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9:変化していった感情

リリナが元気を取り戻してから、彼女の日常はいつも通りに戻っていった。笑顔で庭を駆け回り、家の中でも無邪気な声を響かせていた。だが、ジェラルドの心の中ではそれまでとは異なる感情が渦巻いていた。彼は、リリナが倒れた時の不安と恐怖が忘れられず、彼女を失うことへの恐れが強くなっていた。


リリナの笑顔を見るたびに、ジェラルドの胸の奥には優しい感情が芽生えていた。以前の彼なら、この感情に名前をつけることもできなかっただろう。しかし、今の彼にはその感情が何であるか、はっきりと理解していた。それは、リリナを「守りたい」という強い思い、そして彼女に対する特別な愛情だった。


ある日、リリナが庭で遊んでいる姿を遠くから見守っていたジェラルドは、彼女の無邪気な姿に胸が温かくなるのを感じた。彼女が花を摘んで、時折笑いながら空を見上げる姿は、まるで天使のように見えた。


「ジェラルド、こっち来て!」


リリナが手を振ってジェラルドを呼んだ。彼は最初少し戸惑いながらも、彼女の呼びかけに応じて、ゆっくりと彼女の元へ歩み寄った。


「この花、綺麗だよね。ジェラルドにもあげる!」


リリナは摘んだ花をジェラルドに差し出した。ジェラルドはその花を受け取り、思わず笑みを浮かべた。リリナの純粋な優しさが、彼にとってどれほどの救いであるか、彼はこの瞬間にも改めて感じていた。


「ありがとう、リリナ。」


ジェラルドはそう言いながら、リリナの顔を見つめた。その無邪気な笑顔が、彼にとってどれだけ大切なものかを、彼は心の奥底で強く感じていた。


──彼女を守りたい。この笑顔を、ずっと守り続けたい。


その瞬間、ジェラルドの中で決意が固まった。彼はこれからもリリナのそばにい続け、彼女の笑顔を守り抜くと心に誓った。彼女の無邪気さや純粋さが、ジェラルドにとってはかけがえのないものとなり、彼はその思いを胸に秘めて生きていくことを決意した。


秘めた思い


リリナが再び元気に過ごすようになってから、ジェラルドの中で芽生えた感情は、ますます深まっていった。彼は彼女を守ることを自分の使命と感じ、彼女の幸福が何よりも大切だと強く思うようになっていった。


しかし、ジェラルドはその感情を表に出すことはなかった。彼はリリナに対して、これまでと同じように接し続けた。彼女が彼に対してどれほど大きな存在であるかを、彼はひたすら心の中で抱き続けていたのだ。


リリナにとって、ジェラルドはただの「お兄ちゃん」のような存在だった。彼女は彼を信頼し、頼りにしていたが、彼が抱く特別な感情にはまだ気づいていない。しかし、ジェラルドにとっては、それで十分だった。彼はリリナが笑顔でいられること、それだけが何よりも重要だった。


ある夜、ジェラルドは一人で城の屋根裏に上り、夜空を見上げていた。満天の星が空を埋め尽くし、月明かりが静かに城を照らしていた。ジェラルドは心の中でリリナのことを思い浮かべながら、自分に問いかけた。


──この感情は、何なんだろう?


彼はまだその答えを完全には見つけていなかった。しかし、彼女を守りたいという気持ちが日々強くなっていくのを感じていた。彼女が幸せでいる限り、彼もまた幸せでいられる。そんな思いが、彼の胸の中で確信に変わりつつあった。


ジェラルドは屋根裏から降りて、静かに城内を歩き始めた。リリナの部屋の前で一瞬足を止め、扉の向こうで静かに眠る彼女を思い浮かべた。彼女が無事で、幸せに過ごしていることが、ジェラルドにとって何よりの喜びだった。


──これからも、彼女を守り続ける。


彼は静かに自分に誓いを立て、その場を去った。


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