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◇84 〈《暴虐の拳》〉

ちゃんとキャラの交流もします。

 いよいよイベント当日になった。

 あれから三日ってやけに早い。

 私は時間の流れをこうして感じ取ると、今日始まる新イベントに向け、頬をペチンとする。


「きっと上手く行く……よね」


 不安はやっぱり過る。

 なにせ初めてイベントに参加するんだ。


 別に消極的な訳じゃないけれど、初めてはやっぱり緊張する。

 震えそうになる私だったけど、すぐに震えは治まる。


 寧ろ、ワクワクが胸を突き動かす。

 それだけ楽しみになると、いざVRの世界へ向かった。



「確か待ち合わせは、噴水広場だったよね?」


 スタットの噴水広場にやって来た私。

 そこにはいつにもまして、たくさんのプレイヤーが居た。

 もしかして、みんなイベントの参加者?

 私は興味を示す中、近くに空いていたベンチがあったので、腰を落ち着ける。


「ふぅ」


 いつも私が使っているベンチだ。

 何故かは知らないけれど、他のプレイヤーはこのベンチを使おうとしない。

 何だか嫌味を感じるけれど、NPCは普通に使っているので気にしないことにした。

 そのおかげか、私は呼吸を落ち着かせていると、急に声を掛けられた。


「やっぱりここにいた―」

「相変わらずだな」


 やって来たのはNightとフェルノの二人。

 私の顔を見ると、“やれやれ”と言いた気だ。

 如何してそんな顔をされるのか。私はムッとしてしまう。


「Night、フェルノ。二人共、捜してくれたの?」

「「いいや」」

「えっ?」


 私はNightとフェルノに突き飛ばされた。

 せっかく安堵した所で急な追い打ちを喰らうと、流石に傷付いてしまう。

 なにせ、私の顔を見ると、“やっぱり”と言いたそうになるのだ。


「じゃ、じゃあどうして?」

「お前なら、ここに座ると思っていたんだ」

「そうそう。アキラは普通だからねー。いつもの定番をちゃんと守るからー」


 完全に、私がこのベンチに座ると予想していた反応だ。

 もちろん、このベンチは、私がいつも使っている。

 そのせいなのか、Nightとフェルノは私がここに座ると予想していた。いや、確信していた。


「でも、私がこのベンチを取れなかったどうするの?」

「いや、大丈夫だろ」

「そうそう。アキラは有名人になったからねー。ほら!」


 フェルノは周囲を見回す。

 するとNPCは除き、プレイヤーの中で、何人かが私達のことを、あえて避けているようだった。それこそ、私の据わるベンチを中心にして、空間が開いている。


「どういうこと?」

「それは……」

「お前が《合成獣》だからだろぅが!」


 野太くて罵声を浴びせ掛けるような呼びかけが、アキラに届く。

 私は顔を見上げると、見慣れた訳じゃないけれど、因縁の相手が居た。


「ぼ、ボレオさん!?」

「へっ、俺達もいるぜ!」

「そうだぜ、忘れんじゃねぇぞ!」

「釘抜きさんに、ペッパーさんも!? もしかしてイベントに参加するんですか?」


 現れたのは男性が三人。

 一人はゴリラの能力を持った筋骨隆々なボレオさん。

 細身で三角顔をした釘抜きさんに、四角い顔をしたペッパーさん。

 この三人が集まると言うことは、私に因縁を吹っ掛けに来たに違いない。


「な、なんですか!? もしかして戦うんですか!」

「はっ、そんなもん、《合成獣》とする訳がねぇだろ!」

「そうそう、お前とやったら、命が幾つあっても足りねぇからな」

「そうだぜ。それより俺達がお前に顔出しに来たのは、この前の礼だぜ」

「お、お礼?」


 一体なんの話だろうか?

 もしかして、リボルグさん達のことかな?

 あれは、私の中では解決したと思っていた。リボルグさん達に限って、約束を破るとは思えない性格をしていたからだ。


「ああ、そのな……あんがとな」

「えっ、ちょ、なんですか、急に!?」


 ボレオさん達はギコちなく頭を下げる。

 私はあまりにも異様な光景に目を見開く。

 子供が大人に頭を下げられると、なんだか逆に悪いことをしたと思って仕方が無い。


「あの時は俺達を庇ってくれて助かった。おかげであれ以上の攻撃は無かったし、あの後アイツらも謝りに来た」

「やっぱり、謝りに来たんですね。よかった」


 流石はリボルグさん達だ。

 ちゃんと約束を守る凄い大人だと思い、私はホッと胸を撫でる。


「あれ以来、俺達も他の奴に謝りに行く毎日だぜ」

「んだなぁ。毎日が外回りだぜ!」

「釘抜きさん、ペッパーさん。もしかして、自分達が手を上げた人達全員に?」

「そうだな。だがよ、それが俺達の背負った罪だ。アイツらと戦って、ボコボコにされて、それで見下したお前に助けられた。だからこそ、俺達は変ったんだ。ありがとな」


 ボレオさんは私に何度も感謝する。

 そんなに感謝されることでも無いのに。

 だって私は、ただ戦って私の想ったことをしただけだ。

 それ以上でもそれ以下でもないので、本当に感謝される意図が分からない。


「これからは〈《暴虐の拳》〉としてやらせて貰うぜ」

「暴虐? もしかして、ギルドを作ったんですか!?」

「いいや、まだだ。だから俺達は非加盟のギルドとしてしばらくはやらせて貰う。んじゃ、イベントで会ったらな」

「はい。全力でやらせて貰います!」


 ボレオさん達は、私との約束を聞いてくれた。

 あまりにも変っていて、まるで別人だった。

 そんなボレオさん達の背中を見ながら、隣でNightが呟いた。


「お前は凄いな。人の感情を書き換えるなんて」

「書き換える?」

「……分からないならそれでいい。お前は朴念仁だからいいんだ」

「朴念仁?」


 難しい言葉が出て来た。

 私は首を捻り、ポカンと頭の上ではてなを点灯させる。

 もちろん、それ以上何も言えないので、私はベンチに座って肩を落とした。

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