◇78 《合成獣》と呼ばれて
二章が終わりました。
次回から三章。短めにしたいです。
目標、100話以内!
あれから数日。
私達の身の回りはそれほど変わっていなかった。
これは運営が配慮してくれたおかげか。
それとも都合の悪いことは、ゲーム側がもみ消したのか。
どんな理屈化は分からないけれど、ある程度のことはまとまりを見せていた。
そう、ある程度のことは……
「うーん、今日も依頼達成! 後ちょっとで、Dランクだねー」
「そうだな。だが、Dランクからより上のランクに行くためには、相当数のポイントが必要になる」
「おー、頑張らないとね。ねっ、アキラ」
「うん。頑張らないと……うーん」
私達のギルドランクはもう少しでDになる。
ここまで依頼をとにかくこなしにこなし、ポイントを稼いできた。
ただ、学校もあるから一日に受けられる依頼は、一つか二つだけ。
時間を考えても、ここまで早くポイントを稼げたのは、正直みんなで協力したから。
なんだけど、一つだけ私には危惧することがある。
それはギルド会館でもそうだけど、私の姿を見かける度、なんだかプレイヤーに少し警戒されているような、微妙な視線を感じることだった。
「ねぇ、私なにかしたかな?」
「なにかって?」
「なにもしてないだろ」
「うん、二人に訊くのが間違いだったかも」
「「どう言うことー?」ことだ!」
私はフェルノとNightに詰められる。
少し落ち着いて欲しいと思いつつ、こうなったのは私のせい。
私の言動のせいだと分かっていると共に、ギルド会館から出た直後なので、隣を別のギルドが過ぎ去った。
「うおっ、あれって噂の」
「シッ、殺されるよ」
「《合成獣》……そんなに強いのか?」
「強いなんてものじゃないって。もう化物だよ、目を合わせないでさっさと行くよ」
凄い言われを受けてしまった。
そう、私を取り巻くのはこの環境。
リボルグさん達と戦ってからというもの、私は他のプレイヤーから恐れられていた。
「聞いた、二人共? 私、なんか変なニックネーム付けられてるよ」
「ああ、〈合成獣〉だな」
「き、きめら?」
「そう、《合成獣》だ」
Nightは淡々と答える。
全然釈然としない。むしろ、如何してもっと早く教えてくれなかったのか。
訊かなかった私もあれだけど、Nightも酷い。
鋭く睨み付けると、Nightはポツリと呟く。
「まあ、これでも見てみろ」
「これって? 掲示板だよね、ネットの」
「そうだ。ゲームの中からでも、ある程度インターネットは使えるからな」
「うわぁお、境界歪んでるー」
何だかゲームって感じがしない。むしろネットの世界に存在した、一つの世界のようだ。
私がなんだかユーモラスな感想を抱くと、掲示板を覗き込む。
もちろん、ゲームの中の掲示板ではなく、みんながスレットを立てて、そのテーマに書き足していた。
「えーっとなになに……」
25:うpっと
—ってかさ、ヤバくない?
26:うpっと
—最近現れた合成獣
27:ナポリターン
>合成獣?
28:剣ドラゴン
>なにそれw
29:うpっと
—とんでもなく強くて怖い奴らしいぜ
30:ナポリターン
>怖いってどんなもん?
31:うpっと
>PをMBするくらい
32:モルモ三世
>MB?
33:うpっと
>※MB=メンタルブレイクのこと
34:うpっと
—しかも色んなスキルを使えるらしい
35:剣ドラゴン
>マジかよそれ
36:ナポリターン
>チートだろ
37:紅吉
>いや、そういう固有スキルだろ?
38:剣ドラゴン
>にしてはヤベェって……いや待て
39:モルモ三世
—分かった! だから合成獣なんだ!!
40:うpっと
>そういうこと
41:モルモ三世
—けど、本当に怖い人?
42:ナポリターン
>さぁ?
43:剣ドラゴン
>知らない
44:うpっと
—強いのは本当らしい
45:うpっと
—でも、PvPしか知らないからな
46:モルモ三世
>挑まれたらどうするの?
47:うpっと
>そこはまあ
48:うpっと
>流れで
49:剣ドラゴン
>流れw
50;うpっと
—まあ、仲良くしたらいいと思うけど
51:モルモ三世
>うーん、怖い人なのかな?
スレットは大きく盛り上がっていた。
だけど、読んでいて私はムッとする。
なにせ、内容が“アキラは怖い”みたいになっていた。
なんだかネットの嫌な面を見た気がすると、私はスレットを閉じる。
「私、そんな怖いかな?」
「まあ、PvPのお前はな」
「でも活き活きしてたよー。マジのアキラって感じー」
「う、嬉しくないよ」
私は全然褒められている気がしなかった。
落ち込んでしまう私に、Nightはソッと肩に手を当てた。
「まあよかったじゃないか。《合成獣》」
「い、イジってる?」
「さぁな。とにかくよかったじゃないか」
「全然よくないよー!」
私はついつい往来で叫んでしまった。
すると周囲の注目を集めることになる。
もう恥ずかしいとかない。なにせ、《合成獣》って言う二つ名? 自体が恥ずかしく、私の声は青空に広がった。
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