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1:目覚めた運命

──眩しい。


リリナはゆっくりとまぶたを開けた。朝の光が柔らかく、カーテンの隙間から差し込み、部屋全体に淡い金色の輝きを広げている。


「ここは……どこだろう……?」


瞬間、違和感が走る。


彼女は自分の小さな手を見つめた。小指はかすかに震えている。記憶が一気に蘇る――日本での温かい家庭、仕事に追われる日々、過労で倒れた瞬間の感覚。


──私、死んだんだ……!


混乱しながらも、リリナはベッドの縁に座り直し、ふと目を上げる。広がる光の中で、彼女の姿が鏡に映り込む。


シルクのような質感の長いグレーの髪が、腰までまっすぐに流れ落ち、肌は透き通るほどに白い。大きく見開かれた瞳は、鮮やかで光を反射してキラキラと輝いている。パッチリとした目が、まるで絵画のように澄んでいた。


「……えっ、これが私……?」


彼女は髪にそっと触れた。指先で感じる柔らかさは、今までの自分のものとはまったく違う。まるで夢を見ているかのようだった。


リリナが目をやったのは部屋の内装。天井は高く、白い石造りの壁には優雅な模様が彫られている。家具は重厚な木製で、淡いブルーのシルクが使われたカーテンやベッドカバーが、上品さを漂わせている。


部屋の中央には、輝くクリスタルのシャンデリアが吊るされていた。


──ここは、まるでおとぎ話の中のような世界……


ふいに、部屋の外から軽やかなノックが聞こえた。


「リリナ様、お目覚めですか?」


戸が静かに開かれ、メイドのセリアが顔を覗かせる。彼女の薄いグリーンの瞳が、優しくリリナを見つめていた。


「おはようございます、リリナ様。今日も美しい朝ですね。」


リリナは少し戸惑いながらも、微笑み返した。「おはよう、セリア。」


リリナは立ち上がり、窓へと向かった。外を見ると、広大な庭園が目に入る。朝露に濡れた芝生が陽に照らされ、輝いている。遠くには石造りの城壁がそびえ、その向こうには青く澄んだ空が広がっていた。


──魔法の国……?


ふと、頭の中に浮かぶ一つの単語があった。


この世界には、魔法が存在するのだと、彼女は知っていた。それも、日常生活の中で普通に使われるものだと。


しかし、まだ彼女には、この世界の全貌が掴めない。目の前の美しい景色も、夢なのか現実なのか、どちらなのか……。


「リリナ様、今日のご予定をお知らせいたします。」


セリアが小さな紙を持って近づく。彼女の手には魔法の光がぼんやりと灯っており、その光で紙を照らしている。まるで魔法が日常の一部であることを、何の違和感もなく示していた。


リリナはその光景を見つめながら、小さな息を吐いた。


──本当に、転生してしまったんだ……

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