてた!? いまの、心の声!」
「でも嬉しい。俺も好きだよ、めちゃくちゃ」
「……わかってるけど、聞くとやばい。好きの嵐で倒れる」
「倒れていいよ。俺がちゃんと受け止めるから」
「……ずるいよ、そういうとこも好き」
そのまま、ソファに寄り添って座って、紅茶を飲んだり、おやつをつまんだり。
テレビもつけずに、話すでもなく、くっついて笑って。
その時間の全部が、愛しくて、幸せで。




