◇87 森林のバトルキル
一話完結のバトルです。
私はメダルを探し回っていた。
もちろん、まずはNightとフェルノを見つけ合流すること。それが最優先だけど、見渡せばキラリと光るものでいっぱいだ。
「あっ、またあった!」
これで三枚目のメダルだ。私は地面に突き刺さった星一つのメダルを手にすると、ポケットの中を探る。
中にはここまででGETしたメダルが三枚。色は同じで、少しくすんでいる物もあるけれど、真ん中に星が一つ彫り込まれた立派なメダルだ。
「やった、運がいいのかも」
私は一人興奮して喜んだ。
けれど一向に仲間との合流ができそうにない。
何処まで行っても森の中で、完全に迷ってしまったみたいに錯覚する。
「うーん、太陽の位置から離れた筈なんだけど……」
確実に私が進んでいるのは太陽を見れば分かる。
最初に比べ、見え方の位置が変わっている。
とりあえず南目指して進んではみたが、景色が若干変わったくらいで、進展という進展はない。私は心細くなるも、ここは意識を切り替えて自分を励ます。
「ダメダメ。きっと大丈夫!」
ギュッと拳を握り、早く仲間を見つけようと焦る。
そんな折、突然草木がガサッと動いた。
私は視線を惹き付けられると、目を見開いて警戒する。
「……な、なに?」
強張る体をなんとか解すと、草木の合間から人影が現れる。
男性プレイヤーのようで、この場合は完全に敵。
私が視線を合わせないように避けると、男性プレイヤーは険しい表情を浮かべて臨戦態勢に即刻入る。
「もしかしてこれ、戦う流れ?」
「プレイヤーだな。メダル持ってるんだろ!」
私は戦う気なんて無かった。できれば穏便解決がしたい。
けれど男性プレイヤーはメダルの有無を私に訊ねて、睨みを利かせてきた。
「えっと、その……持ってますけど」
「だったらメダルをよこせ。そしたら見逃してやる!」
「嫌です。私にもメダルを譲れない理由があります」
「だったら強引にでも奪ってやる! はっ!」
男性プレイヤーは血走っていた。
両腕を私に向かって突き出すと、肘の部分から深緑色をした蔦が伸びた。
鋭くまるで槍の様で、私は咄嗟に躱した。
「うわぁ!」
「チッ、避けやがったか」
男性プレイヤーは苦悶の表情を浮かべる。
避けられたのがそんなに意外だったのか、私は完全に敵視されてしまう。
これは戦うしかない。そんな流れを汲むと、頬をパチンと両手で叩く。
「(パチン!)えいっ、頑張るぞ!」
私は【キメラハント】を発動した。まずは様子見の【甲蟲】を使い、両腕を武装する。
顔の前でクロスに構え、男性プレイヤーとの距離を縮める。
ジリジリと感覚を詰めれば、男性プレイヤーの間合いに入る。
「そこだ!」
「そんなの喰らいません」
再び蔦を出し、私を襲ってくる。
もちろん私は全力で躱すと、逆に間合いを更に詰めた。
これだけ詰めていれば確実に当たる。そう思うのが普通で、もちろん私も避けられると思っていない……ので、ここは頑張る。
「そりゃぁ!」
「なに、俺の蔦を掴んだだと!?」
私は蔦を両手でガッシリ掴んだ。
完全にスキルと腕の力で、STR(筋力)が余り足りていない私には酷。
それでも体幹を使って頑張って耐え抜いていると、男性プレイヤーはほくそ笑む。
「ふん。掴んでくれてありがとな!」
男性プレイヤーはニヤリと笑みを浮かべる。
何か仕掛けてくる? 警戒する私だったけど、体の方が先に悲鳴を上げた。
「な、なにこれ!? うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
私の中に音が流れ込んでくる。
強烈な振動が走り、全身細胞が悲鳴を上げ出す。
目を見開き、足がプルプル震えると、力が抜けていく。
「これが俺のスキルコンボ。【蔦腕】と【振動】だ。見たか、見たな。この俺に挑んだことを後悔しやがれ!」
男性プレイヤーは勝ち誇っていた。ケラケラと笑いだすと、私のことを見下す。
悔しい。というよりも痛い、辛い。
ムッと表情がくすむ中、私は鋭い眼光で威圧した。
「ひいっ!?」
「私、負けないです。こんな所で、絶対負けないです!」
私が奥歯を噛み締め、男性プレイヤーを凝視した。
鋭すぎる眼光がまるでナイフを突きつけられたみたいに、男性プレイヤーを硬直させる。
蔦の強度が落ちると、強引に掴んでいた私の手を放させた。
「振動系のスキルなら、多分手を離せば……あっ、やっぱり伝わらない」
「な、なんだと!?」
「なんだとじゃないですよ。ここから私の番です、せーのっ!」
私は蔦に絡み付かれないように、全力で避けながら進む。
距離を詰めれば、男性プレイヤーの攻撃の苛烈さが増す。
このままだと蔦に触れ、振動を叩き込まれるに違いないけど、私は負ける気無い。
だって、負けたくないし、それだけで理由には充分だった。
「来るんじゃねぇよ!」
「【キメラハント】+【灰爪】」
私は【灰爪】を発動し、指先から伸びた爪が高質化した。
鋭く尖って男性プレイヤーへと突き付ける。
もちろん届く訳ないんだけど、蔦が目の前を邪魔するのを防ぐには充分だ。
「おりゃぁ!」
高質化した爪はそれだけで剣の様に硬い。
おまけに強くて、蔦の壁を切り裂いた。
バッサリ断ち切ると、男性プレイヤーの悲痛な顔が視界に映ると、地面を蹴って一気に近付く。
「終わりです」
「や、止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「止めません。そりゃ」
私が男性プレイヤーの喉元を貫く。
鋭い剣先が喉仏を貫いて、呼吸困難にさせる。
息を荒げ、口をパクパク目もバキバキにさせると、苦しんで転んで地面に伏せた。
動かなくなってしまうと、粒子状に体が変化し、メダルだけが転がっていた。
「ふぅ、倒せた」
胸をソッと撫でると、肩から力が抜けた。
とりあえず無事に勝つことはできたし、メダルも追加で手に入った。
きっとこれがイベントなんだ。私はゴクリと喉を鳴らして唾を飲むと、戦った感想も心地よさもなにも無い。むしろあまり嬉しくなく、顔色を変えて先に進む。
「まさかこんな早々に戦うことになるなんて。もっと頑張ろう」
私はとりあえず森の中を駆ける。
木々達の騒めきを聞き分けながら、プレイヤーやモンスターを警戒した。
けれどまともに戦うことはしないし、もちろん目の前に敵は居ないので、私は黙々と森を抜けた。
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