◇91 イベント三日目:草原1
三日目は少し尺眺めです。
イベントもいよいよ三日目。
もう折り返し地点だ。
なんだか早い気がするけれど、それだけ本気だからこそだと思う。
「それでNight、今日はどうするの?」
「場所も変わったよねー」
今日もランダム転移。全員揃ったことで何処にでも行ける。
私もフェルノもNightに全部丸投げ。
こういう時、何処に行ったらいいのか分からない。
「そうだな……草原か」
私達の周りは障害物がほとんど無い。
もしかしたら、遮蔽物って言った方がカッコいいのかもしれないけど、とにかく周りには何も無い。
この場所はド草原で、もう誰が何と言おうと草原。
私達はキョロキョロ見回して、周りに変な影の一つも無いことを知る。
いや、分かり切っていることなんだけど、それ以上に表現ができない。
「草原って、なにも無いんだね」
「うん。木とか生えてると思ってたけど」
「ここはサバンナじゃないからな。危険だな」
「「確かに危険かも」」
それだけはいくら初心者の私でも分かる。
これだけ何も無かったら、いつでも何所でも狙われる。
むしろ狙ってくださいって言っているようなもので、流石に私でも、どうしようもない限り、突っ走りたくない。フェルノはウズウズしてるけど、一旦放置した。
「どうするの?」
「よし、行くか」
「行くって、回り道するんだね……あれ?」
私は自分の目がおかしくなったのかと思った。
だけど違った。Nightは堂々とした歩みで、草原のど真ん中を歩き出す。
「ちょっと待ってよ、Nightどうしちゃったの!?」
私は咄嗟にNightの腕を掴む。
流石におかしい。Nightがこんな意味不明なことしない。
私は“絶対”を付けてもいい言い分に、Nightは首を捻る。その目は本気だ。
「私は本気だぞ?」
「本気って……なに言ってるの?」
「そんなー、草原のど真ん中なんて危ないでしょー?」
「だからなんだ。危険な道を行く。時にはそれが光明に繋がる」
まるで分からない。いや、分かろうとしよう。
私はNightの目を本気で見つめる。
意識を切り替え、Nightの気持ちになってみた。すると、もしかして的な意識が膨らむ。
「まさか、Nightがやろうとしてるの」
「ふん、理解できたなら行くぞ」
「あっ、それって絶対に危険だって!」
私は先を行くNightを追いかける。
その後をフェルノは頭の上で腕を組み口走る。
「結局行くんだねー。燃えて来た!」
私達は草原のど真ん中を歩いていた。
あまりにも危険な道を進み、いつ敵に襲われるか分からない。
周囲を全体的に警戒すると、フェルノを先頭にとにかく進む。
「ふーん、メダルも落ちて無いんだねー」
「モンスターもいないんだね」
「そうだな」
草原にはメダルの輝きもモンスターのニオイも無い。
ましてやプレイヤーの気配も感じられない。
一体全体なんなんだろう。私はNightの読んだ考えの先が読めないので、ちょっと不安だった。
(やっぱり、それが狙いなんだよね?)
アイコンタクトで合図しようにも気が付いてくれない。
いや、もしかして気が付いてる?
私はフェルノに先頭を任せ安心すると、ポツリ口を動かす。
「Night、もしプレイヤーに襲われたらどうするの?」
「どうすることもない」
「相変わらずだね。でも、こんなの歩く的な気が……」
私は口をモゴモゴ動かす。正直、こんなの損な役回りだ。
溜息を付きそうになり、周囲を見回る。
臆病になりそうな気持ちを頑張って奮い立たせると、私は違和感を覚える。
「あれ?」
「どうしたんだ、アキラ?」
「ん? もしかして、なにか見つけたのー」
私は嫌な視線を感じた……様な気がした。
だけどもしかすると気のせいかもしれない。
そう思えば自分を否定しそうになるけれど、それは突然でも無かった。
「やれ!」
「「えっ!?」」
突然男性の声が上がった。
かと思って左を向くと、黒い塊が宙をクルリ回りながら、私達に向かって飛ぶ。
形は綺麗な丸じゃない。だけど嫌な感じがすると、真っ赤な火を放っていた。
「「爆弾!?」」
「ふん」
私とフェルノは叫ぶがもう遅い。
着弾目の前で目を見開いて動けなくなると、スキルを発動するだけが関の山。
かと思ったけれど、ここでもまただ。Nightはトンと足踏みすると。私達の視界を塞ぐように巨大な壁が現れる。
バァーン!!
爆発が壁によって弾かれた。
強化された鉄なのか、衝撃だけが風圧として貫通する。
私達は当然全員無事。だけど一体何が起きたのか、本当にフラグが回収されたのか、ぎこちない表情を向ける。
「Night、これって」
「予想通りだね。やはり狙って来た」
「じゃあ、この壁も?」
「当り前だ。それじゃあ、後は任せたぞ」
「「任せた?」」
急な他力本願に、私もフェルノも拍子抜けする。
けれどNightは総HPを削ってでも私達を守ってくれた。
正直、ただのスキルじゃあの爆弾は封じられなかったと悟り、私もフェルノも頷く。
「行くよ、フェルノ」
「オッケー。んじゃ、とっとと仕留めますかー」
私とフェルノは壁の向こうに出る。
姿を現すと、襲ってきたプレイヤー達が待っていた。
数は全部で四人。全員男性で、ゲラゲラと笑っていた。
「おいおい、生きてるぜ」
「んだな。んだとも、勝つのは俺らだ」
「正直虫の息だもんな。爆☆、もう一回やったれ!」
「ふん、死ねっ」
うちの一人が両手に黒い球を生み出す。
もしかしてアレが爆弾? Nightが作るものに比べて随分と簡素。
私もフェルノもそんな攻撃でやられる気は無く、爆弾らしきものが投げ込まれると、早速対処した。
「【吸炎竜化】、おりゃぁ!」
「【キメラハント】+【灰爪】!」
「「せーのっ!」」
私とフェルノはスキルを発動すると、投げ込まれた爆弾を貫く。
もちろん本体は狙ってない。如何やら導火線タイプらしく、本体に着火する前に火を消せば爆発しない。だから狙ったタイミングで突きを繰り出すと、爆弾の火は消えてしまった。
ゴトン!
「う、嘘だろ? 冗談じゃねぇ」
流石にこればっかりは驚かれてしまった。
もちろんこんな簡単に成功するとは思わなかった。
だけどこれはチャンスだ。怯んでいる隙に、一気に勝負を決める。
「それじゃあ……」
「今度は私達の番です!」
私もフェルノも負ける気はもうしない。
いや、最初っからしていない。
自信がみなぎると、地面を深く蹴りつけ、早期決着のため飛び出した。
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