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◇88 漫画みたいな展開

漫画みたいな展開を目指しました。

 あれからどのくらい経ったのかな?

 私は代わり映えのしない景色を横目に、とにかくとにかく走った。

 普通に疲れそうな距離と時間だけど、私は全然余裕で、とにかく森を走り続けた。


「そろそろなにか出て来るよね?」


 流石に何も無さすぎて不安になる。

 そんな私だったけど、急にサラサラと何かが流れる音が聞こえた。


「この音……」


 私は耳がいい方だと思う。多分この音は間違いない。

 ハッとなって進行方向を斜め具合に変えると、目の前は獣道だ。


「こ、ここ進むのはちょっと……行くしかないのかな?」


 私は獣道を目の前にして臆した。ここを通るのは少し嫌だった。

 けれど行くしかないし、行かないとダメな気がする。

 私は突き動かされる何かに嫌悪しつつも、目をギュッと瞑り走り出した。


 するとサラサラと流れる音が確実なものになった。

 間違いなく聞こえてくるのは、この音で合っている。

 しかも私には心当たりが……全く無かった。


「誰かと合流できるかな? Night、フェルノ、いるよね?」


 だけど想像力を働かせ、何とか汲み取った。

 もちろん拡大解釈って奴だと思う。

 それでも真実しかできず、私は一縷の望みを掛けた。そろそろ誰かと合流したいんだ。


「ここは……やっぱり!」


 私が獣道を抜けると、先にあったのはそこまで大きくは無いが、人工的な橋が掛かっていた。随分と年季が入っているのか、苔や植物の蔦に侵食されている。

 外側が緑に覆われ、内側も所々が腐り掛けているちょっと危険な木製の橋。

 私はゴクリと緊張感と共に喉を鳴らすと、橋の真下に綺麗な水が流れていた。


「もしかしなくても川だよね? ってことは、誰かと合流できるかも」


 川はそこまで流れが荒くなかった。

 むしろゆったりとしていて、水面を覗き込めば私の影が映り込む。

 水深もそこまで深く無いみたいで、例え川に落ちても流されずに済みそうだ。


(まあ、落ちたくは無いけど)


 そんなことを心の中で呟く。

 だけど川辺にやって来れたのは多分いいこと。

 なにせ、Nightが居るって言っていたのは、“川辺”だからだ。


「川辺ってことはNightだよね? もしかしてこの近くかも。探してみよう」


 私は何だか元気が出て来た。ギュッと拳を作ると、胸が温かくなるのを感じる。

 きっとやっと合流できることに、気持ちが高ぶっているんだ。

 とは言え問題はここから。広い広いマップにたくさんある川の中から、Nightを探す。そんな偶然に頼らないとできないこと、本当にできるのかな?


「……あー、なんだか無理な気がしてきた」

「そうだな。世の中にはたくさんの無理が存在している」

「ん?」


 急に私の鬱屈とした言葉に合いの手を入れて来た。

 流石にそんなことをするプレイヤーが他にいるのかな?

 それとも私の耳がおかしくなったり、頭の中で勝手に言葉合わせが起きたのかな?

 色んな事を思ったけど、聞こえて来たのは川の方からだ。


「もしかして……あっ!」

「やっと合流か」


 橋の上から皮を覗き込むと、Nightの姿を見つけた。

 よかった、やった合流だ。私は胸を撫で下ろす。


 橋の下の川は、両脇を森に囲まれている。

 その内側には砂利がたくさん敷き詰められていて、川の中に丸っこい石が置いてある。

 Nightは砂利道を歩いていて、見上げる形で私を見つけてくれた。


「Night、そこにいたんだね!」

「これで二人か。かなり時間が掛かったな」

「うん。でも、無事に合流できたよ。あっ、メダルも一応拾えるだけ拾って来たから」


 私はポケットの中からメダルを取り出す。

 あれから集めて合計五枚、全部星一つのメダルを集めた。


「そうか。私も集めて来たが、少し待て。今もう一つを取って来る」

「もう一つ?」

「お前の真下だ」

「真下? あれ、蔦に何かキラキラしたものが引っかかってる」


 Nightに誘導され、視線を橋の下に向けた。蔦に何か絡まっているのか、キラキラ光り輝いている。凝視をして覗き込むと、丸っこい形をしていて、多分メダルで間違いない。


「メダルだ!」

「だから私が取って来る。お前は下手な真似をするなよ、ここは危険だからな」

「き、危険?」

「よっと」


 Nightは私に忠告すると、川の真ん中に何個も置いてある丸石へ飛び移った。

 丁寧に一歩ずつ、計算しながら丸石を渡っていく。

 Nightにしては珍しい真似に、私はボーッと見てしまうと、真ん中の石まで辿り着く。


「この辺りか?」

「うん。多分その辺だけど、どうするの?」

「決まっているだろ。ここから取る」


 Nightは固有スキルを発動。【ライフ・オブ・メイク】でHPの総量を削る。

 代わりにNightの手の中に長物が生み出された。

 形はそう、完全に虫取り網だ。


「えっ、虫網で取るの?」

「くっ、届かないか……」


 私が声を上げるも、Nightは大真面目だった。

 確かに虫取り網なら、メダルを落としても上手くキャッチできる。

 けれど流石にNightが腕を伸ばしても、蔦にまで虫取り網は届かない。

 もちろん私でも無理そうで、メダルに触れることさえできなかった。


「クソッ、やっぱり無理か。仕方ない、少し柄を伸ばして……」

「待って、Night。私が蔦を引っ張るから!」

「お、おい、余計な真似はするな。そんなことすれば」

「行くよ、せーのっ!」


 私は蔦を引っ張った。幸いメダルは蔦の絡み付いてくれていた。

 そのおかげで蔦を持ち上げてもメダルが落ちることは無く、キラキラ光る星二つのメダルがNightの方に引き寄せられた。


「どうかな?」

「クッ、そのままでいろよ。そ……」


 バッシャーン!


「「えっ?」」


 その時不思議なことが起きた。川の中に、さっきまで無かった筈の影が現れた。

 かと思えば次の瞬間、水面を飛び出してきた巨大な魚が、キラキラ光るメダルに飛び掛かる。大きな口を開け、とてつもない吸引力でメダルを飲み込むと、再び水飛沫を上げて川の中に戻ってしまった。


「……なにが起きたの?」


 正直私は訳が分からなかった。

 法然とするしかなく、瞬きを二回・三回して困惑する。


「クソッ、だから嫌だったんだ。この川には主がいるらしいからな」

「ぬ、主? 今のが?」

「ああ。クソッ、星二つのメダルは貴重だからな」

「ご、ごめんなさい」


 私は自分が下手なことをしたから、こんなことになったと分かる。

 Nightに謝ったが、今更言っても仕方が無い。

 もうメダルは無くなってしまい、取り戻すにはさっきの主を捕まえるしかない。


 けれどそれは明日に持ち越しになりそうだ。

 なにせ今の攻防で、今日のイベントは終了。

 私達は漫画みたいな急展開に襲われ、そのまま一日目を終えてしまった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

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