表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/42

シャルルのプロローグ


 最後の、ようやく最後の行までついた。緊張が抜けそうになるのをこらえて、潰れかけた羽ペンの先を斜めに切る。これで書き味も良くなるだろう。

 随分と夜更かしをしてしまった。またアンリに怒られるだろう。だがこの一行を書けば終わりだ。

 最後の行を魔法の羽ペンをインクで付けて書きだす。ついにここまで来たんだ。これを書き終われれば……。


 無罪が確定する、そう思って最後の行を書き終えた。


 書き終わった羊皮紙をすべてまとめる。三百枚くらいあるので結構な厚さがあり、重みもある。これだけ私は書いたのだと思うと誇りと達成感が出てくる。

 それを仮糸で綴る部分を縫って行く。


 すべてを縫い終わって、羊皮紙の束に手を置く。

 すると羊皮紙が輝きだした。良かった、成功している。いや、当然だ。私は清廉潔白の罪を犯していない人間だ。だからこの【法の書】の魔導書が完成できるに決まっている。だけどこうして成功をしているというのを見るとホッとする。


 輝く羊皮紙に「写本者 シャルル」と呟くと輝きは失う。だが三百枚書いた羊皮紙一枚一枚には薄く魔力で【シャルル】名前が刻まれている。

 そう、私はシャルル。前は貴族で下には家名があった。だけど勘当されて、ただのシャルルだ。


 私は【法の書】を眺める。

 聖なる書を写本すれば、罪が償われる。文字一つ一つに罪を消す力がある。その言葉を信じて書いてきた。

 だけど、この書を写本していた時は償いなどなかった。


 自分の無罪を証明するため。


 ただ、それだけだった。

 そう思った瞬間、私は床に倒れた。緊張の糸が切れたんだ。それから魔力も切れているだろう。まあ、いいか……。

 私は目を閉じる。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
女なのにシャルル
[気になる点] 300書き上げたあとに硬い羊皮紙を縫い上げるって、かなりの怪力ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ