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サンソンのプロローグ
大聖堂と聖シャニアの墓、罪を背負う羊が住まう場所、そして教会の総本山である【光の平野】。そこの光聖教会の本部は朝から慌しかった。
出かける準備をしていた枢機卿の部屋に一人の神父が入ってきた。
「失礼します」
「なんだ、サンソン。今、忙しいんだ」
「法の書の魔導書を書き上げた者がいる監獄にでも行くからでしょうか?」
サンソンと呼ばれた神父の言葉に、動きを止めた枢機卿は「ああ、そうだ」と言った。
「でしたら、私も行かせてください」
「はあ? なんでだ?」
「決まっているでしょう。法の書を書き上げた囚人だった。つまり何ならかの罪を着せられたと言う事になります」
「……ほお、その事件を推理しようと思っているんだな? 極刑調査員?」
枢機卿の言葉にサンソンは軽く微笑む。
「トラブルを起こさなければ……と言っても、お前は無理そうだ。許可しなくても勝手に行きそうだし」
枢機卿は呆れながら「まあ、勝手にしろ」と言い、部屋を出て行った。
「さて、私も行くとしましょうか」
サンソンもまた軽く微笑んで、部屋を出て行った。