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悪戯は、やがてイジメになる。
「お、こいつ登校してきたぜ。」
なんて声が教室に入った瞬間聞こえて、思わずビクッとしてしまう。
「昨日の、ごめん、無くしちゃったw」
反省するつもりのない言葉に無視を貫く。
「なんだよ、無視かよ。」
つまんなそうなその言葉にホッとした時、後頭部にガツンと痛みが走った。
無視したら、何もしてこなくなるんじゃ、ないの、、、?
それが最後の意識だった。
「、、、?」
起きたとき見えたのはピンク色の天井だった。
「あら、起きたの?」
という保健室の先生の声でやっと保健室だということに気づく。
「、、、!いった、、、。」
起きようとして激痛が走る。
「あぁ、まだ起きないで。思いっきり後ろに倒れたの、あなた。大丈夫?〇〇さんが連れてきてくれたのよ。」
〇〇さんというのは、聞きたくもない、僕を殴った犯人だった。
「疲れてた?急に倒れたって言ってクラス全員びっくりしてたの。」
保健室の先生の声に呆れる。
言い訳か。
僕は殴られたっていうのに。
「そ、ゆ、やつ、、、。」
「ん?なんか言った?」
「いや、なんでも、ないです。」
「そう。頭を打ってるからね。もう少し寝ていきなさい。」
保健室の先生はもう少し安静にするように僕に伝えるとどこかに行ってしまった。
次目覚めたときはもう家だった。
後から知ったことだがあれからしばらく起きず、働いていた親が呼び出されて学校から連れ出されたらしい。
さらに、寝たまま病院にも連れて行かれたらしく、診断結果やらなんやらの通知が来ていた。
「起きたの?大丈夫だった?何があったの?」
部屋に入ってくるなりそう聞き出すお母さん。
「実は、いじめ、られてるんだ、、、。」
そういうとお母さんはひゅうっと息を呑んだ。まさか自分の息子がいじめにあってるなんて、思いもしなかっただろうし、思いたくもなかっただろう。
「昨日、せっかく買ったキーホルダーを折られて、捨てられて。昨日からなんだ、いじめは。きっと向こうは悪戯としか思ってない。だからいいんだよ。」
僕がいうとお母さんは
「それしかなくてもあなたは傷ついているでしょう。これを機に、転校しない?"ツユキ"。」
ツユキ、というのが僕の本名。
転校、といのは僕のとってすごく魅力的な案だった。
でも、僕の口はこう言った。
「もう少し待ってほしい。状況が変わるかもしれないから。」
と。
そして、言葉通り状況が変わることになることを、このときの僕はまだ知らなかった。