◇96 砂浜のメダルガニ
もう訳が分かんないよ。
なんか変な内容だよ!
でも投稿するよ。
いよいよ四日目が始まる。
結局昨日はサーペンタイガーから逃げるので精いっぱいだった。
森の中に避難した私達は、サーペンタイガーに襲われることは無かった。
ホッと胸を撫で下ろして終わった一日で、四日目の今日は海岸にやって来た。
「うわぁ、綺麗な砂浜!」
「凄い、海メチャクチャきれーい。泳ぎたいなー」
目の前には綺麗な青い海が広がっている。
細かな波が押し寄せると、海岸沿いの砂浜に影を落とす。
和みやすい空気が立ち込め、ソッと心が平穏を保つと、海に視線を奪われた。
「おい、ボーッとするな」
「ごめん。ゲームの中なのに、海がとっても綺麗で」
「そうだな。プラスチックごみが一つも落ちていない海だ」
突然現実を突き付けられてしまった。
とは言え、それは今から数十年前の話。
今ではほとんどプラスチックごみが出ていない。それもこれも技術の進歩らしいけど、私には分からなかった。
「それはさておき、ここにもメダルが落ちているかもしれないな」
「うんうん、だって砂浜だもんねー」
「根拠が無いな。とは言え、波に攫われていなければいいが」
波はそこまで高くはない。ましてや速くもない。
感覚も長いので、引っ張られることは無いと思う。
だけど小さなメダルだ。すぐに波に飲み込まれるかもしれないので急いで探す。
「砂粒みたいな砂浜だね」
「貝殻もたくさん落ちてるねー」
「とは言え、メダルは見当たらないか」
白い砂浜には貝殻がたくさん埋まっていた。
けれどメダルの輝きは無い。
視線を配り回ってもモンスターもいなければ、メダルも落ちていない。
「砂の中に埋まっているのか?」
Nightはしゃがみ込んで砂を浚った。
マントの下部分に細かな砂がくっ付く。
けれどNightは一切気にせず、鋭い眼光で睨みを利かせた。
「Night、マントが汚れてるよ?」
「……あったぞ」
「あったって?」
「そのままの意味だ。ほら、星一つのメダルだ」
Nightは砂の中からメダルを一枚見つけた。
そこには星が一つ描かれていて、鈍色に光っている。
手にしたメダルはフェルノに投げ渡すと、落とさないようにフェルノが片手でキャッチ。確かに星が一つ描かれていて、如何やらメダルが埋まっているらしことが判った。
「凄い、本当に見つけちゃった。どうして?」
「簡単なことだ。ほら」
「おっとっと。Night、いきなり物を投げないでよ」
Nightは手の中から黒い何かを投げつけた。
宙をクルリと重さで回るソレを、私は両手で受け止める。
ホッと一息付いて受け取ったものを見ると、黒い棒に丸い輪っかが付いていた。
「Night、この異世界ファンタジー感を全力で否定してくる科学道具はなに?」
「決まっているだろ、簡易的な金属探知機だ」
「へ、へぇー、金属探知機なんだ。そんなの作れるんだ……金属探知機!?」
「およ?」
Nightはここに来てヤバいものを作っていた。
まさかそんな物まで作れるなんて、固有スキル【ライフ・オブ・メイク】は恐ろしい。
道理で何もしていないのにHPの総量がガッツリ減っていて、しかも私達がログインする前から居た訳だ。まさかこんなもの作っていたなんて、一気に現実味しかなくなる。
「へぇー、Nightってこんなものまで作れたんだー」
「あくまでも簡易的なものだ。構造もシンプルで、中にコイルが二つ入っているんだ」
「こ、コイル?」
「単純だぞ。中に送信コイルと受信コイルの二つが入っている。金属に近付くと、電磁誘導……つまりは、送信コイル側に磁気が乱れ、電流が発生する。受信コイルはそれを受け取り、金属の有無を感知する。ただそれだけのシンプルなものだ。ちなみに電磁誘導とは……」
「ううっ、頭痛いよー」
フェルノは頭を押さえてしまった。
話が難しくなっていき、脳の処理が間に合わなくなる。
そこで私は話を強制的に打ち切ると、Nightにポンと手を合わせた。
「とりあえず、凄いってことは分かったよ」
「それ、絶対に分かっていないな:
「とりあえず、凄いってことは分かったよ!」
「……そうか。まあ、今回集めているこのメダルは金属製。つまりは金属探知機を作れば反応すると思ったんだ。効率を上げようと計画していたが、流石に磁力が弱すぎたな。メダル側から送信コイルが受け取れる磁気がそこまで無い。近付け過ぎないと意味が無い代物だ」
Nightは自分が作ったものを酷評した。
完璧じゃないからこそ、物は成立している。
何だか本当に科学者に見えて来たNightの立ち振る舞いに、私は手にした金属探知機を使って見ようとする。
「私も使ってみるね。えーっと……」
とりあえず砂浜に金属探知機を近付ける。
正直全然使い方が分からない。
とりあえず砂浜にジッと近付け続けると、ピーピーピーピーと鳴り出した。
「な、なんか鳴ってるよ!?」
「運が良いな。多分そこに埋まっている」
「う、埋まってるって……そんな訳」
私は砂を浚った。もしかしたら、本当に埋まっているかもしれない。
私はゆっくり砂を払っていくと、真っ赤なものが出て来た。
これはなに? 私は内心でそう思うけど、指を伸ばした瞬間に赤い何かが蠢く。
「シャキシャキシャキ!」
「うわぁ、急に飛び出さないでよ」
赤い何かが蠢くと、砂の中から飛び出した。
私の指を挟もうとするから、急いで手を引く。
もしかしなくてもカニで、自慢の鋏を使って私の指を襲おうとした。
「あ、危なかった。Night、やっぱりこの金属探知機、壊れてるよ」
「いや、壊れてはいなかったぞ」
「どういうこと? カニとメダルを間違えちゃったら、もう壊れてるって言っても……」
「コレを見ても、お前は壊れていると言えるのか?」
Nightは指と指の間に砂だらけのメダルを挟んでいた。
さっき手に入れたメダルとは全く違う。もしかして、新しく手に入れたのかな?
「そのメダルどうしたの?」
「このメダルは、お前が引っ張り出したカニの真下にあった」
「カニの下にあったの?」
「そうだ。あのカニは、メダルガニ。コインガニの系譜でメダルを抱きかかえて、柔らかい腹を守る習性があるんだ。どうやらこのメダルは、メダルガニが大事に持っていたメダルらしい。そのおかげか、星も一つ描かれている」
確かに星が一つ描かれている。
枚数に数えられるメダルらしく、私は胸を撫でた。
同時に、金属探知機が壊れていないことも証明される。
(本当に、なんでもありなゲームだなー)
逆にそれが面白い所。私は金属探知機を握ると、笑みを浮かべていた。
Nightもメダルが回収できて満足している。
フェルノは……まあ楽しそうで何よりだ。
「それっ!」
完全に波打ち際で遊んでいる。
メダルを探すだけがこのイベントの目的。
それ以外には別に遊んでもいいので、多分フェルノがやってることも間違ってない。
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