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◇81 商売って難しい

書籍化したいよ~!

「ってことになったんですけど」

「それは面白いこと考えたわね」


 私はアイテム屋:Deep Skyにやって来た。

 相変わらずソウラさんが店番をしている。

 一体他のギルドメンバーは何処に? 顔を見たことが無いので私がポカンとすると、ソウラさんが気を遣ってくれる。


「ところで、素材はどうやって集めるのかしら?」

「えっと、自力で」

「自力!? ってことは、大量生産はできないわね。どうするの?」

「それは、その……これから詰めていくみたいですけど、とりあえず“目的”としての活動らしいので、なんとも」


 正直、素材集めに全力を注ぐことは無い。

 ただ、ギルド会館で受ける依頼以外にも、個人間での取引を進めたい。

 そうすれば、少し法外にはなるけれど、儲けは出る。

 信頼を得られれば、知名度にも繋がり、私達の活動も良くなる筈だ。


「つまり、“常”じゃないのね」

「ですね」

「ふーん、それじゃあ少しお願いできるかしら?」


 早速ソウラさんは何か思い付いたらしい。

 ハッとなって笑みを浮かべると、私を試しに掛かる。


「お、お願いですか?」


 正直、ソウラさんの依頼は嫌だ。だって大変だから。

 あまりにも子供な考えだけど、ソウラさんの出す依頼は、本当に割に合わない。

 というよりも、難易度が高すぎて、得られる報酬に対して労力がバカだった。


「そう警戒しないでいいわよ」

「警戒しますよ……ごめんなさい」


 私は嫌悪感を示し、少し引き気味になる。

 だけど悪いと思いすぐさま謝り、ソウラさんの話に耳を傾けた。


「それで、なにをお願いされるんですか?」

「シェルダーウッドって知ってる?」

「シェルダーウッド? なんですかそれ」


 全然聞いたことも無い木の名前だ。

 きっとこの世界に自生しているものだろうけど、頭の中に全然浮かばない。

 何せ貝の木なんて聞いたことが無いのだ。


「シェルダーウッドは別名シャコガイの木って言われている、ずんぐりとした木よ。うちのパーティーメンバーで、木製家具職人のピー子が欲しがっているのよ」

「ぴ、ピー子? さん」

「うん。新しい家具を作るために、シェルダーウッドの丸太が、どうしても欲しいらしいのよ。お願いできないかしら?」


 ソウラさんは私に顔を詰める。

 ジリジリと瞳が近付くと、私は若干引く。

 正直逃げたい気持ちが一杯だけど、何故か逃がしてくれない。


「えっと、ちょっと相談してみないと、分からないです」

「ってことは、引き受けてくれるのね?」

「それは、その……と、とりあえず要相談ってことで! は、はい。それじゃあ失礼しますね」


 私はいち早くDeep Skyから逃げ出す。

 このままじゃ、本当に押し切られてしまいそうだった。

 だから間一髪だったと内心ヒヤヒヤしたが、本当にヒヤヒヤなのはこれからだ。



「ってことになったんだけど」

「バカか、お前は!」

「ご、ごめんなさい」


 私はギルド会館でNight&フェルノと合流した。

 ここまでの話の流れを説明したのだが、想像通りの展開。

 私はNightに罵られると、小さく縮こまった。


「まあまあNight-。大丈夫だってー」

「大丈夫な奴があるか!」

「うぉう、どうどう。そんな怒らない」

「怒るに決まっているだろ。シェルダーウッドなんて代物、そう簡単に入手できる訳が無い」


 Nightはこの中の誰よりも知識がある。しかも見解も広い。

 そんなNightが無理だというなら、流石の私もゴクリと喉を鳴らす。


「そ、そんなに無理なの?」

「そうだ。シェルダーウッドがそもそもなにか、お前達は分かってるのか?」

「「いや、全然?」」


 私もフェルノもさっぱりだ。

 もちろん想定内だったらしく、溜息すらついてくれない。

 完全に見放されると、私は代表して訊ねる。


「シェルダーウッドって、なに?」

「シェルダーウッドは別名シャコガイの木と呼ばれる、幹自体が太く、同時にとても強靭な大木だ」

「大木? だったら、チェーンソーで切ればよくない?」

「そうだよ。Nightなら作るでしょ?」


 木を切るならチェーンソーを使えばいい。

 簡単な話だと思って笑ってしまうが、全然そんなことは無い。

 今度も溜息一つなく、腕を組んだまま動かないNightは答える。


「無理だな。いくら私がチェーンソーを用意しても、シェルダーウッドは切れない」

「「どうして?」-?」

「単純だ。シェルダーウッドは、雷の速度で切らなければ、決して倒れない。実際、滅多に出回らないのがその理由だ」

「「……ん?」」


 私もフェルノも固まってしまう。

 流石に条件が厳しい。そんなファンタジー設定、文句を言われてもおかしくない。

 私もフェルノもそう思うも、如何やら事実らしい。


「残念ながら、事実だ。シェルダーウッドは、雷の速度で切り倒す。それ以外に、この木の幹どころか、枝すら入手はできない」

「え、枝もダメなの?」

「ああ。強い強風が起こるか、雷が落ちるか。それを待つ以外に、この木の枝を入手することさえ叶わない。そう言われている」


 あまりにもアバウトな設定と謂れだ。

 私はポケーッとするが、フェルノは諦めない。

 目を煌びやかにすると、シャドーボクシングを始めた。


「なーんか、燃えるねー。その設定」

「ちなみに言っておくが、シェルダーウッドは、火にもの凄く強いからな。燃やそうと思って燃やせるものじゃないぞ」

「そうなの?」

「シェルダーウッドは、シャコガイの木だ。シャコガイは海の中に存在しているから、貝らしく硬い、同時に塩水を含んでいる。丈夫で長持ちし、樹齢も長い。自生している場所は多いが、レア度もかなり高い素材になる。分かったな、だからそう簡単に手に入るものじゃないんだ」


 Nightはキッパリと言い切ると、私とフェルノを突き放す。

 ましてや一人の世界に入り、頭の中で金策手段を考える。


「一端練り直しだな。私が【ライフ・オブ・メイク】を使って作ったものを売り出す。いや、それは現実的じゃないな。となれば、品質の高い品を取り扱うのがいいか? 薬草なんかは何処にでも生えている。知識さえあれば……いや、アキラはともかく、フェルノは……うん、これも無し。それなら狩りに……護衛が成り立つほど、私達のレベルは高くない。さて、どうやって素材を集めるか……ここは業者を募って、私達が買い付けして、そこからの純利益を……」


 Nightは難しい話を展開する。

 もはや私達の声は届かない。


「フェルノ、どうしよっか、私達?」

「うーん、さぁね」

「そうだよね。なにか良い方法無いかな?」

「いい方法? 仲間を集めるとかかな?」

「それはいいけど……」


 正直、パーティーは有象無象にしたくない。

 せっかくギルドも作ったのに、誰でも彼でもにしたら、それだけで私が処理できない。

 みんなにも負担を掛けると分かっているので、今は少人数でいい。そう思うと、選択肢から外れた。


「それはそうと、商売って難しいね」

「うん、簡単には行かないって分かってたけど、ここまで大変だったなんて」

「あはは、まあやるしかないかー」

「うん、そうだね」


 商売の大変さが重々にのしかかる。

 私達は早速出鼻を挫かされると、頭を抱えた。

 慣れないことをした弊害。そう思うと、心身共に情けなかった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

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