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◇94 邪魔物:サーペンタイガー襲来

ヤッベーイ!

 それから私達は自分達を的……と言うか、餌にして歩き回った。

 すると幾つものパーティーに襲われて、何故か戦うことになった。

 誰も疑うことをせず、鴨が葱を背負って来たとばかりに思ったらしい。

 もちろん私達は負けたくないから、襲われる度に反撃をして、結果的に返り討ち。報酬として、メダルをたくさん奪って手に入れた。


「ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ、なるほど。これだけ手に入れば、今日の成果は充分だな」

「充分って、何回戦うの?」

「それは私の決めることじゃない。向こうがバカみたいに襲って来ただけだ」

「私は楽しかったけどなー」

「ううっ、フェルノはそっち系だもんね」


 私は完全に少数派だった。いや、三人で完全に少数派ってなに?

 絶対に少数派ができるのに、私は不利に立たされると、Nightに声を掛けた。


「Night、まだ戦うの?」

「……いや、終わりでいいな」

「「えっ!?」」


 私は意外に思ってしまった。もちろんフェルノも声を上げた。

 ここまでの五時間。私達はとにかく連戦続きだった。

 もうここまで来たら、最後まで戦うのかなと思った。

 だけどNightはそんな真似を辞めると、意外で仕方が無い。


「な、なんで?」

「なんでって、私が戦闘狂に見えるのか?」

「「見えないけど」-」

「そこは否定するんだな。まあ、合っているが……それで」

「「それでって」-」


 私もフェルノも会話の続きを考えていなかった。

 だけどNightに引っ張られ、自分達で墓穴を掘る。

 如何しようと考えるも、ポンと手を叩いた。


「戦わないの?」

「当り前だ。これ以上戦闘をしても時間制限もある。無駄だ」

「その前に蹴りを付ければいいでしょー」

「……言っていなかったか? このイベントには邪魔物がいるんだぞ」

「「ん?」」


 私とフェルノは全く聞いたことが無いことだった。

 “邪魔物”って一体なんだろう?

 瞬きをすると、Nightは「マジか」な顔をする。

 本気で知っていない私達に失望している様子だった。


「Night、邪魔物って?」

「邪魔者ってこと?」

「今回のイベントの詳細には、邪魔物と言い要素がある。一言で言えば、倒されることを想定していない強力な力を持つモンスターが出現し、プレイヤーを蹂躙するんだ」

「「……はい?」」


 そんな情報全く知らない。

 私もフェルノも首を捻り、流石に信じきれなかった。

 けれどNightの顔は本気そのもので、私もフェルノも「マジ」と唱えた。


「そんなのが本当にいるの?」

「いるらしいな。ネットではそんなスレッドが立っていた」

「スレかー。本当かなー?」

「真実を知るのは見たものの目と耳だけだ。あくまでも、イベントの詳細の一つとして公式が公開しているだけ。実際にどうなのかは知らないな」


 つまり何も分からないってことだ。

 そんなことにNightが気にするなんて珍しい。

 私はそう思うけど、Nightは嫌なことを言う。


「とは言え、邪魔物はイベント中限定のモンスターだ。遭遇する可能性は低いだろうな」

「低いってことは、出遭うかもってこと?」

「可能性はある。実際、プレイヤーの多い場所に出現するらしい」

「えっ、プレイヤーが多いって……ここは大丈夫だね。よかった」

「……そうとも限らない。既に乱数は変化している。確率論的に、どのタイミングで変動しているかはモンスター次第だ」


 Nightの言葉がとにかく意味深だった。

 正直そんなことを言ってビビらせないでほしい。

 そう思うのが私の感想なんだけど、フェルノは頭の上で腕を組み、ニヤニヤ笑みを浮かべていた。


「あはは、なにそれー。面白そうだねー」

「面白いって、呑気だねフェルノは」

「だって、出遭ったら出遭ったでしょ? 逆に運良くない?」

「運が良いも悪いも本人次第だ。とは言え、これ以上の戦闘は明日にも響く。残りの一時間は適当にやり過ごすぞ」


 Nightはこれ以上戦う気が本当に無さそうだった。

 私もNightに賛成すると、一旦草原を離れることを決める。


 とは言え何所に行こうかな?

 明日はまた違う所に行ってみたいので、今から大きく移動する。


「明日は南に行ってみるぞ。それじゃあ……ん?」

「どうしたの、Nightって……えっ」


 急にNightが立ち止まる。今から移動する筈だけど、空を見上げてしまっている。

 何か居るのかな? 私も視線を飛ばした。

 すると遠くの方に黒い点がある。何故かこっちに移動している? ような気がしたけれど、気のせいじゃ……無さそうだ。


「なーに、アレ?」

「分からないけど、ヤバそうじゃない?」

「そうだな……まさかとは思うが、邪魔物か?」

「「そんなフラグの回収無いって!」」


 完全に雑に立てたフラグを回収しているみたいだ。

 けれど一体何が飛んで来るのか。

 まさかとは思うけど、私達の周りじゃないよね?

 そう期待したのも束の間、儚く打ち砕かれてしまった。


「と、止まった!?」

「しかも私達の真上だよー」

「あの巨体、あの形状、間違いない……全員、逃げるぞ」


 真上に巨大なモンスターが停滞する。

 翼をはためかせ、長い蛇のような尻尾をくねらせる。

 私達は影のど真ん中に覆われると、Nightは危機感を感じて逃げ出す。


「ちょっと待ってよ、Night!」

「なーんで逃げるのー。うわぁ、下りて来た」


 Nightがいち早く逃げ出すので、私達も続けて逃げる。

 その時だった。翼をはためかせていたモンスターは突然真下に降下。

 間一髪で逃げなかったら、私達は押し潰されていた。


 ドシン!


「あ、危なかった」


 モンスターは地面に降り立った。

 その巨体は推定でも五メートルはある。

 長い尻尾だけでも一メートル以上はあり、私達は見上げてしまう。


 その姿形は真っ黒な猫。いや、虎かもしれない。

 長くて蛇のように見えた尻尾は本当に蛇で、鋭い牙を生やした頭が付いている。

 翼も巨大で広げただけで大きな影を作り出すと、私達は見えない気配に威圧された。


「な、なんだろうこのモンスター」

「サーペンタイガーだ」

「「サーペンタイガー?」」


 Nightはポツリと口走る。流石の知識量だ。

 けれど顔色は青く騒然としている。いや、顔色は変わっていないけど、目が睨んでいる。

 よっぽど強いモンスターなのか、まだ気が付かれていないけど、それだけレベルの差があるのかもしれない。そう思った私はサーペンタイガーの頭上に目を向けた。レベルが表示されている筈で、瞬きをしていると絶句に変わった。


「嘘でしょ、レベル……55」

「そんなのヤバくない?」

「いや、ヤバいのレベルじゃないな」


 私達の中で最高レベルはNightの13だ。

 このイベント中はレベルアップはしない。

 ましてや経験値なんて入らない。つまり、勝つとか負けるとかの次元じゃなくて、私達はNightに従う。


「どうするの、Night?」

「決まっているだろ」

「だよね」


 言葉なんて要らない、そんな物は必要ない。

 これだけのモンスター相手に戦うのはバカだ。

 ジリジリと後ろの下がる中、サーペンタイガーは振り返り、私達に気が付いてしまった。


「「「あっ」」」

「ドラァ!」


 吠えられた瞬間に死を悟る。

 全身が硬直して体が動かない。

 逃げる前に見つかるなんて真似してはいけないのに、私達は渦に飲まれてしまった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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